医療体制の優劣で廃れる市町村、生き残る市町村

秋田のニュースを見ていたら、成人病医療センターが廃止され循環器部門が脳研センターに吸収されるようだ。
既に生活習慣病と名前が変わっても頑固に成人病の名前を冠していたセンターは大雑把に分けて循環器と消化器の2部門があるわけで、今回の半分吸収によって残りの消化器系の医療スタッフの行き場が議論の焦点となっているらしい。
素人考えでは建物の老朽化は悲惨なので新築し全部合併して総合病院的なものにしたらいいとも思うのだが、秋田県の医療関連予算は常に火の車でなかなかそうもいかないと見える。
秋田市でも市立病院を会計では秋田市から独立させて不透明なものにしているし、秋田県全体の医療体制がどういう方向を目指しているのか外からは本当にわかりにくい。

秋田県のいわゆる総合病院というのは、

【県立病院機構(地方独立行政法人)】
県立脳血管研究センター
県立リハビリテーション・精神医療センター

【市町村立】
男鹿みなと市民病院
大館市立扇田病院
大館市立総合病院
市立秋田総合病院
仙北市立角館総合病院
町立羽後病院
市立大森病院

【農協厚生連】
秋田厚生医療センター
大曲厚生医療センター
雄勝中央病院
かづの厚生病院
北秋田市民病院
平鹿総合病院
山本組合総合病院
由利組合総合病院
湖東厚生病院

【国立または政府機関系】
秋田大学医学部附属病院(元々は秋田県立中央病院)
国立病院機構 あきた病院
労働者健康福祉機構 秋田労災病院

【医療法人・社団】
中通総合病院
本荘第一病院
秋田赤十字病院
藤原記念病院
成人病医療センター

となっていて、実は(少なくとも)東北では特異な状況になっている。青森や岩手を見るとわかるように総合病院の多くは県立病院で、秋田県のように農協系の立派な病院が多く存在しているのは全国的にも珍しい。
そのため秋田県の医療体制などというグランドデザインについて県の医務薬事課がイニシアチブを取れない。医師会と大学と厚生連の3つ巴のため例えば医療関連の情報ネットワークなどが技術的な問題以前の『船頭多すぎ』でことごとく頓挫するのはここに原因がある。

秋田県の医療体制は8つの医療圏に分けられている。
この8つ、大館・鹿角、北秋田、能代・山本、秋田市周辺、由利本荘・にかほ、大仙・仙北、横手、そして湯沢・雄勝は農協系の病院が拠点となってきた歴史があるためで、最近オープンした湖東厚生病院などは建物は立派でも医療スタッフが不足で総合病院とは言えない診療所のようなものだ。
農協系の病院は金にモノを言わせて建物は立派に作るが、肝心の患者が慢性期の年寄り多数で経営的には無理矢理継続という印象が否めない。もっと地域の人口や疾病の統計的な数値に基づいて統合・縮小なりをすべきなのだが、見栄なのか何なのか規模の維持に必至で、建物をリニューアルしたり名前を変えたりとどう見ても秋田県全体の医療体制の視点からは無駄が多い。農協故に歴史的なしがらみで県費の投入もされるわけだが、診療報酬の体系で規模の維持が必要ということも問題の根っこにはあるのだろう。
規定の医師数に達せずパートの医師で運営し、病床数も維持できないグレーな状態の病院は少なくない。稼動しない施設に県費が投入されている。
それでも成人病医療センターは社団法人として入院基本料(7:1)を届出など頑張っていたほうだろうと思う。他は10:1や13:1だ。
今回の分割吸収では残されたスタッフは少々気の毒な状況になりそうだ。

どこの病院、診療所に行っても待合室に年寄りが溢れ、医療保険の面から見ると『それは病気ではなく老化ですから多少我慢しなさい』と諭す人間がいてもおかしくないとは思うが、病院によっては大した治療リスクのない保険証を持った年寄りは経営的にはWelcomeなのである。
しかし、そろそろ患者側も近所に大きな病院(中身がどうあれ)がるという安心感だけではなくしっかり病院を中身で選ぶ時代だ。

例えば、万が一を考える。
救急救命で救急救命センター他の三次救急医療施設に指定されているのは、
秋大附属病院、脳研センター、成人病医療センター、秋田赤十字病院(以上秋田市)と横手市の平鹿総合病院の5箇所だけである。そのうちの一つが無くなるわけだ。
また、出産時の万が一を考えた場合、NICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療管理室)を持っているのは、秋田赤十字病院、秋大附属病院、市立病院、秋田厚生医療センター(以上秋田市)と大館市立総合病院(大館市)、平鹿総合病院(横手市)、山本組合総合病院(能代市)の7病院しかない。
若い人がこれから定住を考えた場合に医療の環境は重要なはずで、このままだと秋田市と横手市の2択しかないことになる。他の市町村は敬遠されるだろう。
均衡ある県土の発展などという虚言はもう止めにしないと、地域の衰退の一因がこんなところにもあることとの乖離が大きくなりすぎた。

人口の多い秋田市に偏在していると批判されそうだが、そこを埋めるべくドクターヘリなどという天候などにも左右される危なっかしいものを細々と進めているのは果たして効率的なのかどうかは大いに疑問が残る。

 


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医療体制の優劣で廃れる市町村、生き残る市町村 への2件のフィードバック

  1. ジュン より:

    成人病センターが脳研に吸収される問題はただそれだけの簡単なことではない。今まで循環器救急医療の現場では成人病センターのある医師が医療技術では指導的立場を取ってきた。その該当の医師だけはクビになって脳研に採用されない。他の循環器医師は脳研に移行するらしい。脳研は循環器救急医療の指導者を捨ててしまったのである。内情を知っている関係者はこのような状況を重くみている。今後に大きな影響が出るのは必然で、クビを切られた医師の今後はまだ決まっていない。

    • argusakita より:

      ドクター達の世界では『簡単な問題』ではないかもしれませんが、我々一般の患者側、納税者側からはドクター一人の去就やM氏とK氏の長年の確執の結果などどうでもいいというか預かり知らぬことで、効率的で有効な医療サービスを提供してもらえればいいのでは?
      それよりも、解雇になる人員と同数の求人を発表してその数を有効求人倍率(0.94だったかな)に組み入れ、何十年ぶりの『高水準』とか発表する秋田県の厚顔には呆れてモノが言えません。
      秋田県の求人倍率は失業率とともに見ないといけません。

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