秋田で就職の困難さと現実、近未来

秋田にいる知り合いから就職(大卒)について相談されたものの、筆者のようなマイクロ企業では即戦力以外はとてもとても雇う余裕など無いので丁重に断った。
既に登記も本社機能(^^)も東京にあるし、ウィーンの事務所以外にもう一箇所欧州でとも考えてはいるもののなかなか実現のための条件や環境が許してくれない。
秋田はまだまだ就職口が無くて大変なのだろうなと想像しながら少し数字で見てみた。
手に職を付けるだとかアートな道を除けば若い人がサラリーマンとして就職する場合にそれなりに企業の情報を見ると思うのだが、秋田県全体の俯瞰はなかなか出来ないのではないだろうか。

秋田県の企業は、上場会社はわずかに3社。(3社以下は秋田以外に佐賀、長崎、島根、徳島だけ)
東証1部 秋田銀行
東証2部 マックスバリュ東北
東証マザーズ インスペック
ただ、このうちインスペックは今年の4月に債務超過に陥っているため先はわからない。
上場株式時価総額(約281兆円)を本社所在県別にまとめてくれている方がいて、それによると秋田県は47都道府県のうち46番目、時価総額のシェアは0.0018%と低い。最下位は長崎県だが、長崎県の場合三菱重工の大規模な工場があり企業城下町的な側面があるため秋田とは企業・雇用環境というか状況が全く異なる。

秋田県の企業の売上高で見ると、最も売り上げが大きいのは山二(グループ)、2位、3位はそれぞれ三菱マテリアル、NTT東日本・秋田となり、いわゆる秋田にある出先事業所にすぎない。それ以下の企業は、ほとんど建設会社、建設資材、鉄工、施設・設備工事がダーッと続き、91番目に広告代理店のアートシステムが出てくるくらいである。あとは130位台あたりまでは上位の業種のような土建関係が延々と続く。
経常利益で見ても順位こそ入れ替わりがあるが、延々と土建関係企業のオンパレードで、卸・小売といったサービス業はずーっと後からしか出てこない。
秋田県が土建屋体質であるというのはこういう統計からも明らかだ。そういう業種、企業にそもそも若者を惹きつける魅力があるだろうか?
昭和30年代、40年代あたりと産業構造、業種がほとんど変わっていないのだ。

ついでに、秋田県一の長者は誰か(納税額番付)というのも公表されていて、昨年度では能代の大森建設グループ総帥の大森三四郎氏(62歳)ということになっている。
金沢工大中退、1946年創業の大森組3代目、総資産125億、年収6,300万円、自宅は日本海に面した敷地が6,000坪(サッカーのピッチの大体3面分)だそうだ。

こういった企業の金額的な規模といわゆる日本を代表するような大企業のそれを比較し、リクルート情報で見られる従業員数や事業所数などを見れば自然と職場環境がどんなものかが想像できる。夢のある大きな仕事がしたいなどと太志を抱く若者にとっては活躍する場所など無いといってよい。例え実力・経験が無くても『根拠の無い自信』は若者の特権だが、それを生かす術が秋田には無い。

筆者が社会に出て最初に就職した企業は同期が男女合わせて340人程いて、同期の仲間とワイワイやりながらあるいはライバルとして社会人としての助走を始めたように記憶している。
秋田では春に企業合同入社式のようなものがニュースになるが、毎年あれを見ると何か物悲しいものを感じてしまう。
若い人が社会に出て、いきなりこじんまりした企業・事業所に配属され、揉まれもせず育てられることもなく、そんな環境で自分の進む道を見極め、努力するようなことが果たして可能だろうか? 若い人の多くが数年で辞めてしまうのはそんなところに根本的な原因があるに違いない。
企業側に立って考えても、人をじっくり育てることはできないしおそらく必要も無い業務の連続で年度を積み重ねていくのだろう。
人材がいないから企業が大きくならない、大きくないから人材を育てられない。鶏と卵である。
行政の施策はとにかく1人でも2人でも雇用を作り突っ込むことしか考えていないため、中長期的に何も変わらない『使い捨て』状態だ。

