オーラル・ヒストリーで風化を防ぐだけでは不十分

広島、長崎の原爆慰霊祭を見るたびに思うのだが、原爆による被害を語るときに何故常に話は『原爆が投下された』から始まるのかが理解できない。あたかも原爆が投下されたのが当然だったと言わんばかりに・・・。
よく言われることだが広島の慰霊碑の『過ちは繰り返しませぬから』は主語がはっきりせずに、まるで『原爆を落とされるような悪いことは繰り返しませんから』と自虐的である。
パール判事も指摘したように、10万人以上もの非戦闘員を一瞬に大虐殺(しかも2回)されたのは日本であって、正確には『過ちは繰り返させませぬから』で良いはず。あの碑文こそ『過ち』そのものだ。
一応、公式見解では主語は『世界市民』ということになっている。世界市民とはどこの誰だか・・・。

百田尚樹氏がTwitterで、
『今日は、アメリカが広島に原爆を投下した日である。女性や子供を含む一般市民を一瞬にして10万人以上も殺した。10万人以上である! これを大虐殺と言わずしてなんと言う! 日本人は決して忘れてはならない。』
『アメリカは第二次世界大戦の時にも、文化遺産を大切にし、京都や奈良を爆撃しなかったと思っているマヌケな日本人が沢山いる。アメリカが京都を空襲しなかったのは原爆投下目標都市だったからだ。京都が最終的に候補から外れたのは7月だ。奈良を空襲しなかったのは、人口が少なかったからだ。』

正論であり同意するが、京都には小規模ながら爆撃はあったらしい。
ついでに言えば、戦時国際法で明記が無いものの暗黙のルールとされる復讐する権利、戦時復仇から言えば、日本はアメリカに対して2発の同等の核攻撃の権利はあるはずで、この権利行使やその準備を69年間してこなかったからこそ日本は平和国家と言えるのだ。
しかし、現在は固体燃料ロケットのイプシロンもある。その気になれば準備くらいは日本にとって難しい話ではないだろう。
集団的自衛権もそうだが、権利を持つこととそれを行使することはそれほど次元が違うことなのだ。

秋田市の土崎空襲の話もいつもどこかしっくりこないものを感じている。
終戦前夜、どこをどう空襲されたか、こんなに悲惨だった、死者は93人、負傷者は100人以上(広報あきた 2005/9/1による)・・・。
体験者達の証言をまとめた本なども出ているが、どれも『空襲があった』から始まるものばかりで、悲惨な光景を目にし体験したことばかりである。既にほとんどオーラルヒストリーである。
秋田市では千秋公園に防空壕(筆者が子供の頃はその横穴の入口らしきものは残っていた)を作り重要書類などを退避させていたようだが本気で空襲に備えていたかどうかは怪しい。証言や爆撃の爪痕を見せる品や場所はあるが、当時空襲に備えてこんなことをしていた、逃げる場合の訓練や避難する場所をこう決めていたといった話を聞いたことがない。
ひょっとすると当時の役所も市民も『秋田の田舎まで空襲が及ぶことは無いだろう』というタカを括った勝手な思い込みがあったのではないだろうか。
これこそ、平和ボケとは言わないまでも危機感の無さではなかったのか?

秋田県、特に男鹿市は自衛隊の重要なレーダーサイトと国家石油備蓄基地がある。
土崎が空襲を受けたのは八橋油田と帝石の石油施設があったからで、なんとなく爆弾が余ったからあのあたりに米軍が落としたというわけではない。
そもそも経済制裁・封鎖されて東南アジアに石油を求めて出兵したのは日本ではないか。石油が今現在も日本の生命線であることは全く変っていない。
そして、それらが攻撃目標になることは軍事オタクでなくともわかりきったことだ。
それならば、レーダーサイトや国家石油備蓄基地を始め戦略的に重要な交通、通信インフラが攻撃された場合あるいは攻撃が予想される場合、どのように防衛するか(これは国の役割だが)、市民はどこにどうやって避難するかをまじめに検討、対策しておくことは必須のはずだ。
そこに体験者達の証言を生かすべきではないのか?

日本海には隣の狂った国のミサイルが飛び、秋田県上空を通過したこともあることをまじめに考えているだろうか。
風化させてはいけないのは『悲劇』そのものではない。悲劇のオーラルヒストリーなど100万回聞いても何の守りにもなってくれない。
風化させ、思考停止させてはいけないのは、再び悲劇にならないように危機感を持って準備する気持ちと行政主導の具体的な計画と準備ではないのか?
天災によるハザードマップもいいが、男鹿市、秋田市あたりはインシデントマップも必要だろう。

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オーラル・ヒストリーで風化を防ぐだけでは不十分 への12件のフィードバック

  1. 予備役 より:

