AIIB参加国の事情 (その2)

筆者の仕事に直接的に関係するのはユーロの為替レートなのだが、最近はギリシャ問題(ギリシャのユーロ圏離脱 GREXIT)以外にも5月7日のイギリス総選挙の結果によってはイギリスもEU離脱(BREXIT)を意識した動きになるため乱高下しそうな気配だ。さらにこれらの動きによってはユーロ崩壊の現実性が高まる。
イギリス保守党のキャメロンは選挙公約として2017年末までにEU離脱の是非を問う国民投票実施を挙げていて、この動きは従来の保守党・労働党とは別の独立党がEU離脱を公約に掲げて支持を広げていることもあり、総選挙に関しては多くのメディアが保守党+独立党の連立になる可能性を指摘している。
イギリスにとってはEU残留は移民の増加(=社会保障費増加)に対するイギリス独自の政策が取れず加盟負担金(GDPの0.5%)の割にはメリットが無いと考える人が多数だ。一方で、イギリスの輸出の半分はEU向けのため貿易面ではEU離脱は不利なはずだが、移民の増加による社会問題はそれを上回る問題として国民が感じているようだ。
EU離脱をした場合に輸出の相手先を担保するためにイギリスがAIIB参加によってアジアのマーケットにコミットしておく必要があると判断した理由の一つかもしれない。
欧州先進国がAIIBに参加した理由は支那同様にドル基軸体制への不満が根底にあるとされるが、昨年のBNPパリバの制裁金やLIBOR問題でもフランスはアメリカに制裁金を払ったが、今度はドイツ銀行も制裁金をイギリス、アメリカ当局に払うことになるなど、不満どころか金融では敵対状態である。(金融戦争)
いずれにせよ、ユーロ/円、ドル、ポンドも毎日気になるところではある。

AIIBに参加した国で途上国とされる国がどんどんAIIBに参加している理由は何か。
これは日本ではメディアが取り上げないが、日本主導のADBやアメリカ主導のWBに対する不満である。
投融資の対象でWBやADBは厳格な審査基準や対象事業の社会・環境への影響評価などを必須条件に持ち出す。
日本やアメリカなど『既に大まかな開発が済んだ先進国』にしてみれば、投融資の対象になるインフラ事業が自然環境に与える影響や建設事業における労働問題などの評価を重視するが、途上国にしてみれば少々の環境破壊や労働問題などが発生してもまずは先進国に追いつく程度の経済成長、インフラの充実が切実な問題なのだ。
有体に言えば、日本などはかつて高度成長期に公害や自然破壊などを経験して、それを取り戻すためのコストも大きいことを知っているため経済成長やインフラ整備に慎重だが、途上国はまだそれも経験していないため経済成長によってそれらも克服できると思っているのだろう。要するに、経済発展と環境破壊に対する優先順位の違いといった価値観の違いなのだ。

PHILIPPINES-CHINA-US-DIPLOMACY-DEFENCE良い例が、支那による南シナ海での埋め立て問題だ。
写真はマニラ・ブレティンで公表されたFiery Cross Reefの2006年1月と2015年4月の比較写真で支那が好き勝手に浚渫し埋め立て、滑走路まで作っている。
ところが、フィリピン政府は領土問題(海洋資源も含む)や軍事的脅威について支那を批判することはあっても、自然環境破壊を声高に指摘することはほとんどない。
深読みすると、金があったらウチがやりたかったのにとでも言わんばかりで、これはフィリピンに限らず係争中の周辺国全部がそうだろう。
日本ならさしずめ環境保護団体的な似非左翼が出てきて大騒ぎしそうな案件である。沖縄のジュゴンやサンゴも後付け風な印象だが。
もし、ADBがこういった事業を持ちかけられたら間違いなく自然環境への影響評価といったアセスメントを義務付け、融資話は前に進まないだろう。

また、中央アジア各国での労働問題は日本ではほとんど知られていないが、ロシアに出入りしているとその実態がそこここで見られる。
現代中央アジア・ロシア移民論(堀江典生 編著)などに詳しいが、中央アジアの大規模インフラ開発での底辺労働者の大部分が人身売買と無縁ではない実態があり、これらに対する投融資においてADBはILO(国際労働機関)などを引っ張ってきて改善・廃絶に取り組んでいるが、当事者達にしてみれば長い歴史を持つ奴隷制に近い人身売買は珍しいことではなく、その解消は西欧社会の価値観の押し付けと見えるようだ。

経済発展と環境破壊対策、社会問題対策を並行して行うべきと考える日本も含めた西欧社会的価値観とまずは後者にはある程度目を瞑りとにかく経済発展をと願う途上国側の価値観のギャップが、ADBやWBに対する不満(ある意味途上国いじめ)としてAIIBへの参加という現象になっているのではないか。

こういった先進国の価値観押し付けと途上国の願望のギャップはそっくりそのまま日本国内の首都圏vs地方という図式に似ている。
例えば工場や火力発電所の建設などは環境アセスメントに数年かかるが、地方の人口密度の低いところではさほど必要性・重要性が高くないケースも現実にあるものの全国一律の法律によって義務とされる。しかし、実は法律とは関係なく環境アセスメントが絶対に必要なものかどうかは別問題である。その証拠に、東日本大震災以降の電力不足で秋田火力発電所の5号機(ガスタービン発電)は、一切環境アセスメントなど行われずに着工し1年以内に稼動開始している。環境保護団体も沈黙していたのが実に滑稽だった。
どこかの”上品な”『ご都合』であり『建前』なのである。

ブログランキング・にほんブログ村へ 
(blog rankingに参加。ご協力を。Click it!)

広告
カテゴリー: 社会・経済, 迷惑な隣国, 国際・政治, 海外 タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , パーマリンク

AIIB参加国の事情 (その2) への1件のフィードバック

  1. argusakita より:

    アゼルバイジャンのバクーで開催されたADB年次総会でADBの中尾総裁は融資枠を1.5倍にし、麻生財務相も日本の投資を拡充すると発表。
    (アゼルバイジャンのニュースサイト ABC.AZ)
    ほとんど経済成長はしていないものの相変わらず国際間の経常収支が黒字(ほとんどが所得移転)の日本としては国内に震災復興や地方創生といった大きな課題を持つもののやむを得ない判断だろう。
    ADBの存在感を示す必要があるのは総裁ポストが財務省の天下り指定席であることも理由の一つのはず。
    いずれにしても、支那も出席しているこのADB年次総会で、日本はAIIB不参加を明言したことになりそうだ。

コメントは受け付けていません。