企業にとっては大きかろうが小さかろうが人材は歯車の一つに過ぎないことは当たり前だが、東京湾岸地帯の高層ビルに勤務し昼はコじゃれたカフェで日替わりのように同期や上司・先輩・後輩と昼食を摂るのと秋田で一人で弁当買って自分の軽自動車の中でつつくような毎日を同じ人間が経験したとしたら、おそらく10年もしないうちに圧倒的な差がついてしまう。大げさだが本人にとっても人生の幅、奥行きで差が出てくるに違いない。
若い人にとって何がインスパイアになるかは案外単純なものだったりするし、現代は情報だけは他地域のものも簡単に入手できるため現実の地域間格差は若い人が一番わかっているはずである。

このような企業、雇用、就職の状況だから筆者は自分の子供たちには何度も、
・秋田での就職は考えるな
・首都圏で就職したければ首都圏の大学に行け
(地方から行ったり来たりだけを考えても就活のときに圧倒的に有利だから)
と話すのだが、おそらくどこの親も地元にいる必要が無い限り同じようなアドバイスをするのだろう。
こうして秋田の若者は減っていき、人口はどんどん減少するのだ。
損得を考えても、年寄りがワンサカ残り、若者、現役世代が減っていけば県単位である年金の納付額はどんどん増加していくのは明らかで、秋田は今後それが加速していくはずだ。無論、首都圏も同様の変化が見込まれるが、圧倒的な年寄りの金持ち達が多いのもまた首都圏であるため状況はずいぶん違ってくるだろう。

残念ながら今のままでは秋田に明るい未来は全く無い。
秋田の経営者たちの言い分も、気の毒な現状もわかるため彼らを責める気にはならないが、せめて行政がもう少しまともなら構造的な問題と悪循環を変える方法はあると思うのだが・・・。

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秋田で就職の困難さと現実、近未来 への11件のフィードバック

  1. ちょっと年寄り より:

    blog主さんの書かれた秋田の現在の企業・経済状況はまさにその通りですが、昭和40年代くらいまでは小売や飲食といった産業も活気があったのです。

    学力テストがまた全国一とか。
    教育に力を入れてもどんどん県外に出て行くなら、どこか本末転倒になっていると感じるのは置いていかれる年寄りだからでしょうか。

    • argusakita より:

      こんにちは

      >学力テストがまた全国一とか。

      あ、そうなんですね。相変わらず凄いですねぇ。
      でも、教育関係者や大人たちの自己満足になっていませんかねぇ?
      何年も連続トップはいいことだとしても、そろそろそういう小中学生が高校で力を発揮できるような環境を考える段階なんじゃないんですか、秋田県は。

      • 元匿名希望の傍観者 より:

        他に誇らしいニュースが無いため、特に取り上げられるけど、・・・・
        子供時代秀才で大人になったら凡人というのはよく聞くパターンです。あまり持ち上げすぎないほうがいいかと。
        他県ではどうかわかりませんが、秋田県の小学校・中学校の教師は学力テストの結果を上げるのに多分必死です。(悪いと教師のマイナス評価に。)必ず前年度の問題を授業時間に解かせて解説するようなことはどの学校でも行っています。学習面では、かなり過保護に扱ってます。だから逆に、高校で落ちこぼれが出るような気がしてます。

  2. blogファンその弐 より:

    どうなんでしょう、学力テストの結果に対して秋田県内ではもうそんなに騒がなくなったように感じますが、以前Argusさんが書いていたsite
    http://todo-ran.com/
    の都道府県ランキングを見るとおもしろいですよ。
    各都道府県別のアクセス状況
    http://todo-ran.com/t/tdfkranking
    で秋田からのアクセスが多くて笑っちゃいます。秋田県民はこっそりここを見て優越感を味わっているということですね。

    ・小中学生の塾通いは全国最低レベル
    ・インターネット普及率最低レベル
    ・携帯普及率最低レベル
    ・小中学生長時間ゲームプレイ率最低レベル
    ・ネット利用率も最低レベル

    という状態です。
    ヒマ潰しが出来ない(する場所も無い)から勉強でもするかということで、

    ・学校外学習率が高く、
    ・読書率が高く
    ・(女子のバスケ以外は)部活もあまりせず
    ・ちゃんと朝飯を食べて
    ・早寝早起きして

    完璧にヨイコの生活スタイル。
    県民性だとかそういう話ではなく、すっごく純朴なライフスタイルの小中学生というのが見えてきます。
    これで、成績が悪かったら逆に馬鹿過ぎてヤバいでしょう。

