原爆投下の検証・再評価が盛り上がるかどうか

最近、イギリスBBCが特集を組んで日本に対するアメリカの原爆投下について再評価を提起している。写真、動画、証言、識者の意見などを広範囲に取り上げ、筆者の記憶では日本以外の国のメディアがこんな特集をしたことがあっただろうかと思うくらいだ。
Was it right to bomb Hiroshima?
原爆投下はアメリカにとって『権利』だったかどうかという切り口だが、日本人の筆者にしてみれば絶対に『んなわけない!』であって、軍事的な目標を標的にしていない無差別かつ民間人への攻撃は当時の国際法でも完全に違法であり、アメリカがどんなに『戦争終結のために必要だった』などと詭弁を弄してもダメである。
BBCの特集はここを小気味よく突いているのだが、同じ連合国であったイギリスのメディアが今こんな特集をするのはどのような背景があるだろうか。

そもそも原爆に必要なウランの臨界量をレポートにまとめ、原爆が実現可能であり航空機に搭載可能とレポートをまとめたのはイギリスの亡命物理学者オットー・フリッシュとMAUD委員会でそれを受けたチャーチルは北アフリカでの連敗もあり、ルーズベルトに開発を働き掛けたことが史実として明らかになっている。
アメリカはこれを受けてオッペンハイマーやドイツからの亡命科学者によってロスアラモス研究所を中心に開発を進めた。そして、チャーチルとルーズベルトのハイドパーク協定(核に関する秘密協定)で日本への原爆投下が確認され、最終的にアメリカが実行した。

エノラゲイが離陸したテニアン島に原爆のパーツ(ウラン235は別途航空機で輸送した)を輸送したアメリカの重巡洋艦インディアナポリスはパーツを届けて帰還する際に日本海軍の伊号第58潜水艦の魚雷によって撃沈されている。これが復路ではなく往路で撃沈されていたら、広島の原爆投下は無かったかあるいはもっと後になり、結果的に日本の敗戦、終戦記念日はもっと涼しい時期になっていたかもしれない。歴史とは小さな出来事で大きく変わるのだ。
何かのTVで見たが、エノラゲイの乗組員の一人はテニアンでの投下訓練中、毎晩ステーキを食いカクテルを飲んでいたと話していたが、同時期の日本は沖縄戦で負け、国民総動員法で人心、物資ともに疲弊しきった状態であったはずで、その圧倒的な格差を考えても所詮最後は勝てる戦争ではなかったことは間違いない。それでも宣戦布告したのはやはり根本的にはやらなければやられる時代の『自衛』だったと筆者は考える。

BBCの特集に触発されたわけでもないだろうが、ロシアのナルイシキン下院議長が5日『広島、長崎への原爆投下は国際法廷で裁かれるべきだ』と発言し、国際的な話題となった。実は突然放言したわけではなく昨年から、70年となる今年、原爆投下とナチスの戦争犯罪を並べて言及していたので、これをさらにタイムリーに改めて表明したようだ。
ただし、ついでに『日本の降伏は旧ソ連の参戦が決定的な理由だ』と決めつけ明後日の方向にも言及しているため日本ではあまり注目されていないようだ。
また、The Daily Beast紙(アメリカのタブロイド紙)のスクープ(米軍事アーカイブからのもので、筆者はソースを探している)からマリアナ諸島に広島、長崎に続く3発目の原爆資材が集められ8月19日に投下計画だったことや、さらに12発分の原爆資材が集められ、原爆による日本本土への攻撃の計画があったこともロシアSputnik紙が伝えている。
アメリカは日本を降伏させることが目的ではなく日本、日本人の完全な抹殺を目論んでいたことがどうやらアメリカの記録から明らかになってきたようで、よく指摘される人体実験などという生易しいものではなかったようだ。

ロシアはクリミア問題で経済制裁を受け、そのイニシアチブをとるアメリカに対抗する目的でアメリカの戦争犯罪を蒸し返し、イギリスはイギリスでAIIBを巡ってアメリカとは距離を置いたスタンスを取り始め、自ら関わった原爆について最終的に『投下』を実行したアメリカに対する批判めいたマスコミの論調を黙認するかのようだ。
不可侵条約を破り日本に宣戦布告し、戦後は無慈悲なシベリア抑留をしたロシアや原爆に加担したイギリスが、である。

大国の二枚舌、ご都合主義は昔も今も変わらないが、この2国だけではなくスペインのElMundo紙なども8月6日に『広島は核時代の最初のモルモット』とアメリカ批判とも取れる記事を載せた。日本人に対するリスペクトなど微塵も感じられない。

ひょっとすると今後も『あんなことをやったお前が言うな』状態の大国が弱体化したオバマ・アメリカを貶める目的で広島・長崎での戦争犯罪を糾弾するかもしれない。
日本もそれに乗ってアメリカ批判をして欲しい気持ちも筆者にはあるが、今更アメリカを敵に回しても全く良いことは無い。むしろ日本はそれらの声(それぞれはアメリカに対する思惑が主)をうまく利用して世界的な核兵器廃絶に持っていく外交が理想的だが、核保有国は多くなかなかそうはいかないことや大国の二枚舌もあり、核による平和均衡の現実は変わらないだろうか。

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