コールセンターはどこでもできるわけではない

W杯の中継を見ていてこんな朝方まで・・・。時差ボケが治らないな。
ブラジル、ちょっと危なかったがさすがだな。

県とにかほ市、羽後町が公費を投入し誘致したコールセンター(DIOジャパン:本門のり子代表)が不調というか実質的に業務が行われていないようだ。挙句、退職者続出、賃金未払い等の問題が発生しているという。

筆者の会社でもチェコの某社のコールセンター立上げに関わったり、コールセンター業務はよく見聞きしていて、その経験から秋田では秋田市以外は設置は難しいだろうと予想していたがやはりその通りだったようだ。
余談だが、欧州の大企業の多くがチェコにコールセンターを置いている。理由は国を挙げてのバックアップも去ることながら、若年層の労働市場が豊富でしかもこの若年層の教育水準・(多言語の)語学水準が高いことがあげられる。
2007、2008年頃からか日本でもコールセンターの地方設置が流行りとなった理由は、ICT、CTIの技術革新と通信料金体系の変化によって通信における距離の問題が無くなり、土地・オフィス代・人件費の高い大都市に顧客のインバウンドの中心であるクレーム対応やアウトバウンドの勧誘その他直接的に利益を生まない部門を置くよりはアウトソーシングあるいは前記経費の安い場所で行うことが望まれたことがあげられる。
というのは表向きの話で、実際は沖縄振興策の一つで沖縄に対する圧倒的な助成の一つに通信費や施設建設費があり、コールセンター部門を持つ大企業が殺到した経緯があるが、大きな成功例はほとんどこれだけであるといっても間違いではない。
この特殊な成功例に右倣えとばかり全国の県市町村でコールセンター誘致合戦が始まり、秋田県でも遅ればせながら数年前から始まったのだ(ここでも周回遅れの施策)。
通信費以外にも事業所建物の貸与、研修中の人件費、設置機器などをほとんど自治体の補助で賄えることで、コールセンターをほぼタダで立ち上げることは可能と言っても過言ではないのが現状だ。自治体側も単純な助成だけで雇用創出が可能と勘違いしたわけだ。

コールセンターの業務は、アウトバウンドの場合は商品やサービスの勧誘、説明などでこれはまだ良いが、インバウンドの場合はほとんどがクレーム対応、要するに商品・サービスへの苦情対応が大部分で、これが案外誰でもできる仕事ではない。
自分が一消費者になって購入した物への苦情をコールセンターに電話する場合を考えればよくわかると思うが、この電話対応をするのは並大抵の精神力では務まらない。
ある時はボロクソに言われ、電話の向こうで大声をあげられ、責任者を出せ、訴えるぞと脅される。ビデオ通信も技術的にはできるはずでこれができればクレームの説明も消費者側には容易のはずだが、これが一般的にならず音声通話だけなのは、オペレータ側は顔を見ながら会話するなどとんでもない、それほどストレスフルな仕事なのだ。
企業側はクレーム対応などの専門部署で精神障害を起こす社員を抱えたくないためアウトソーシングという聞こえの良い言葉で業務を外に追い出す。

