秋田の温泉がイマイチ人気薄なのは・・・

秋田は確かに温泉が多く、温泉好きな筆者にはありがたいことなのだが、イマイチ人気がない理由は何だろうか。
たまに筆者の知人・友人(日本人、欧州の外国人)が秋田に来たときは大抵温泉のリクエストを受けるためどこかに連れて行くのだが、正直言って『ここ!』という温泉、温泉宿が無いのがいつも残念に感じていることだ。実は来週もベルギー人をどこに連れて行こうか悩んでいる。ベルギーは温泉が結構ポピュラーなため秋田が温泉豊富と聞いたらしく楽しみにしているというから余計に頭が痛い。
ベルギーやハンガリーは独特の温泉文化(?)と歴史があっていろいろ参考になるのだが、秋田の温泉地や関係者は知らないらしい。(人気薄な理由の第一は温泉地の人間たちの勉強不足)
外国人の案内に限らず、国内の他の温泉地を知っている秋田の人は多かれ少なかれそんな経験を持っているだろうと想像している。何故か・・・。

温泉といってもいくつかカテゴリがあるだろうが、秋田県の場合、
(1)温泉郷の温泉宿
 男鹿温泉、乳頭温泉、小安郷温泉、湯瀬温泉など
(2)主に90年代に雨後の筍状態で乱立した各地のなんちゃってリゾート(?)
 ザ・ブーン、ユフォーレ、ゆとりあ、ユメリア、湯楽里など
(3)比較的以前からある孤立し点在する温泉
 滑多羅温泉(五城目町)、新浪温泉(秋田市雄和)など
(4)都市部で無理矢理掘った温泉
 新屋温泉、横森温泉、あったまりーな など

に大別できる。
まず、(1)のカテゴリは歴史の古いものもあるが、男鹿温泉郷のように男鹿近辺の道路事情が改善されて宿泊の必要性が低くなり温泉郷という雰囲気は既に無く、何となくホテルが数棟集まっているというだけだし、スキーが人気だった頃は冬も温泉街が賑やかだった田沢湖高原なども既に賑やかさは無く廃れているところもある。
一方、全国的なメディアで繰り返し取り上げられ知名度もアップした乳頭温泉郷のいくつかの宿もある。中でも鶴の湯と妙の湯は近隣の蟹場、孫六などの湯治場との相乗効果で好調な部類かもしれない。
歴史のある温泉郷は他にも玉川、秋の宮、泥湯などがあるが、昔から療養施設のイメージがあったり、交通の便が悪すぎて秘湯中の秘湯のイメージがあるものの硫化水素で死亡者が出たり、先般の雪崩などで一般的な観光地とは言い難くマニアックな湯治場。無論、湯治場は湯治場で良いが、観光客が金を落としてくれる要素が無いしスケールメリットもない。
小安郷温泉は小さなスキー場があったり紅葉の名所だったりで季節によってはそれなりに人気はあるがドライブコースの通過点という認識が一般的だろう。
湯瀬温泉はそれなりの規模のホテルなどもあるが、秋田県民の意識として鹿角市は岩手県(旧南部藩という歴史のせいか)というイメージが強く交通も秋田市などからは非常に遠回りしないといけないため遠い。八戸や盛岡側からは近い印象だろうが秋田県内の温泉という印象は無い。
かつての団体旅行向けの中・大型のホテルではどこも苦戦していて、国内旅行の形態が団体から個人・家族・小グループと変化してきたことに追従せず変化に対応してこれなかったツケが回っている印象だ。野沢温泉や草津温泉のような大規模な温泉地の温泉街というものは秋田には皆無で、宿を出て温泉街をブラブラという温泉地が無い。
つまり良い泉質の温泉を持っていても、それが『点』で温泉街や温泉以外のアミューズメントが無いため楽しみが少ない。何か秋田でなければ食べられないものがあるかというとそんなものはないため、結局『点』を『面』にしていくことができない。だからメディアの取り上げ方も温泉そのもの泉質や効用を紹介して終わりなのだ。案内人が温泉地全体を紹介するような番組を作りようがない
これが秋田の有名温泉地(?)の弱いところだ。
湯治場で美味い料理やコじゃれた部屋があり混浴も選べるような小規模の温泉旅館という形態が生き残っている(妙の湯のような)だけだ。

(2)のカテゴリは時期を同じくして1990年代に一斉に各地に出来た印象だが、設備の改修や再投資が見られないところばかりで、どこもさほど儲かってはいないだろう(むしろ累積赤字)と感じる。施設の維持で一杯一杯で、行く度に肝心の温泉設備が老朽化、汚くなっていくのを見るとやるせない感じさえする。
結局、そういう施設は周辺住民のためのスーパー銭湯で、地元の雇用を若干生む程度の『福祉施設』なのであってビジネスではない。『あそこでうまくいったらしい、ウチの村にも欲しい』的なごく安易な横並びの考えで過疎債や県の補助金か何かで作ったものの、各種温泉以外のアスレチック、プール、屋外のBBQ施設・設備なども稼働率が上がらず、結局赤字を垂れ流している。
中にはレストランにちょっと力を入れたところもあるが、単価を上げると平日の利用者(=周囲の住民)には高すぎて×。土日の遠方からの客に対応するだけでは全く採算が合わない。結局、施設と利用者のアンマッチが赤字垂れ流しの原因だ。スーパー銭湯に観光客を呼び込むのは無理だ。

