秋田県の教育界は『次のフェーズ』の準備はできているか

全国学力テストでまた秋田県がトップになったようで、さぞかしメディアは相変わらずの反応だろう。何においても1番というのは難しいことで、これを連続しているということは確かに素晴らしいことだ。子供たちは毎年変わるわけだが、先生や教育の手法、仕組みといったものが結果的に評価されることも悪いことではない。全国ワーストの多い秋田県で数少ない明るい話題なのではないだろうか。

しかし、
全国学力テストランキング
というところの平均正答率をみると確かに順位は1位だが、最下位の沖縄と比較しても10ポイント差があるわけでもなく、並べたら1位になったということだろう。
また、このテストにほとんどの国立・私立の学校は不参加のため、それらの割合が26.44%の東京都とわずかに1.74%の秋田県を同列に比較するのはおかしいし、一般に学力上位とされる国立・私立を入れた中での学力テストを行わないと本当の課題は見えてこないのではないか?
正答率について、全体としては秋田県と福井県が似たような結果になっているが、実は秋田県の場合は上から下までのバラつきが大きく、福井県の場合はバラつきが小さいのだそうだ。下位の生徒を引き上げるのも大変だろうし、全体を平均化するのもどちらも難しく、どちらの教育システム・手法が良いのか評価の分かれるところだろう。

昭和30-40年代は秋田県は学力が全国最低だったそうで、年齢的にその当事者でもありそうな筆者などは、野次馬根性で、ぜひ全国の国立・私立も参加した中での比較順位を見てみたい。
また、統計的にはこの結果が非正規雇用率や離婚件数、父子・母子家庭数と『負の相関』があることが明らかにされているものの、文科省は『相関関係は認めるが因果関係は不明』という奇妙なことを発表していたりする。もう8回もやっているというのに・・・。
携帯・スマホの普及率もテスト開始のころからよく話題になってきたが、現在は秋田は相変わらずそれらの普及率は東北各県同様低いもののテストの結果は青森や山形とは違う傾向だし、福井県は携帯・スマホの普及率は全国平均並みということもあり、相関関係も因果関係も明確ではない。

既に教育関係者にはよく知られたことだろうが、秋田県と福井県について文科省の委託で2011年に早稲田大学によって調査研究が行われていて、そのレポートがなかなか興味深い。(フルレポートはここダイジェストはここ)
秋田県と福井県の共通点が6つあり、
1)教員の授業力向上に対する教育行政の積極的で計画的な指導や支援
2)学校の外部の組織・団体の積極的な働きかけと研究活動の推進
3)学校における管理職と教員の協力関係と教員全員の共通理解に基づく熱心な学習指導
4)児童生徒の素直さとまじめさ(大人はヒネたのが多いのに(^^))
5)家庭の安定と家庭の教育力の均質な高さ
6)厳しい自然を生き抜く勤勉で連帯感のある地域や風土(これは、南の県では真似しようがない!)
なのだそうだが、秋田県と福井県の違いについても5つ挙げている。その5番目には、今後の課題として、
・大学進学実績の低さ(秋田)
・不登校率の高さ(特に、近年の高等学校における不登校率の上昇)(福井)
が挙げられていて、小中学校の調査をしたレポートの結言に高校の課題が出てくるあたりは早稲田も大したことないな・・・(^^) である。院生のアルバイトのような調査か?

この報告書によれば、秋田も福井も特別な方法や取り組みをしているわけではなく、各学校での教員の協力により<効果が上がるまで地道に徹底的に生徒に付き合う>ことを実践しているようで、その体制を作った学校や教員が立派なのと、それを受けるほうの生徒たちも時間的余裕(?)があるということなのだろう。(塾に通う率が秋田県は全国最低)
小中学校の勉強は『カテキョー』のCMのように繰り返して何度も何度もやって問題のパターン認識のスキルと経験があればある程度までは成績は上がるもので、論理的思考力や創造力などとは違うため本当の『ジアタマ』の良さが学力テストに表れるわけではないだろう。

せっかく小中学校までは『優秀』なのに、高校に入ると・・・とよく言われる。旺文社の2011年調査による大学入試のセンター試験平均点(秋田県は33位、2010年は35位)を見るとやはり高校の教育には課題が多そうだ。
大学進学率については経済的な問題も絡むため、県外への進学率の高さ、県内への進学率の低さ、県外からの進学者などを見ると秋田の大学(のようなもの)は県民のためというよりは県外出身者(さほど成績優秀ではない)のためにあるのかと穿った見方ができないでもない。

アベノミクスの第三の矢として高校ひいては大学の改革がどんどん進められようとしている。改革に反対しているのは大半が職を失いそうな教職員たちというのも当然といえば当然だが、その中身がなかなか興味深い。
高校では国際バカロレア(IB)認定校を現在の35校を3年程で200校に増やすことが大きなエポックだろう。現在、東北では仙台育英の1校だけだ。まあ、秋田県では秋田高校が順当なところか。
大学では文系学部の縮小特に人文学部や文学部の廃止などが具体的な施策になりそうだ。
これらの高校・大学の施策は二つとも非常に良いことだと思う。
IB認定でそのまま外国の大学に行けるのなら意欲のある者には画期的なことだし、経済学部を除いた文系学部はリベラルアーツ(ほぼ教養学部)でまとめて、法学、教育と医学部は高等専門学校でいいと考える筆者は大賛成だ。国策として理科系重視というのはいろいろなイノベーションが必要な日本では当然のようにも思える。