何かの統計で見たが、コールセンターのオペレータの離職率は非常に高い。パートだったり、契約社員だったり雇用形態の脆弱さも理由の一つだが、要するに普通の人間が精神的な面で長く続けられる仕事ではないのだ。しかも労災認定がしにくい業種の一つでもある。
従って最近は大手のコールセンターではオペレータの精神的なケアを行う部門設置やメンタルの強さを養うトレーニング部門を作り、こういったものに掛かる経費が増加し利益率が低下しているところもあるくらいだ。
鉄面皮で沈着冷静、決して感情移入したり当事者にならない意識保持のようなものができる人間は多いはずがない。仕事とはいえ時間を区切って自分の精神状態を変えるというのはいくら仕事とはいえ非常に難しいことだ。
自然が豊かで各種の情報やモノによる社会的な刺激が少い田舎の人間がそんな仕事をこなせるわけがない。ましてや方言やイントネーションを厳しく矯正され、頼るのは目の前のディスプレィの顧客情報やマニュアルといったもので孤独な仕事だ。
離職率が高いのは当たり前である。そのためこれを既に理解しているコールセンター企業は、ある程度の(使い捨て)労働者の数が確保できるところに設置するのが常識で、例えば100人募集するとしたら、その1.5倍~2倍は採用時に予備登録で確保しておく。つまり失業者が1,000人くらい予想される場所に1,000人規模のコールセンターなどは設置できない。もともと若年人口が少なく高齢化している自治体にコールセンターというのは土台困難なことなのだ。一方、県市町村はとにかく雇用機会確保、失業率低減が目先の目標であるため、3K業種を嫌う若年労働者に一見ホワイトカラー業種のように見えるコールセンターはある程度の雇用機会の数の確保という点で魅力的なのである。一時的に『雇用創出』の数字が出ればそれで終わりで、離職率など知ったことではない。誘致合戦の本質はそんなものだ。
そんな状況を知っていれば、ただでさえ一般的に『喋り』の苦手で社会的な刺激の少ない人が多い秋田でオペレータ確保などは難しいはずだ。にかほ市羽後町もすっかりこの罠に嵌っている。

筆者がコールセンターを開設するなら、近くに温泉施設がある場所に設置する。コールセンターの場所の制約は通信回線、電気、オペレータの通勤に必要な交通網だけである。
さらに、どんなに叫んでも泣いても周囲に迷惑をかけないような小型の防音室、部屋の中にちゃぶ台(バーンとひっくり返してもOKなもの)、どこを蹴飛ばしたりパンチをしても構わない部屋、何枚でも皿やコップを割ってもOKな部屋を用意する。(怪我をしてもそれは自己責任)
そんなものでストレスを発散し、リラックスできる仕掛けを用意しないとオペレータの離職率は下げられないだろう(使い捨てとは言っても研修等でコストはかかるのだから)。
地方のコールセンター誘致の差別化は案外そんなものが今後出てくるかもしれない。

 

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コールセンターはどこでもできるわけではない への15件のフィードバック

  1. 炙りたらこ より:

    DIOジャパン 復興装い補助金目当てか
    http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-11/2014061115_03_0.html

    いわき市はとっくに調査していますが・・・さすが秋田は遅いですね。
    秋田県だから・・・補助金を垂れ流しなのでは?
    公費で整備した象潟事業所は全く使われていない。

    • argusakita より:

      そうなんです。
      敢えて書きませんでしたが、当初から詐欺っぽい手法は囁かれていました。
      刑事事件になる可能性はあるかもしれませんが、私から見たら金を出した自治体側も未必の故意だろうという印象です。

      • 炙りたらこ より:

        秋田での開設前に他県で問題になっていたようですね。
        補助金が貰える時期に合わせて人数を無理やり増やして、その後は急に切ってしまう。
        http://pub.ne.jp/jcpiwakishigidan/?entry_id=4801629

        これはもう完全に補助金ねらいの詐欺でしょう。
        わざわざ事業所を税金で整備してるし、バックマージンはいくら貰ったのか?
        ナカイチみたく、誰も責任を取らないんだろうなー。 特に暗君佐竹公は!

  2. 元オペレータ より:

    はじめまして。
    少し前に他県のコールセンターで働いていました。
    ホントにblog主さんの書かれている通りだと思います。

    顧客との会話は100%録音されますし、時にはマネージャがリアルタイムで聞いています。私のところはありませんでしたが、勤務状況をカメラで監視されているところもあります。いつでもいちゃもん付けて退職に追い込むのは簡単なように見えました。

    小奇麗なオフィスで体の弱い私にはよさそうな仕事に見えたのは最初だけで、コールセンターのオペレータは精神的にあまりにも過酷な仕事です。

  3. 呆れ顔 より:

