少子化対策はヒトラーの経済政策にもヒントがある

最近は保険関係のある書類を待つのと体調を元に戻すのが仕事と割り切り我慢の日々で、実際の仕事は社員さん達にほぼ任せ、決裁・決断だけするという怠けた生活だ。
ウィーンの観光地などはほぼ行きつくして最近は近所しか出かけないため、英語・ドイツ語の勉強と日本から送ってもらった『つん読』状態の本を読んだりしている。

その中で、少し前に出版された祥伝社の新書『ヒトラーの経済政策-世界恐慌からの奇跡的な復興』『ヒトラーとケインズ』(いずれも武田知弘著)は実に興味深い本だった。
ヒトラーと聞けばナチス、ナチスは×という短絡的な見方が一般的だが、その経済政策においてはほとんど現代でも通用するほどの内容が多く劇的な結果を残しているものが多く賞賛に値するものが多い。
ケインズ理論を積極的に応用したものという評価も多いが、第一次大戦後の大恐慌から数年でドイツを復興させた奇跡的な手法と具体的な施策は確かに驚きだ。
また、実はケインズこそナチスの政策からいろいろと学びそれを理論体系にまとめたのではないかとさえ思える。
ナチスの恐怖独裁政権による力ずくの政策だという面もあるが、第二次大戦に向かう以前の経済政策であり、現在の支那や北朝鮮のような独裁政権で同様のことが出来ないのはやはり国民の圧倒的な支持を受けていないからであり、少なくともナチスは支持を受けて施策を推進したと理解しても良さそうだ。
ヒトラーと言えば軍国主義に基づいて軍備拡張にひた走ったというイメージがあるが、実は1942年まではイギリスよりも軍事費の国民総生産における比率はイギリスを下回っていたそうだ。

ヒトラーの政策は主に、
・公共事業の効果的な利用
※アウトバーン等。労働分配率を重視した点が秀逸で、短期間に巨額を投入したのも現代のダラダラとコンクリートに財政出動するのとは大きく異なる。
・失業者対策、雇用対策
※1932年に約550万人いた失業者を1039年には約12万人にした。ヒトラーが政権に就いたのは1933年(失業者480万人)
・価格統制をしてインフレを抑制
・農民、中小の手工業者を救済
※世襲農場法などが見事で、日本の農地解放もこれを倣ったというが半端だった。
・経済界の再編成
・ユダヤ人や戦争利得者の利益を国民に分配(この辺は???か)

などだが、基本には『社会を安定させ、活気づかせるという考えがあったようだ。(竹田氏はそれがヒトラーが自らの経験と知識から生み出したものと書いている)
国民に『今から4年待って欲しい、4年で失業問題を解決しドイツ経済を立て直す』と演説したらしいが、こんなカリスマにしか許されない演説ができる政治家は現代日本にはいない。アベノミクスが2年でデフレ脱却を言っているが国民はピンときていない。

2冊の本の中に少子化対策や若者の失業対策についても記述がある。
当時のドイツには若年層の失業者が溢れていて彼らは何をするわけでもなく、いわば昨今の二-トの状態だったそうだ。
そこで、彼らを落ち着かせるために『結婚資金貸付法』を作り、千マルク(現在の価値で200万円程度)無利子で貸し付けるものだ。
ただ貸し付けるのではなく、子供を1人産むごとに返済金の4分の1が免除され、4人産んだ夫婦は全額返済免除されるものだ。
これによって、落ち着いた夫婦は子供のために働き、子供が増えれば関連ビジネスも増えてくる循環を生み出した。
これは現代でも通じる話だ。筆者でも(既に両親は鬼籍だが)親のためよりは自分の子供のためなら必死に働くし、失業などと言っていられない。秋田は子供にお金をかけることで有名でその素地は十分にあるのだ。

秋田市にも結婚資金貸付の制度があるが、母子家庭の母・寡婦の子供に限られ、金額もわずかに30万(5年間、年1.5%又は無利子)と微々たるものだ。これで結婚しようなどと動機付けられるわけがない。施しに過ぎない。
年間わずかに4,000組にまで落ち込んだ秋田の婚姻数。もし、この結婚資金貸付法で最大300万円ほどの貸付を行うとして、120億円だ。秋田市の新市庁舎よりも安い。
婚姻数が増えれば、ブライダル産業、住宅産業、子供向け衣料品、塾、子育て支援、家事支援などの商売・・・、家族が増えれば車も軽自動車では不足だろう。全て地元に落ちるとは限らないが、新たな商売、引いては雇用が生まれる。雇用が生まれればさらに婚姻数、出生数も増えるだろう。税収も増えるではないか。
この『結婚資金貸付法』でドイツは、1932年に51万件だった婚姻数が1933年に63万件、1934年に73万件と増加し、出生数は20%も増えた。公的出会い結婚支援センターのような温い施策ではこんな数字は不可能だ。

