イギリスはどこに向かうか?

今日から、支那のシー・ジンピンがエリザベス女王の国賓としてイギリスを訪問している。
最近、イギリスの動きが興味深い。
アメリカ大統領がオバマになって以来、欧州は全体的にアメリカ指向は弱くなったのだが、中でもかつての保守党のサッチャー、メージャー、労働党のブレア、ゴードンまではことあるごとに英米の特別な同盟関係を見せていたものの、再び保守党のキャメロンになってからはあまりそれを感じさせない。むしろAIIB参加に真っ先に手を挙げたり、有志連合とはいえシリア空爆にはまだ加わらない(検討はしているということだが)ことなどオバマとは足並みを揃えていない。最近は英米双方で目立った高官の往来も無くアメリカ側も少し冷めた目で見ているフシさえある。

一方で、イギリスは昔から大陸側の欧州諸国とは距離を置いていてECからEUへの切り替え時のマーストリヒト条約も批准せず、通貨もスターリングポンドを維持し、メートル法にも背を向けている。ここはかつての大英帝国のプライド故かというとそれだけでもない。
昔のアイルランド共和軍(IRA)によるイギリス国内でのテロを始め、スコットランド独立派が昨年9月に独立住民投票を行う結果になった(結果はNo)ことなど、4つの王国の連合体的性格を未だに持つため、イギリスという一つの国家としてまとまりが難しく、首相がどこの出身であろうとなかなか一枚岩ではいかないのが実態だ。アメリカのような州による連邦と違うこの辺りの感覚は筆者が約30年前にイングランドの北端のニューカッスル・アポン・タインにいた頃よく感じたもので、なかなか理解しにくく、強いて言えばかつての旧ユーゴスラビアと似たような印象だ(UAEのようだという人もいる)。サッカー、ラグビーでそれぞれの旗を持って出てくるあたりを見ればその『変』なものが垣間見える。
よく言われる各国の欧州懐疑主義(Euroscepticism)というのがイギリスでは特に根強くあり、例えばギリシャ危機やスペイン危機などへのEUの対応が大陸側のドイツ主導で進むことを面白く思わない向きがあることは確かで、イギリスのアメリカ追従が長かったせいで支那や北朝鮮に市場を獲得したドイツのようにうまく立ち回れなかった後悔・反省があるのかもしれない。(ドイツのなり振りかまわずのやり方には欧州ではそれなりの批判が多い)

アメリカ、欧州からは一定の距離を置きながら、旧植民地を眺めると香港・東南アジアは支那に奪われ、インドは日本やロシアを向き、アフリカはフランスや支那が好き勝手にやっている。中東はイスラエルが既に独り立ちしコントロールが効かない。カナダ、オセアニアも既に国旗や国歌さえ変わったり変わろうとしている。
ある種の疎外感を感じてもおかしくないイギリスにすり寄って来たのが最近の支那である。

86190780_mall_pa今回のシー・ジンピン訪問での目玉となる予定されている大型商談は原発と新幹線とイラクでの油田共同開発提携だが、訪問前の駐英支那大使のリウ・ジャオミンに対するBBCのインタビューで司会者が『イギリスも支那で同じように原発建設のチャンスはあるか?』と聞いたところ、『第一にイギリスに金があるか? また、技術や専門知識があるか? もしあるならフランスがそうしているように同じような協力が可能だ』とストレートに無礼な返事をした。しかも”フランス”という単語も出して・・・。これはジョン・ブルもムッとするはずでイギリス全体の琴線に触れたのだろう、各マスコミはそれまで支那とイギリスの蜜月をアピールしていたものが一気にトーンダウンした印象がある。
今回は女王の招きによる国賓での訪問(支那からは10年ぶり)だが、ダライ・ラマと親しいチャールズ皇太子は既に晩さん会への出席を拒否しているし、マスコミも一斉に支那のチベット、ウイグルでの人権弾圧問題にスポットを当て始めている。
キャメロンとオズボーン財務相は完全に支那に顔を向けていて、議会演説の機会を与え、大型商談、特にヒンクリーポイントの原発についての支那からの投資をお土産として期待している。

ロンドン~マンチェスターの新幹線についての投資、マンチェスター大学へのHuawei社による通信機器等の投資なども期待されているため全ての商談が決まれば確かにイギリス・支那の『黄金時代』の開始となるかもしれないが、新幹線は日本の日立が既にIntercity(ロンドン~エディンバラ、新幹線ではない高速鉄道)で現地工場での生産で食い込んでいること、通信機器等はアメリカが必ず横槍を入れる(はず)、イラクの油田開発はBPと国営石油天然気集団公司の契約になるがBPとしてはイラクは他のスーパーメジャーも狙っているため支那国内での事業拡大(尖閣付近も含む)が狙いとされる、といった具合にそれぞれすんなりとは行かない模様だ。

