企業立地・誘致に見る秋田県自治体の無為無策

木曜日、都内某ホテルで秋田県(+23市町村、銀行)による大企業の研究・生産拠点の県内誘致を目指す説明会があったそうで、参加した知人から『実際はどうなの?』という問い合わせを受けた。
この県企業誘致推進協議会は製薬、新エネルギー、航空機産業といったセクターをターゲットにしていたらしいがその知人によれば全国の他の地域に比較して何の特徴も無く秋田に進出するメリットはほとんど感じなかったそうだ。
特に殿様知事のプレゼンで、若年層の英語教育に力を入れていることや『7年後には新規高卒者全員が英会話ができるようになる』といったジョークは会場から失笑も漏れたということでやはりどこか感覚がズレているという印象だったらしい。
7年後という数字もアホ臭いが、大企業の研究・生産拠点というのは日本に限らず世界中に候補地があるわけで、多少英会話ができるくらいの高卒の人材よりは大卒・院卒の専門知識のある外国人に日本語会話を習得させるほうがコストも低く現実的というのは大企業では今や半ば常識で、殿様知事のプレゼンでは既に2,3周遅れている。この常識は筆者のやっているようなマイクロ企業でも同様で即戦力が欲しい場合は尚更である。

企業の生産拠点というのは原料供給地・エネルギー供給地・消費地の3つとの距離・利便性が条件(ウェーバーの工業立地論による)であって、それに何らかの技術的な伝統や文化の素地と安い労働力(しかも高質・高流動性)があれば文句無しで、自治体の優遇制度や税制などはその次である。
ところが、県企業誘致推進協議会などは自治体やそれとつるむ金融機関による受け入れ体制(土地や補助・助成)が多少有利なら企業が進出してくるはずだと考えているフシがある。
秋田の地元企業はなにかと民間よりも自治体・公共機関に顔を向け公共事業的なものを受注することに躍起なため、田舎の自治体は企業とはそういうものだという根本的な勘違いをしているのではないか。企業に限らず、県内の産品を知事に届けるPR目的のニュースが未だに時々流れるが、ああいった藩主・領民的な図式も時代錯誤の勘違いによるものだろう。あれがPRに効果的だと思っているなら度し難い。
自治体による一時的な優遇制度などは長期的な経営判断では必ず何らかの税制他で回収されるものだという当たり前のことを企業は皆知っている。
つまり、殿様知事のプレゼンだのリップサービスで企業立地・誘致の一時的優遇制度をいくら魅力的に語ったとしても全く効果が無いばかりか、他の自治体に比べて周回遅れのピント外れにしか見えない。

原料供給地・エネルギー供給地・消費地の揃っていない秋田で新たな産業を興す、立地・誘致するにはそれらの一部が物理的に必要が無い、あるいは傍にある必要が無いといったセクターをターゲットにするのが普通の考え方だが、何故か秋田県や県内自治体は消極的あるいはむしろ排除する方向に向いている。しかも、製薬、新エネルギー、航空機産業といった伝統的な技術も文化の素地も無い方向を向いている。
かつて、インターネットの商用利用が解禁された直後はそれこそ全国一斉にヨーイドンの状態で秋田でもICT産業の様々な構想があったが、当時の寺田知事がその方面に全く疎かったため旧商工労働部あたりがいくら笛を吹いても踊った人や企業は少なかったし、一時的に盛り上がってもすぐに雲散霧消を繰り返した。
筆者も含めて何人かは秋田の某所に大規模なIDC(大塚家具ではなくInternet Data Center)をということで奔走したが、その先にあるものに想像力の及ばない役人や短期的な収支しか考えない金融機関の前に頓挫した記憶がある。結局筆者の場合は自分でできる範囲で軸足を海外にという自由度を取ったが月日の流れを考えると正解だった。しかし、現在の秋田のこの分野の度し難い状況を見るに、もう少し粘り強くやっておけば良かったと思わないこともないがボランティアやるほどの余裕は無かった(^^)。
米軍基地関連の交付金は別としても沖縄などよりもはるかに条件が揃い、可能性が高かったにも関わらず・・・。

そして、現在では沖縄は嘘でも本当でもコールセンターやコンテンツ制作会社などが集まる以外に『沖縄IT津梁パーク』に代表されるようなICT産業の拠点が出来つつある。ただし、このIT津梁パークは支那の成都ウィナーソフト有限公司という支那資本により出来ていて詳しくは触れないが非常に『危うい』モノを秘めている。
一方の秋田は、今頃になってICTで雇用をという超近視眼的な姿勢だったため足元を見られ、県といくつかの自治体がコールセンター業務というICT分野でも最も難しいものにチャレンジさせられた結果、あっさりDIOジャパンという詐欺に遭遇し、地元の若年雇用層を憂き目に遭わせている。