さらにこの『結婚資金貸付法』の凄いところは、現金貸付ではなく『需要喚起券』という証券で支払われたことで、この需要喚起券は特定の商店での買い物に使える商品券のようなものだった。(特定の商店が良いかどうかは議論が分かれる)
つまり、この『結婚資金貸付法』は少子化対策と同時に景気対策だったわけである。
需要喚起券を学校や子供の医療にも使えるようにしたり、税金の優遇対象にするなり合わせ技の施策はいくらでも考えられる。ただし、定着・定住を条件にしたりすることは必要だ。この需要喚起券をいわゆるチケット換金屋での売買も黙認したらよい。
ただし、生みっぱなしのモラル破壊を招かないように、育児放棄やDVなどにはより厳しくあたる必要もある。

結婚や出産はあくまで個人の意思なことは当たり前だが、少なくとも子供を生むということは将来の税負担者を増やす社会貢献をする大きな側面があるため、そのイベントは社会が大いに歓迎すべきもので、そのための動機付けを後押しする施策はぜひ必要だ。

秋田県がこれを最後の手段として実施しても婚姻数、出生数が増えないならそれは秋田自体に魅力がなくほぼ滅亡する運命なのだと諦めるしかないだろう。
県全体でなくともどこかでこれを実施する市町村が出てきたら素晴らしい。

ブログランキング・にほんブログ村へ
(blog rankingに参加。ご協力を。Click it!)


広告
カテゴリー: 県政・市政・議会, 社会・経済, 秋田を改造, 教育・学校 タグ: , , , , , , , , , , パーマリンク

少子化対策はヒトラーの経済政策にもヒントがある への8件のフィードバック

  1. あじさい より:

    驚きました。
    何度も読み返しました。
    これ以上の少子化対策は無いと思えるほど、賛成です。
    「ヒトラー」と見ただけで、えっ?!と驚きました。
    すごいと思い、ヒトラーだろうがなんだろうが、いいものはいいのだと思いました。
    もはや、一刻も早く実施するべきです。

    ただ、産みっぱなしではなく、
    「納税者に育てる」という意識をもつ教育も、同時に必要になると思います。
    人口は増えてもニートや引きこもりばかりでは、税収は増えないどころか、
    生活保護費などで減るばかりです。
    納税が「取られる」という意識でなく、「助け合う」と思える教育。
    政治家や、それを施行する役人が、つつましく謙虚に生きる姿を見せてくれたら、
    『払いたくない』という気持ちはおきないでしょう。
    「取られる」というイメージは薄くなっていくのではないでしょうか。
    結婚資金貸付法は、納税の意識改革と政治家の生きる姿勢の上に成立すると思います。

    アベノミクスが成功したとしても、私は確実に年を取っていきます。
    少子化対策に「まった」は聞きません。すぐにやるべきです。
    市庁舎の建設よりも、重要で、急ぐべきだと思います。
    だいたい、のん気なんですよね。
    すべては他人事で、助け合おうという気持ちが足らない。
    災害が少ない秋田県、首長たちがのんびり、ぼんやりで
    県民市民も危機感がない。

    学力全国一位で喜ぶより、就職率一位で喜びたいです。

    長くなってごめんなさい。思うこといっぱいありすぎて、支離滅裂ですみません。

  2. 静かな秋田市民 より:

    さっそくArgusさんお奨め(?)のその2冊の本を取り寄せる
    ことにしました。
    その結婚資金貸付法というのは書かれた通りなら素晴らしい
    もののように思えます。
    昨日、ちょうどニュースで自治体による結婚支援に関する
    シンポジウムのようなものについてやっていて、何だか
    どこも実効性の無さそうな気がしました。
    自治体がそもそも結婚に介入すること自体変に思っていたので、
    ヒトラーの施策のほうが実に明確で実効がありそうな気がします。
    これくらいドラスティックなことやらないといけないですよねぇ。

    ただ、その商品券的なものを使える店、使えない店みたいなものが
    許認可制になると、裁量、利権、・・・といったものがすぐに
    連想されるので嫌な感じです。

    私は子供はいませんが、この貸付法は結婚、出産を希望する人だけ
    が利用したらよいという押し付けがない点でも素晴らしいと感じます。
    借りたくない人は借りなきゃいいわけですから。

  3. 県政やぶ睨み より:

    こんにちは。久しぶりのコメントです。

    大胆な施策ですが確かに実効ありそうな感じがしますね。
    半ば強制的な<生めよ増やせよ>でもない感じがいい。自己選択なわけですから。
    フラフラとヤンキーな連中も生まれた子供抱っこしたら結構まじめになるのが多いですし、身を固めるというのは大きな変化ですからね。
    地方財政法などで難しい問題もありそうな気がしますが、それこそ特区でも申請して大胆にやって欲しい。
    数日前だったか、殿様が来年度予算を絞って人口減少や雇用対策に100億捻り出すようなニュースがありました。
    やればできるレベルの金額規模のように思えますがねぇ。
    今風に商品券ではなくICカードみたいなものでもいいですよね。

    あじさいさん、こんにちは
    >納税が「取られる」という意識でなく、「助け合う」と思える教育。
    いつもそう思うようにしていますが、なかなか・・・。納めるよりも取られる感覚がどうしても(笑)。
    どこでどんな<教育>が有効なんでしょう?