    こんにちは。

    blog主さんが以前書かれていた、
    封印している潜在的な日本人の反米感情
    というのはblog主さんご自身の封印でもあるのでしょうね。

    先日エノラゲイの乗組員の最後の一人が亡くなって証人の一人がまたいなくなったわけですが、あの元乗組員も「多くの命を救うために原爆は必要だった」という発言だったそうです。
    これはアメリカ人がよく使う言葉ですが、この論理が今でも有効なら、
    「それなら、他の多くのパレスチナ人を救うためにパレスチナに核爆弾落とさないのは何故か?」
    と聞いてやりたいですよね。

    戦後の歴史を見るだけでもいかにアメリカというのが二枚舌、三枚舌でその標榜する民主主義というのもご都合主義なのだということがよくわかります。

    blog主さんは、おそらく「親米でも親中でもなく自主独立」指向なのだろうと思いますが(違っていたらお許しを)、私もそうです。
    きちんと防衛力を整備し、さらに核武装をしない限り自主独立はやはりあり得ません。

    • argusakita より:

      予備役さん、こんばんは。

      うーん、その3つの中から選ぶのはなかなか難しいですが強いて言えば自主独立が理想かもしれませんね。
      右か左か、タカ派かハト派かなどと組み合わせたら親中、親米、自主独立とはいっても結構な組み合わせになりますね。

      (私もそうですが)台湾の故宮博物院で見られるような支那の悠久の歴史にロマンやシンパシーを感じる人は多いと思いますが、その延長あるいは後継者として現在の中共支那があるわけではなく特に文化大革命以降は全く別物の異常な国家ですし、同じようにアメリカは高度経済成長期の日本が積極的に取り入れた文化やライフスタイルの見本が本質ではなく歴史上最強最悪の軍事&金融国家だと思っています。
      残酷さでは支那もアメリカもドッコイドッコイでしょうね。

      そうは言うものの私は現実主義だろうと自分で思っていますので、現状のドル基軸体制が続くうちはアメリカのほうに顔を向けないと不便だという程度でしょうか。
      これは年齢的な諦めというか達観してしまった部分もあるのですが、若い人には日本が日本であるためにはやはり武装中立に近い自主独立路線を歩んで欲しいなと。
      自主独立を目指すには、島嶼を含めて上陸を試みる敵を撃退・殲滅する防衛力と潜水艦搭載の核を少々持つ程度で十分だろうと思います。
      極端な話、飛び道具(ミサイル、ロケット)で遠くから飽和攻撃されたら日本は短時間で終わっちゃうでしょうから。

      昨年8月の広島でのオリバー・ストーン監督(反米でも有名)の講演。私はウィーンでYouTubeで見たのですが、日本ではきっとニュースにもならなかったかも・・・。
      オバマの悪口と日本人に向けて檄を飛ばしているようにも見えますが、果たしてどうでしょう。
      『アジアの戦争はベトナムが最後ではない。もう一度起きる』というのが印象的です。
      この講演、どう感じますか?

      • 予備役 より:

        ご返事ありがとうございます。

        このオリバーストーンの動画は知りませんでした。
        NHKのBSでやっていたドキュメンタリー(10回くらいだったかな)は見ましたが、オリバーストーンはどこか戦争が起きることを期待しているような雰囲気があってあまり好きになれません。
        日本人に檄を飛ばすというよりは、世界第X位の軍事力を持っているんだからそれなりの覚悟を決めろと言っているような感じですね。

        そういえば、韓国が建設中の済州島の海軍基地の件は日本ではほとんど報道されませんね。
        この海軍基地はアメリカが使うなら中国にとって脅威でしょうが、中韓が手を組めば当然中国の人民解放軍が常駐するわけで、日本の九州は一気に最前線になります。

      • 炙りたらこ より:

        中国は衛星破壊兵器も持ってるし、空母も核兵器もある。生物兵器もあるだろう。
        日本単体では防衛も難しい。

        アメリカなしでどう中国の侵食に対抗するのか、
        是非、オリバー・ストーンに教えてもらいたい。

        彼は、現実と理想を比べて、理想だけを追求してしまうタイプの人。
        鳩山も同じタイプだった。

        • argusakita より:

          オリバーストーンはベトナム戦争での体験で一発当てたわけですし、反米のように振舞っていますが結局は、
          『アメリカってすげぇだろ、こんな国に歯向かう意味ないぜ! アメリカの言うことを黙って聞いていたほうが平和だぞ』
          と代弁しているように思えて仕方がないのですがねぇ・・・。

          そうじゃなきゃ、こんな爆弾発言してアメリカ政府に睨まれないわけがない。

          支那からでもアメリカからでも日本に対して飽和攻撃をかけられたら日本はひとたまりも無いのは事実でしょうから、アメリカと距離を置くという考えはある程度理解できます。
          自主独立、防衛の意味は『やられても必ず一矢を報いる』の精神と実力です。

          ルーピーは日本が置かれた状況下でアメリカよりも支那寄りの発言をしたタイミングの悪さがルーピーの骨頂なのだと思います。
          相手が同じようにルーピーなオバマだったのも輪をかけてしまいましたからね。

  2. 歴史好き より:

    こんばんは。いつも拝見させてもらっています。

    私がこの時期思うのは、もう少し太平洋戦争の記録映画的なものを地上波でやって欲しいことです。決して軍事的な興味だけではありません。
    大本営発表の映像で戦争賛美だけではなく、かといって自虐的な映像ばかりでも困ります。アメリカ側の映像などもあるでしょうし民間のものもありそうです。描き方にバイアスが掛かっているのはある程度やむを得ないとしても、あまりナレーションを入れずに淡々と映像を流すのがいいと思います。

    この資源の無い小さな島国から出て行き真珠湾に始まって広大な西太平洋、東南アジア、さらに中国大陸、インドシナまで短期間に次々に進出していった状況はどう考えても尋常ではありません。国民総動員で一体旧日本軍はどれだけの装備でどれだけの規模で戦いを挑んだかをわかっている日本人は少ないのではないでしょうか。

    もし、各地でそれぞれの民族の抵抗に遭っていたら硫黄島や沖縄戦になるずっと前に消耗して負けていたのではないだろうかと。そうではなかったのはやはり日本がアジアの欧米による植民地解放をしていきそれぞれの地で支持を得たからではないかと思えて仕方がないのです。
    記録や文書ではわからないものが映像ではそれぞれが見る側で考えられます。
    どんな戦争だったのかをできるだけ映像で見ておくことが日本人には必要だと思います。

    • argusakita より:

      歴史好きさん、こんばんは。

      そうですね。旧日本軍の最大進出域(敢て言えば大日本帝国最大版図)などを見るとそのプロセスを映像で見たりすることはミリオタじゃなくても興味と驚きを持ってもおかしくないと思います。こういうサイトは勉強になりますね。
      ロシアなんか未だに『大祖国戦争』(ドイツから見ると『東部戦線』)やスターリングラード攻防戦などのドラマや映画やっていますからね。ロシアでさえ戦争を決して綺麗なものとしては描いていないです。

      日本に帰ってくると思うのが、街の中を軍人が歩いていないと感じることです。
      横須賀のような基地がある町では米軍の軍人などは歩いていますし、もう少し自衛隊の制服着た人たちが普通に街の中を歩いてもいいのになと思います。
      海外の空港などで小銃持った連中が傍を通るときなどは最初はビビリましたが今じゃフーンって感じですから。

      自衛隊が災害救助隊ではないことを日本人もしっかり理解することが必要で、日頃から親近感を持っておく(あるいは違和感を持たないようにしておく)ことは決して悪いことではないと思うのですが・・・。同じ国民でもあるわけですから。
      日教組によって、そういう部分にアレルギーを示すようにプログラミングされてしまった部分は元に戻さないと、まともな議論もできません。

  3. きりたんぽ より:

    狙いを定めて目的をという、原爆も本来は北九州の小倉に落とすはずでしたが、
    当時は天候が悪く長崎にということでしたね。
    たしかに長崎にも三菱の重工業地帯でもありますし、
    私の故郷の近くの富士重工業スバルの群馬県でも爆弾が落ちました。
    富士重工業スバルの前身は戦闘機製作所・開発会社でありました。
    その技術を活かしたのもスバル車なのでしょう。軽いタブーなのでしょうか。
    広島のマツダも前身会社は軍艦ですかね。

    • argusakita より:

      マツダは前身が東洋工業(広島東洋カープ!!)で車屋さんです。創業はコルクか何かの会社だったはずですが・・・wikiでもどうぞ(^^)。
      広島が選ばれた理由は、人口規模や地形、都市部面積で選定したいくつかの都市のうち捕虜収容所が無かったからというのが定説と聞きましたが。もちろん、呉や江田島など軍事施設が近かったことも理由かもしれませんね。

      FHIはそりゃぁ、あの零戦他の有名な戦闘機のエンジンを開発した中島飛行機ですから・・・。

      きりたんぽさん、メアド変えると別アカウント扱いになりますよぉー。

      • きりたんぽ より:

        すみません、コメントを書いて送信ボタンを押そうとしたところ、名前からアドレスから
        全て白紙になっていまして、どちらのアドレスかを忘れました。
        入力し直しましたら以前のアドレスではなかったのですね。

  4. 炙りたらこ より:

    毎年この時期には「平和への願い」 という偽善的な嘘に吐き気がする。
    軍備なしに国を守れるわけがない。これは歴史が証明している。

    軍事費ランキングで日本は6位だが、
    それでもアメリカの軍事的保護がなければ、日本は生き残れないのが事実。
    厳しさを増す状況に目を背け、基地がないことが平和と言う妄想。
    つまり、全く逆の事をやっている、

    平和を望んでいるのではなく、上辺だけのキレイ事を言いたいだけであろう。
    戦争の被害者は浮かばれない。

    • argusakita より:

      その『偽善』について安倍首相とオバマが言っているとオリバー・ストーンがガッツリ言っていますので動画見てみてください。
      平和への願いは大事だと思いますが、そこで止まるからおかしいのでしょう。
      腹筋や腕立て伏せしながら願い、祈らないと・・・。

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