日本の高等教育について国内の大学・院とイギリスとドイツの大学での経験から言わせてもらえば、日本は『大学進学の目的』だの『大学で何を学ぶか』といったことが真顔で議論される非常に珍しい国である。他の国ではそれらを知らない・持たない若者が大学に行くことはまずあり得ない。
また、経済学部のくせに簡単な微分方程式や線形代数がチンプンカンプンなどという大学生は日本以外ではまずいない。入試で数学を選択しなくとも受験できる経済学部だの生物と化学を選択しなくとも受験できる医学部があること自体が異常である。まずはそのあたりの意識を変えないことにはいろいろな仕組みだけを変えてもダメなのではないだろうか。
さらに、中卒や高卒でも手に職を付けることやスポーツ、芸術といった多様な進路が尊重されるようになることが『普通の国』になるアプローチだと思うし、それこそがあまり経済的には豊かではなく、かつ経済成長の見込めない秋田県でどう『発展・進歩』するかの鍵ではないだろうか。

上記の点から、数学・理科についてイマイチなことと大学入試のセンター試験の成績がさほど良くない秋田県の教育システムは案外大きな課題を内在しているのだろうと推察するし、秋田の教育関係者は次の段階を見据えているだろうかと野次馬根性で気になる。

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秋田県の教育界は『次のフェーズ』の準備はできているか への4件のフィードバック

  1. ブルーベリー より:

    高校以降は勉強もしないし、読書もしないし、スポーツもしない県民性。
    高校卒業時の学力は、東北内でも5位です。 

    学力の低い高卒が大量生産され、大学や専門学校へも行かず、
    なんのスキルもなく、なんのアテもなく、将来への展望もなく、
    社会に放り出されています。
    これは日本とっても損失です!

    「学力日本一」という県を挙げてのミスリードで「秋田人は優秀なんだ」
    という幻想を作り上げているので、何年経っても改善されません・・・

    佐竹知事は能力的に残念な人なので、次の知事に教育改革を期待したいです。
    でも、次の知事が穂積レベルなら無理でしょうね。

    • argusakita より:

      >高校卒業時の学力は、東北内でも5位です。
      センター試験の平均点では例年、宮城、福島、秋田、青森、山形、岩手の順ですが・・・。

      今はもうあまり役に立たないホワイトカラーのサラリーマンや公務員を量産するのが日本の均質な教育ですから仕方がありませんねぇ。

      >佐竹知事は能力的に残念な人なので、次の知事に教育改革を期待したいです。
      でも、次の知事が穂積レベルなら無理でしょうね。

      全く同意です(^^;)。
      一人でブチ上げた『英語日本一』はどうなったのでしょう(^^)。

      • ブルーベリー より:

        秋田県は高校に入学した途端に勉強を止める割合が高いので、高校生全体の学力は、センター試験よりも酷いんです。 来年度から、県立高校2年の生徒の学力を把握するテスト「学力・学習状況調査」を行いますので、そこで明らかになると思います。

        東京大学・東北大学の入学者は東北ワースト
        秋田県は理数系がボロボロに弱い。
        http://pref.akita.lg.jp/www/contents/1201160053697/files/gakuryokukoujyou.pdf

        理数系は40位台です。極端に理数系が弱いので、論理性・合理性を欠いてしまう。
        工業・商業が発展しなかったのも納得です。
        理数系が出来ない事は、秋田県の衰退の大きな原因だと思います。

        佐竹知事が英語と言ってるのも、理数系はダメと知っているからでしょう。

        • argusakita より:

          確かに高校生というか、今の日本の大学生の数学の力は悲惨ですよ。
          5年くらい前に短期で某大学で講師もどきをやったのですが、三角関数を使えない奴に電気・電子工学の基礎はハナから無理で愕然としました。昔は中学校でやった三角関数、行列、集合、確率などはほとんど高校でしかもちょっとだけ。理系のカリキュラムの滅茶苦茶な大変革をしないと一億総文系になると仲間内で話題になったくらいです。
          ひょっとして、中学・高校の理科系の教師自体が程度低いのだろうと・・・。秋田県も同様なのでしょうね。

          時代が違うと言われればそれまでですが、私の中学、高校時代は物理も化学も生物も必ず実験・実習があって、教室で講義だけというのは少なかった気がしますが、自分の子供たちの中学、高校時代を振り返るとほとんど実験や実習をやっていませんからさぞかし退屈だったろうと思います。小学校でも鮒や蛙の解剖やりましたが、今は皆無でしょう?

          薬品なども比較的自由に使えて、中学の時に硝酸銀で火傷したり、金属ナトリウムの破片(柔らかい生節みたいにカミソリ刃でサクッと切れましたが)を水に入れてスリルを楽しんだり、高校では硝酸と硫酸と脱脂綿でいわゆるニトロセルロースを作ってその煙の多さに皆で驚いたり・・・、ああいう経験が無いと理科系そのものが進路検討に全然入ってこないと思いますね。(昔の理科室の天井に煙センサーがついていたら大変でした(^^))

          変な話ですが、今でも薬品や材料があれば自分で爆発装置や時限装置くらいいつでも作れる気がします。(昔、高校の時『腹腹時計』のコピーも持っていました(^^;))

          長い時間かけて理科系の学生を減らす方向に持って行ったのは過激派を恐れたある種の国策だろうと密かに考えています。
          サイエンスやテクノロジーは両刃の剣ですからね。

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