  4. blogファンその1 より:

    結婚貸付金、画期的ですねぇ。
    ただ、いろいろ性悪説に立って歯止めをかけないととんでもないことになりそうな気もします。
    ・日本国籍を持つ者に限る(少なくともカップルの一方)
    ・一生に一回きりとする
    ・女性は(妊娠可能性確率的な)医学的に妥当な年齢の上限を設ける
    などなど、悪意を持った者や不良外国人に利用されないような仕組みが必要でしょう。

    でも、私もあじさいさんと同じように本当に喫緊の課題と思いますし、多少の貸し倒れリスクを自治体が覚悟して臨まないといけないくらい少子化の状況は悪化しているように思えます。基金を積んで一般のお年寄りからも寄付を受け付る(税制で優遇等)などをするとその自治体全体で取り組む空気が出来るかもしれませんね。

    生まれた子供が納税者になるまでサイクルは回らないわけで、20年、30年というスパンで考えられる首長がいるかどうかですね。

  5. argusakita より:

    みなさん、レスありがとうございます。
    確かに性悪説で歯止めを考える必要はあるでしょうね。
    しかし、モラル・ハザードの危険性を考えるとキリが無いですし、何か制度を作れば必ずそれを斜めに使う奴が出てくるのは世の常ですから、そこそこでいいのでは?

    後でいろいろ探してみたら、満州日日新聞(昭和12年、1937年4月12日)にこの件が記事になっていました。
    ファシスト御用達の政策だったようで、イタリアとアメリカのオハイオ州でも同様の政策が行われたようです。弊害などもあったのでしょうからもちろん検証は必要でしょうが、表面的には秋田にピッタリだと個人的には思っています。

    ナチスのこの結婚貸付法はヒトラーの思惑もあって、女性を家庭に縛り付けることも目的だったようです。女性の場合、再就職しないという誓約書と引き換えの貸付だったようです。
    また、本には書かれていませんでしたがナチスですから、おそらく貸付する男女の健康チェック(当然人種も)は漏れなくしただろうと思います。
    こういう部分は現代では当然不要でしょう。

    女性を育児から再就職に持っていくためにも今は、育児支援、家事支援のビジネスを同時に立上げ、その貸付金証券で払えるようにしないといけませんね。

    ナチス人口政策の五ヶ年(昭和14年、1939年9月1日)という論文では、この貸付法で短期間に予想以上の成果が得られたが、開始約5年後には婚姻増、出生数増が鈍くなったようだと書かれています。適齢期の男女(特に女性)がコンスタントに増えず男は戦地に行ったためでしょう。
    現代ではこれは当てはまらないとは思いますが、施策を実施しても長く続けることが重要だということは変わりないでしょう。

  6. JO より:

    ほとんど少子化対策をしていなくて、家族関係の予算が日本より少ないアメリカの出生率が、予算をふんだんに使っているスウェーデンとほとんど同じという事実をみれば、ばらまきをするより、アメリカのように減税をしたほうが良い気がします。

    • argusakita より:

      秋田県の場合、減税というのは個人、法人ともに下げる余地はほとんどないというか効果は無いでしょうからその一般的な選択肢は考えられないというのが個人的な意見です。だから、結婚資金貸し付け法のようなドラスティックなものが必要だと思うのです。
      住民税や固定資産税は役人達が減額したくないものでしょうし、所得税に関して言えば秋田県では所得税そのものを払う個人が9万人そこそこ(残りは還付で実質ゼロ)しかいないのですよ。減税効果ありますか?
      法人に関しても法人税を納めている企業が一体どれだけあるか・・・。
      赤字でも納める外形標準課税が始まればさらに潰れる企業が増える、そんな状況のはずです。

      ところで、アメリカは既に子供のいる家庭のうち母子家庭というのが約4割というのをご存知ですか?
      既に家族観も何も日本とは大きく違っています。

    • argusakita より:

      スウェーデン、フランス、アメリカといった先進国で出生率が改善したりしているところは、ほとんど移民が子供を生んでいるのであって、決してどの国も手放しで喜ぶ状況ではありません。自国民の出生率を上げないと大変なことになります。

コメントは受け付けていません。