秋田市のネーミングライツ売却の問題

少し前に秋田市が市立体育館ネーミングライツ(命名権)を秋田ケーブルテレビに期間付きで売却(3年間、1,050万円)したとニュースがあった。名称は『CNAアリーナ★あきた』(読むときは、・・・くろぼしあきた と読むのか? 験が悪いな(^^))
それ以前にも2月に秋田市立図書館と分館の5施設一括で北都銀行に売却(こちらは3年間で324万円)。4月から5施設全部が『ほくとライブラリー****図書館』となった。


ネーミングライツ自体は1980年代にアメリカで生まれたものらしく、日本では2003年に東京スタジアムが味の素スタジアムになったのが最初とされているらしい。
今頃になってやっと秋田市も右倣えかと相変わらず昼行燈の無為無策な市長と秋田市らしい施策だなと思っていたが、考えようによっては売るものが無くなって、何とか売れそうなものを売るタケノコ暮らし”になったかと心配ではある。
このネーミングライツ売却は一見すると良さそうに見えるものの、あれこれ問題があることが指摘されている。

・期間限定運用、併用の問題
市立体育館の名称が『CNAアリーナ★あきた』となった場合、行政上の正式名称『秋田市立体育館』と『CNAアリーナ★あきた』を併用するのかどうか不明だ。所管する秋田市の教育委員会の資料を見ても特に記載はなく契約書等も公開されてはいない。
実際、千葉の中台運動公園の場合、併記したことで契約違反に問われたケースもある。
3年間は一生懸命、様々な媒体で『CNAアリーナ★あきた』を使うだろうが、もし行政が『秋田市立体育館』も併用するならネーミングライツを取得した側にしたら『ズルいだろ』となり、逆に『秋田市立体育館』を一切使用せず『CNAアリーナ★あきた』だけを使う場合、3年間は秋田市が様々な公的媒体で告知を行う際に一民間企業の無料広告を際限無く手伝うことと同義であり問題と言える。(ひょっとしたらNHKも『旧秋田市立体育館』と言うのか?(^^))
しかも、3年の契約期間終了後、どうやって『CNAアリーナ★あきた』の名称を媒体から消し去ることができるのか。全くの第三者はWebやその他で使用を続けるだろうし、取得した側が3年後積極的に各種媒体から削除を依頼したり強制することはまずあり得ないだろうから、3年の契約で実質的に未来永劫(CNAが潰れない限り)使えるのと同等ではないか。
欧州で認められたネット上の『忘れられる権利』、欧州連合司法裁判所(ECJ)がGoogleに対して行った検索結果の削除命令のように現実的には処理が不可能に近い困難さを当事者双方が抱えることになる。
解決法は無いため、とりあえずまた3年契約を締結し問題を先送りするのだろうか。
また、3年後に別の企業が取得した場合、複数の名称・愛称が一般に広がり混乱が生じ、それこそ契約違反等の訴訟沙汰が起きないとは言えない。当然売却した側(秋田市)は訴えられる側に回る。

・税務上の疑問
ネーミングライツは商標権、特許権、営業権といった法的な根拠のあるものではなく無形固定資産として資産計上されるものではない。
地方自治法においても命名権売却は『公有財産の処分』にあたらないため、自治体の議会での議決は必要ないはずだ(公有財産なら議決が必要)。それをいいことに教育委員会がスタンドプレーしているのかもしれないが、後述するように違法という判決も既に出ている。
行政が法的に価値の無いものに値段を設定(例え入札でも)し対価を得ることが可能(しかも議会の議決も不要)なら歯止めが効かない。
突然湧いて出てきた『公有財産もどき』を会計上どう扱うのか不明だ。
おそらく秋田市は調子こいて今後は市立病院や公民館や斎場などもネーミングライツの対象にしそうな気がする。
それなら、極端な話、市長の名前(愛称)でも売ったらどうなのだ。秋田市”昼行燈”市長だの秋田市”しょっつる”市長だの秋田市”歴代サイコー”市長だの楽しいネーミングがついて売却できると思われるし、市長の行く先々で良いPRになるではないか。何しろ任期が終われば実質的に清算可能で後腐れが無い。無論、買う人がいればの話であるが・・・。
決して荒唐無稽な話ではなく、実際、大阪の泉佐野市は市名そのものを売却しようとしたが残念ながら買い手が現れなかったし、東京の渋谷区では10か所以上の公衆トイレのネーミングライツを既に売却している。(画像は渋谷区のHPより拝借)