秋田にはKDDIのJIHの陸揚げポイント(岩城)もあり、役人に目利きがいればKDDIやNTTに働きかけてロシアと高速回線(RJCN:640Gbps)を繋ぎ、そこから始まるビジネス(IP-VPN等)なども創る事も出来ただろうが、ロステレコム(ロシアの大手通信会社)がナホトカから繋いだのは新潟の直江津、NTTコムがトランステレコム社(ロシア)と繋いだのは北海道の石狩市とサハリン州ネベルスク市(こちらも640Gbps)といった具合に全く相手にされていない。

・企業立地・誘致の考え方や手法が古過ぎる。
・有望な産業に対する目利きがいない。
だけではなく、さらに秋田の自治体全体の大きな欠陥がある。
それは、国内企業に対する首長のトップセールスに関して首長が全く熱心ではないことだ。たまに首長のトップセールスの話題で出てくるのは南朝鮮や台湾の航空会社や観光くらいで、国内企業に対しての話題などほとんど聞いたことが無い。

国内で企業立地・誘致は熾烈な競争が繰り広げられているが、その中でも実績を上げている自治体は東日本では例えば北海道の白老町、岩手の北上市、山形の米沢市、茨城のつくば市、栃木の足利市、日光市、長野の駒ヶ根市、佐久市、新潟の妙高市、富山の高岡市などが挙げられる。いずれも秋田市より人口の少ない自治体であり、実はこれらの自治体ではICT関連の誘致は少ない。
企業立地・誘致の優遇策が特別有利な条件というわけではない(優遇策は一般的に西日本の自治体のほうが有利なものが多い)し、それぞれ道・県ではなく市町村が独自に動いているのだ。

何が違うか。
これらの頑張っている自治体の共通点は一つ。
首長自らがトップセールスを年間100~150といったノルマをこなしていることだ。
決して数字が問題ではないがこれだけでも首長の『熱意』『本気度』が感じられる。

秋田はどうだろうか、こんなトップセールスのノルマを自ら課している首長など聞いたことが無い。
海外に大名行列を連れていく『殿様』や遊びのゴルフを指摘され気色ばむ『行灯』くらいしかいないのではないか。
現知事は公約で2期目の最初の2年間で新規雇用創出5,000人を掲げて無投票当選した。
2年以上経った今、どの資料からどの数字を拾って足したら5,000人になるのか教えてもらいたい。公約実現ができなかったのだからそれなりのケジメの行動は有権者に対して必要なのではないか?

クマクマ園の隣に漢方薬の研究所でも誘致できたら何となくやる気は感じられるかもしれないが、秋田県は屁のツッパリにもならないキャッチコピーと飲み屋とのコラボくらいしかできないのだなとそろそろ県民も見切り始めているのではないか?
『行灯』については誰からも期待の声を聞いたことが無い。
安定した官房長官が秋田繋がりなうちに何か成果が見えないとしばらくはずーっとダメ状態が続きそうだ。

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企業立地・誘致に見る秋田県自治体の無為無策 への3件のフィードバック

  1. ブルーベリー より:

    佐竹知事は、就任した年に企業訪問を積極的に行いましたが、
    ピントが外れているので、その年の企業誘致がゼロになってしまいました・・・
    佐竹知事になってから、少なかった企業誘致がさらに減りました。

    ソウル便、クマ牧場、バスケアリーナの時のように動けば動くほど悪い結果になります。
    それは穂積なども同じで、みんな似たり寄ったりです。

    有権者のレベルも低いので、仮に有能な人材が首長に立候補しても支持されないでしょう。
    役人天国の秋田県では、むしろ批判の的になると思います。

  2. 事情通 より:

    10年程前に産業経済労働部に他県生まれで大手民間企業出身の企業専門監を1人置いて企業誘致などを進めたところ、その人脈の広さや知識経験の豊富さで多数の企業を県に紹介したり(その逆のケースも)して実際に某工業団地に誘致したりしたのですが、能無しの周囲が全くついてこれず逆に足を引っ張られるような格好になり数年で帰ってしまいました。
    その人はある飲み会で『県庁の役人は民間のために役立つということをかけらも考えていない。いかに自分たちがイニシアチブを取れるかにしか興味が無い』といったことを嘆いていました。
    企業立地や誘致が出来ない理由が改めてわかったように思いました。

    • argusakita より:

      ああ、横浜のIさんですね。
      確かに彼みたいなフットワークの軽さと多方面に渡る造詣の深さは民間出身じゃないと無理ですね。いろいろ勉強させられました。
      要するに彼は熱心に働きすぎちゃったんでしょうね。

      県庁には若手・中堅には個人的には優秀でなかなかの将来ビジョンを語る人も結構いるのですが、何故か組織としてまとまると『今日やれるものは明日やれ』となるのです。
      そのかつての親玉みたいなのが知事をやっているのですから、何につけても自ずと知れたことです。
      小畑知事以降しか知りませんが、残念ながら現知事は特筆すべき実績を何も残さなかったあるいは秋田県に引導を渡した知事として歴史にちょっと残るでしょうね。

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