1986年9月のサッチャー肝いりの日産の工場(サンダーランド、ニューカッスルから20kmほど)が稼働したときはそれまでの英国病を払拭するかのような滅茶苦茶日本歓迎ムードで、筆者もパブでも知らないオッサンから『ニッサーン? ニッサーン?』としょっちゅう聞かれ、一時は面倒くさくなって『シュア、ダッツン!』と答えたりしたものだが、これから果たして英・支『黄金時代』が始まるかどうか・・・。
先般の訪米で思いっきりメンツを潰されたシー・ジンピンが少々『ボッチ』状態のイギリスでどのような歓迎を受け、どのように商談をまとめ連携していくか、多くの国が見守っていると思われる。

アヘン戦争など互いに触れもしないだろう。支那が歴史問題を叫ぶのは対日だけである。
今日発表された支那のGDPが前年同期比6.9%増と発表されたが、市場はあまり反応していない。実際には既に3%台だろうと市場が既に織り込み済みなのだろう。公式に(必要な)7%を切った数値の発表はそれだけ支那が危機だという証拠かもしれない。
支那は『世界の工場』から『世界の市場』に進化するはずだったが、もはや無理だろう。
そんな支那の現状を十分把握しながら利用しようとするイギリスもなかなか厄介な国である。

 

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イギリスはどこに向かうか? への5件のフィードバック

  1. argusakita より:

    イギリスとフランスのマスコミはヒンクリーポイントの原発は、イギリス+フランス(EDF、アレヴァ)で建設と先に発表。
    支那から投資は受けるものの、あくまで英仏の共同開発という空気を作りたいようだ。
    支那は『福島事故以来、先進国で初の原発建設』とアナウンスする予定だったものを英仏が機先を制した格好で、支那の投資を恩着せがましく発表することを牽制した。

    しょっぱなからシー・ジンピンはメンツを潰された格好。

  2. argusakita より:

    支那のメディアが、支那とイギリスの『黄金時代』の演出に必死です。
    両国にはこんなに共通点があるという動画。
    http://europe.chinadaily.com.cn/2015-10/19/content_22222774.htm

  3. argusakita より:

    とりあえずは、国賓としての扱いは受けているようだ。

  4. argusakita より:

    バッキンガム宮殿の晩さん会
    なんとボウタイのドレスコードも無視して支那流!
    チャールズ皇太子は予定通り欠席。

  5. argusakita より:

    総額400億ポンドに及ぶビジネス

    ■原発
    ヒンクリー・ポイントのプロジェクトに60億ポンド
    支那広核集団(CGN)と仏電力公社(EDF)

    ■自動車
    アストン・マーチンのEV『ラピード』開発に5,000万ポンド
    ロンドン・タクシーの吉利汽車(ジーリー)の研究能力の向上と無公害のタクシー導入に5,000万ポンド
    ジャガー・ランドローバー(JLR)は、支那のアルミニウム車体工場に出資する。支那では現地の奇瑞汽車と合弁事業を展開。

    ■レゴランド
    英マーリン・エンターテイメンツは中国の投資会社との合弁で上海にレゴランドを開園予定。事業総額は3億ドル

    ■ロンドン東部開発
    支那のデベロッパー総部基地(ABP)がロンドン東部の湾港地域『ロイヤル・アルバート・ドック』の再開発計画で支那の中信集団(CITIC)と組む。CITICは同計画の40%を出資
    ABPは新国際金融街を建設する計画に参加。また、イギリス全土での大規模なインフラおよび住宅プロジェクトへの参加を計画

    ■ヘルスケア
    ヘルスケア分野では両国の企業や大学、団体の間で20億ポンドを超える契約

    ■天然ガス
    英は向こう20年間、中国華電集団に対し、年間最大100万トンの液化天然ガス(LNG)を販売する合意文書に署名

    ■クルーズ
    米マイアミと英サウサンプトンに本社を置くクルーズ船運航大手カーニバルは、急成長中の支那市場をターゲットにした運航を始めるため、支那国有企業2社と26億ポンドを投じて合弁事業に乗り出す。契約期間は25年。

    ■航空機
    英ロールス・ロイスは支那の運輸大手HNAグループが運航するエアバスA330型機20機にトレント700型エンジンを供給することで合意。総額は14億ポンド。

    ■保険
    英保険組合のロイズ・オブ・ロンドンは、支那太平保険の海外事業ネットワークの拡大支援に向けてパートナーシップ契約を締結。

    ※20年だの25年だの長期契約しても支那共産党がそこまで存在するか・・・。
    支那は2007年に、フランスのサルコジがポーランドでダライラマ法王と会談したことに怒り、エアバス発注の100億ユーロ分をキャンセルした実績がある。

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