    国が指示して復興予算を使え使えと自治体に。
    潟上や鹿角広域のようにがれき関係で金だけもらって実際には何もやらなかった
    酷い自治体もありますが、補助率100%の事業などを自治体に任せたらこうなると
    いう典型的な例じゃないでしょうか。
    今回のにかほや羽後のような件は全国的に起きています。DIOジャパンに限らず。

    ・現地に子会社を作ってとにかく人(頭数が重要、誰でもいい)を集める。
    ・事業実績も皆無なその子会社が復興予算や緊急雇用対策の補助を受ける。
    ・親会社がマネジメントを行い、研修に人を派遣し子会社から費用を取る。
    (補助金が親会社に流れる)
    ・補助が終われば子会社は人員整理して解散
    (子会社は補助金を吸い上げるための一時的な道具)

    こうして連結決算対象の子会社を作っては解散していく。
    こんなわかりきった仕組みを行政サイドがわからないはずはないし、通常の事業
    支援の場合は補助率が最大3割や5割のようなものが多い中10割補助可能な
    復興予算や緊急雇用対策は酷い使われ方をしています。
    予算措置は国任せ、裁量権だけで関わる自治体の無能さも目に余りますが、癒着
    のような臭いを感じるのは私だけではないでしょう。
    中央に言わせれば、「だから地方に金をやると無駄遣いする」でしょうね。

  4. 隣県の人 より:

    こんにちは。
    いわきの件は知っていましたが、秋田でもそろそろ問題が大きくなりそうですね。
    岩手でもDIOジャパンは7箇所事業所を開設しているらしいですが、そのうち花巻コールセンターは急遽撤退だそうです。
    http://news.ibc.co.jp/item_22180.html
    三重県の志摩のセンターも鳴り物入りでオープンしたものの現在は求人情報も掲載が停止されています。
    緊急雇用創出事業を悪用した全国に展開した詐欺紛いのDIOジャパン、広くバッシングの対象にされるでしょうね。
    あの小島のり子という社長に沢山の自治体の首長がコロッと逝ったわけでしょう。

  5. argusakita より:

    全国的に問題が広がりそうですね。

    もともとDIOジャパンは2007年頃から四国や九州でコールセンター事業を行っていましたが大震災後、各地の自治体の緊急雇用創出事業を拾って東北では20箇所くらいコールセンターを開設しました。興味があって調べたことがあります。

    美人社長本門のり子(旧姓 小島)氏の手腕が見事なのか陰にゾロゾロ動いているのがいるのか・・・まあ後者でしょうが、DIOジャパンの株主が、
    (東日本大震災中小企業復興支援投資事業有限責任組合無限責任組合員)大和企業投資株式会社
    という滅茶苦茶長い名称で、この大和企業投資株式会社というのは大和証券グループ。上記の長い名称の有限責任組合の有限責任組合員としては、
    独立行政法人中小企業基盤整備機構(35億円)
    株式会社七十七銀行
    株式会社岩手銀行
    が挙げられています。

    大震災の復興のための巨額の予算をどこが受け皿になるかという一つの例なのですが、DIOジャパンはその下で動く株式会社で、さらににかほや羽後、花巻等の子会社はとかげのしっぽ以下ですね。

    素人目には独法、全国各地の自治体、銀行を巻き込んだ詐欺のような大スキャンダルになるかと思いきや、例によって『法に則って行っています』で問題化することは無いでしょう。どこかの撤退したコールセンターで失業したオペレータが自殺でもしたら大きく取り上げられるでしょうが・・・。日本の官民癒着の典型的な構図です。
    割を食うのは失業後せっかく雇用機会を得たと思った労働者達です。

    うーん、スペインがあんな大敗するとは思わなかった・・・。ショック。

  6. 炙りたらこ より:

    秋田県の第三セクターのくせに、欠陥住宅を売りまくり、補償もせずに倒産した【秋住】

    秋田県や横手市が計8億円掛けて木材加工施設を建設したが、
    機械を上手く扱える熟練工すらいなくて、最後まで低品質なベニアしか作れず(知事選が終わったタイミングでドサクサ紛れで)破綻した【秋田スギニカ】

    なぜか地権者に組織を作らせ、土地を買い取り、2年も立たずに破綻した【ナカイチ】

    明らかに補助金詐欺なのに、事業所まで税金で用意して1年で破綻した【DIOジャパン】

    シロアリ君にとっては、美味しいご馳走でした。
    シロアリ君が主権者の秋田県にしてみれば、いずれも成功事例です。
    その証拠に、誰も反省していないでしょ?