shibuya-wc

企業側から見るとこのネーミングライツは資産計上されるものではないため『広告宣伝費』である。しかし、実際の役務の提供(秋田市に対して)が無ければ損金算入もできず『寄付』扱いになるのではないか?
損金算入ができれば企業にとっては節税になるわけで、行政が企業の節税に協力する図式は決して褒められるものではないだろう。税務署は『実際の役務の提供があるか否か』を注視していることだろう。(税務上の扱いで筆者の誤認があればご指摘願いたい)

・既に違法判決も出ている
実は、今年3月15日に東京の渋谷の区立宮下公園の命名権を巡る裁判で東京地裁が『命名権の契約は区議会の議決を経ておらず違法だ。また命名権の契約は区議会の議決を経ていないうえ、競争入札が難しいケースではないのに随意契約で行われていて地方自治法に違反している』
という判決が出ている。契約金を支払っている当事者のナイキは頭痛のタネだろう。秋田市は時系列から見てこのケースを無視したのだろうが、この判決が確定すると、今後自治体のネーミングライツ売却は微妙なことになる。市民団体の格好のターゲットだろう。

年間の市民1人あたりの図書購入費が60円程度と同程度の規模の自治体と比較して全国最低水準の秋田市がそれを理由にネーミングライツを売却したり、施設維持費の補充を目的に市立体育館のそれを売却する理由は理解できるが、先般発表された土地の基準地価をみてもわかるように何十年も下落しっぱなしにも拘わらず税収の3割程度を依存する固定資産税や人口減で減少の方向が明らかな住民税といった自治体の税収そのものの組み立てについてもっと根本的な議論や施策を進めるべきではないのか?(法律の制約もあるだろうが)
中核市としては珍しく都市計画税(県内では実質的に大館市と由利本荘市しか無い)の無い秋田市はゴミ袋有料化ですり替えたと思ったが、なんと大幅黒字のゴミ袋の収入を一般財源にせず基金として積んでいる。これらを見直すことも市や議会の仕事のはずだが、市長同様全くの無為無策の集団である市議会では議題にもならないのだろう。
それよりもまず無駄な支出を洗い出していくことが重要だろうが、起債できる限界まで目一杯借金をして無駄に立派な市庁舎などを新築するように無駄遣いだけは天才的な多重債務者状態の市やその追認機関の議会などに期待するのは土台無理というものか。

ふるさと納税などと税の理念と仕組みの本質的な部分がおかしな税制になってきている日本の病巣は根深いが、地方自治体が多少の財源を生み出す方法はネーミングライツだけではない。
例えば秋田市など市街地では、街の中に『ベンチ』や『樹木』を個人あるいは法人の寄付で設置したり植えたりしていく方法もある。(ナショナル・トラスト風な仕組み)
ベンチの多様なデザインを美大の学生に依頼するとか植樹する樹木も農業高校や特別支援学校などに委託して生育してもらうなどを行い、寄付した個人や法人の小さなネームプレートを条件に『ベンチ』や『樹木』を増やせば、街の中にちょっと休む場所もでき年寄りたちが歩く際には役に立つし、緑化などにも役立つ。広小路のお堀側の歩道には小休止してサツキやハスの花を眺めるベンチがあってもいいはずだし、柳の葉が揺れ風情のあった旭川などを再生するのに民間の小口の金を集めて使うのも一つの方法で、原価を低く抑えればその寄付から他に使える財源を生むことも条例レベルでいくらでもできるだろう。
半永久的なネームプレートを条件にしたら、もしかしたら秋田市以外からの寄付も期待できるかもしれない。そのベンチや樹木の傍でスマホの充電(有料)なども出来たら今風で良いではないか。
ブログランキング・にほんブログ村へ 
(blog rankingに参加。ご協力を。Click it!)

広告
カテゴリー: 県政・市政・議会, 秋田を改造 タグ: , , , , , , , , , , , , , , パーマリンク

秋田市のネーミングライツ売却の問題 への1件のフィードバック

  1. 地元民 より:

    ネーミングライツ、販売好調(!?)だそうです。
    住民税、少しでも下げろよ….と思うのは私だけ?(笑)

コメントは受け付けていません。