(3)の独立系は、最近一部では本腰を入れて日帰りから宿泊を意識しているところもあるが基本は湯治場を脱していないところばかりだ。周囲には何も無いし、宿泊施設の中ではこれといったエンタメ設備は無い。孤立する『点』の典型だ。温泉だけ入って帰ってねと言わんばかりの
ところが多い。一体、どういう客を期待しているのか理解不能。特別美味いものを食べさせてくれるところがある訳でもなく、ボランティアでやっているなら理解できるが、来た客に対して何で金を使わせようとしているのか不明だ。

(4)は単なる都市型スーパー銭湯なので割愛。秋田市の卸町のこまち温泉くらいの資本力があれば、内部にエンタメもある程度抱えて『なんちゃってリゾート』も可能だろうが、一言で言えば田舎臭いものから抜け切れていないし、純粋に温泉そのものを考えると特別な効用も無さそうで温泉はあくまで後付けなものだろう。

かつて、筆者が期待したお気に入りの温泉が2軒あった(営業は今も継続している)。
日帰りは旧協和町の唐松温泉、宿泊は田沢湖高原手前の水沢温泉の四季彩だ。
前者は、小さいが露天風呂や釜風呂もあり紅葉や初雪の頃は最高の借景を持ち缶ビールなどを持ち込んで・・・素晴らしかったが、近隣の町営の温泉と競合したり経営者が変わったりで色あせてしまった。何か集落内の足の引っ張り合いのようなものも漏れ聞こえてきて民営→町営→民営のような変遷を遂げている。温泉の設備は既に老朽化が進み汚さが印象に残る残念な結果となってしまった。近くに小さな釣堀もあったが、営業していたのを2度しか見たことがない。
後者は、ちょいとコじゃれたプチホテルで、料理もそこそこ美味かったが、聞いたところでは単価が秋田では高い部類だったせいか、いつの間にか下品な土建屋みたいな連中が増えて、静かにくつろぐ空間が無くなり、行くのをやめた。連泊滞在型としても県外の知人に薦められるプチホテルだったが現在はどうだろうか。
ああいうコじゃれたプチホテルがもっと増えるかと思ったが、バブル崩壊後は秋田ではやはり無理だったのか?(もっとも、秋田でバブルがあったかどうかは定かではない)

欧州のいくつかの国では温泉を医療の一部と考えて温泉治療に対して保険が適用できる国もあり、温泉は入浴ではなく飲用で保険が適用というところも多い(イタリアなどもそうだったと記憶しているが)。
玉川温泉がガンに本当に効果があるのかどうかといった医学的なものは知らないが、末期ガン患者などが一縷の望みをかけて大勢やってくるのは無視できないことだろうし、高齢化に伴うホスピスのような考え方は単に医学(医学は科学ではない、医療は経験工学)的な判断だけではないものが必要なのではないか?
温泉治療や理学療法をウリにした温泉地エリアが秋田に無いのは不思議だ。

もう一つ、秋田の温泉地に無いもの。
それは、個室に露天風呂が付いた宿が無いことだ。首都圏周囲の有名温泉地は大規模なホテル形式であっても個室に家族、カップル向けの小さな露天風呂が付属している宿が多いし、ロッジのような独立型宿泊施設でも個別の露天風呂や家族風呂をセットにしているところが多い。
設備投資がままならない民宿に毛の生えた程度の小さな宿は、時間制で貸切露天風呂を用意しているところも多い。
わけありのカップルや若いカップルの需要も多いだろうしお忍びでという需要は無視できない。何故ならそういう人種こそ金を使うからだ。また、夫婦や外国人でも需要が多い。外見上の障害があったりする人には不特定多数が大勢で素っ裸で入る露天風呂は敷居が高いはずで、介護老人などの需要も少なからずあるはずだ。
なぜ、そういう潜在ニーズ(顕在といっても良いのが現状)に応えられないか。
やっぱり法律や条令による規制なのである。

秋田県の温泉に限らず公衆浴場は、
◆公衆浴場法(昭和23年)、公衆浴場法施行規則(昭和23年)
◆秋田県の公衆浴場法施行条例(昭和26年)
こういう60年以上も前のカビの生えたような規制(数回一部改正されてはいるが)が生きているため時代の変化に対応できない。
秋田県では条例で10歳以上の混浴は禁止
されている。にも関わらず、どこかの秘湯の混浴は堂々とテレビで放送されても何の咎めもない。結局は行政のいい加減な裁量というグレーなものなのだ。
混浴を巡る旅館と行政の笑える争いは
兵庫県で何年か前におもしろい事件があった。
興味のある人は、『吉川温泉』『よかたん』でググッて見たら良い。

さらに秋田市では、
◆秋田市公衆浴場法施行細則(平成9年、平成20年一部改正)
に縛られている。
浴室の広さや脱居場所の面積まで数値で細かに決め、照明の明るさまで決められている。
衛生状態の担保はある程度必要だろうからガイドラインのようなものは必要だろうが、数値まで決めて細則などは笑止である。
第一、細かい条例や細則があるにもかかわらずレジオネラ菌の問題のとき行政側で誰かが責任を取ったなどという話は聞いたことが無い。
しかも秋田市の場合は提出書類は直接秋田市にではなく保健所を通す義務が定められていて面倒な手続きが必要だ。保健所については中核市の秋田市の場合、もっと独自の柔軟な運用が可能なはずだ。

こんな状態だから、秋田では温泉をウリにして積極的なヒジネスが起きないのだ。
『点』がいつまでも『面』にならず『点』ではお客さんは増えない。
観光文化スポーツ部の新部長もウリの一つのはずの秋田の温泉の現状と行政の状況に頭を抱える
はずだ。

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