  7. blogファンその弐 より:

    ちょっと盛り上がってますね。
    この問題はメディアの取り上げ方に注目しましょう。
    今のところは自治体側はあたかも雇用対策を利用された被害者で、悪いのはDIOジャパンという格好で報道していますが、国が金を出して自治体の裁量で決めたものですからDIOジャパンへの施設整備や人件費補助を決めた責任が自治体にあるはずです。
    きっと決定までの経緯については不透明なものが出てくるでしょう。
    各県のローカルメディアがそれぞれの自治体を叩くことはあり得ませんから、中央のメディアが注目してくれることを期待します。
    秋住のときも地元紙はさほど追及しなかったものの千葉県の被害者達の声をTVや新聞が取り上げた結果秋田でも火がついたという経緯でしたね。

    裁判その他は寺田知事の時代でしたが秋住の問題そのものは佐々木知事時代。佐々木知事は食糧費問題で引責辞任したということになっていますが、この秋住問題も相当に効いたのでしょうね。
    今回の件が現知事に影響するとは思えませんが、ソウル便、なかいちはじめこうも失策続きだと長くないかもしれませんね。
    引責で給与減額なんて発表したら辞任は近いですよ。実際に辞める直前に元に戻して退職金満額もらいますからね首長は。

    • 炙りたらこ より:

      いわき市は調査も行い「DIOが不当な収入を得ていた」という見解だが・・・

      にかほ市商工課は「人を相手にする仕事でクレーム処理もある。製造業に従事していた人にはなじめなかったのではないか」

      DIOジャパンの問題行為を認めると、役人の責任を認めることになる。
      つまり、秋田では、「従業員が悪い!」で終了しつつある訳。
      いい加減に秋田の異常性を直視すべき。 いつまで【北朝鮮体質】なんだろう? 

  8. 一納税者 より:

    皆さん暢気に傍観者のようなこと書いてますが、大震災の復興のために、
    ・公務員給与減額→今年度元に戻った
    ・復興特別法人税→1年前倒しで廃止決定
    ・復興特別所得税→継続中、2037年まで25年間
    ・住民税→今年度から10年間
    と浅く広くかき集めた税金をこういう補助金狙いの糞企業を使ってどこかに集める仕組みは絶対に断罪されるべきです。
    例え癒着などが無かったとしても各自治体も責任の所在を明確にすべきです。

    潟上市や鹿角広域組合のネコババも断罪されるべきですが、どこも声をあげない。
    おかしいでしょ!

  9. くじらかやき より:

    緊急雇用対策の所轄官庁の厚労省は、全国各地で問題になっているコールセンター閉鎖問題に関して問い合わせ先としてコールセンターを開設しました。委託先はDIOジャパン。

    なーんてねw

  10. 通りすがりの元社員 より:

    初めまして。
    業務上のメンタルケアの前に、業務がないのに200名も募集していたこと
    それに助成金を支払っていたこと、その状態なのにさらに拡大していった
    こと・・・全てに驚愕です。

    あと「従業員が悪い!」っていうのはあの会社ならあり得る話かも(笑)

  11. 匿名 より:

    秋田がどうか分かりませんが
    盛岡の社長(支店長?)は本社?の取締役部長だったと記憶してるんですが
    少し前まで会社HPに名前が載ってたのに、ここ数日で名前が消えています。
    ヤバそうだから逃げたんでしょうか?

  12. 元オペレータ より:

    DIOジャパン、岩手の6箇所のコールセンター(それぞれ別の子会社)のうち5箇所を事業停止し、1箇所(花巻?)に集約だそうです。
    やっぱりなぁという感じですね。

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