    そして、この子達が高校に行って世の中の現実を見聞きして次第に勉強しなくなっていき、

    ・大学進学率最低レベル
    ・高卒就職上位

    になっていき、あらゆる業種の所得水準が全国最低レベルの秋田で暮らし、ほとんどの経済指標が全国最低レベルのまま卑屈、厭世的になりながら暮らし続け、最後は、

    ・自殺
    ・脳梗塞
    ・大腸がん
    ・胃がん
    ・卵巣がん
    ・高齢者うつ病
    ・栄養失調・餓死者
    などが何年も連続全国一になるような最後を迎える。

    鉄拳のパラパラ漫画でも書けそうな気がしてきました。
    「秋田にいちゃいけない」と子育てする大人が多いのは十分理解できることです。

    長々と失礼しました。

    • argusakita より:

      blogファンその弐さん、お久しぶりです。

      いやぁ、確かに鉄拳のパラパラ漫画みたいなのが目に浮かびます。
      (あの『振り子』、ホントに泣けました)
      あきた人の典型的な一生みたいなものはその統計通りかもしれませんねぇ。
      統計を見ると、子育てに関しては、

      秋田で中学生まで過ごし、
      高校は北陸で過ごし、
      大学は首都圏

      で生活させる。
      これが現代日本版の『孟母三遷』でしょうね。(^^)
      さて、そうやって育った子供はどこに戻るか・・・。

      • 田舎のプレスリ- より:

        私は、中学が横手市、高校が秋田市、大学が北陸の金沢工大卒業です。
        秋田に帰りました。人それぞれですね。

  3. 秋田大好きっ子 より:

    私は首都圏から秋田に戻りました。

    自殺って、私の周りでは聞かないし、いませんけどね。
    脳梗塞は、がっこ(漬物)とか、お酒とか、秋田の食生活に問題あり?
    がんは、どうなんでしょう?遺伝?国民の2人に1人はがんになっています。

    秋田に限らず、地方の学力優秀な高校生は、大学に進学しないで就職する子も多い。
    大学は遊ぶために行くと考えている子も多いです。

    今の世の中、一流大学を出てもフリーターしていたり、
    一流企業に就職してもリストラされたり、終身雇用は崩壊しています。

    お金が全てではありませんが、資本主義社会の日本、会社に頼らずとも
    自立して生きていけるように、学校での金銭教育は必須であると考えます。
    (真のお金持ちは、不労所得者が多い。)

  4. argusakita より:

    ロイターから、

    監視委、インスペックへの課徴金を勧告 上場維持へ社員が株購入

    証券取引等監視委員会は8日、電子部品製造のインスペック(6656.T)に対して、金融商品取引法違反(偽計)で課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告したと発表した。課徴金額は1224万円。
    2012年6月、同社株は月間平均時価総額および月末時価総額が3億円未満になり、当時の上場規則により、13年3月までに時価総額が3億円を回復しなければ上場廃止に追い込まれる事態になった。
    監視委によると、インスペックの役員は同社株を上昇させて上場廃止を免れることを企て、社員に指示して同社株合計31株を購入させ、株価をつり上げた。
    また、同社株が上昇して時価総額が3億円を超えた際、あたかも通常の売買の結果、3億円以上になったかのように装ったプレスリリースを公表し、株の価格形成に影響を与えた。

    東証マザーズ上場もこれで怪しくなり、秋田県では上場企業は秋銀(東証1部)とマックスバリュ東北(東証2部)しかなくなるかもしれない。
    しかし、東芝の粉飾はうやむやにして、小さいところはお咎め。
    日本の証券取引等監視委員会はいい加減なものだ。

    • ばんそうこう より:

      残念なニュースですね。関係者には頑張っていただきたいです。

  5. ブルーベリー より:

    創薬ベンチャーの UMNファーマ (4585 東証マザーズ)  もありますよ。https://shikiho.jp/tk/news/print/0/61233

    秋田大学産学連携機構の支援を受けて設立され、本社は秋田市にありますが、
    工場は岐阜で、横浜本社もあるので、実質的には横浜・岐阜中心の会社でしょう。
    秋田県は学力が低く、特に理数系は底辺レベルなので、人材確保が難しい。

    • argusakita より:

      あ、ありました。すみません。
      御所野にインフルエンザの工場(地鎮祭くらいやったんじゃなかったかな)をとか言ってたのがどうなったのか知りませんが。
      本社だけ秋田に置いても助成金もらえますから、いいですね。

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