欧米は何故IS壊滅に本気にならないか

相変わらず亡命者(いわゆる難民)の欧州流入が続いている。
ドイツでは難民認定できないコソボやアルバニア等からの亡命者を強制国外退去させる法律を1週間前倒しで施行し、選別を進めている。今後強制退去を行うだろうがその方法や数によってはかつてのアウシュビッツ行きの列車のような国外退去の光景が出現し、難民受け入れに賛成の左派からメルケルは非難を浴びるだろう。左右両派から非難を浴び、ドイツの『道徳押し付け主義』が後退してきたためEU各国では同様の対処が進むと思われる。ノーベル平和賞を受賞しそこなったメルケルは左右両派の過激派に命を狙われかねない。


何故シリア難民が400万人も発生するかについてはシリア内戦やアサド政権の弾圧が原因でその根源を絶つべく欧米有志連合はIS掃討を目指していることになっているが、コトはそう簡単ではなく、それを欧州の人々はわかっているためIS壊滅に本気にならない、あるいは本気で壊滅させられないのだ。
安倍首相も先般国連で難民受け入れについて聞かれ『受け入れよりもまず難民発生の根源に対処する』といった軽率な発言をしたが、欧米では到底理解されない。
もし、難民発生の根源にまともに対処したらそれこそ泥沼に入り込むからだ。

欧米がIS掃討・壊滅に本腰を入れないのは、オバマのヘタれも一因ではあるが、実はISを壊滅させてもその次にもっと大きな問題があるからだ。
それがクルド問題だ。
クルド人については日本でも『少数民族』という報道がされるが、とんでもない。世界で国家を持たない最大の民族がクルド人である。約3,000万人いると言われるクルド人が何故少数民族と言われるか?
Kurdish-inhabited_area_by_CIA_(1992)それは、第一次世界大戦前にはほとんどのクルド人はオスマン帝国内のクルド州に住んでいたものの、オスマン帝国の解体後に英仏露によって民族とは無関係に国境線が引かれたために、クルド人が5カ国(トルコ、シリア、イラク、イラン、アゼルバイジャン)に跨って分布することになった(現在はアルメニアにも)。
そのため、イラクでは政権から見たら自治区の『少数民族』、トルコでも同様に自治区の『少数民族』と言われるので日本でもそう報道され、少数民族を弾圧するトルコ政府、シリア・アサド、イラク政府、イラン政府という図式で日本を含めた西側各国では報道される。
ところが、この『少数民族』クルドは自らクルディスタンという国家めいたものを標榜し、正規軍25万人(!)と言われる軍隊を持ち、首都と称するイラクのクルド人自治区のエルビル(Irbil)には高層ビルなども建設され各国のクルド人自治区の代表が集まりクルディスタン再興(国家として世界に認めさせる)を謀っている。その国家樹立のための原資ともいうべきものがイラク最大の油田キルクークでこれをクルド自治区に取り込もうとするのがクルド人の目標の一つで、現在このキルクークを巡ってIS、クルド、イラク政府が三つ巴状態にある。

余談だが、正規軍25万人(自衛隊でさえ23万人弱。西側では『クルド武装勢力』と報道される)の中には女性だけの部隊もありISと戦っているそうだ。イスラムの教えでは女性に殺されると天国(72人の処女が待っている)に行けないとされているらしく、ISの戦闘員はこの女性だけの部隊を見つけると逃げ出すそうだ。

一昔前、湾岸戦争ではイラクのフセインが大量殺戮兵器保有(未発見)、クルド人弾圧を理由にアメリカの攻撃を受けたが、そのクルド人弾圧もイラクが長年に渡ってクルド人によるテロ行為(クルド正規軍による攻撃)に悩まされていたことに対する(ある意味)正当な報復と世界に報道されていればイラクに対する見方もずいぶん変わったはずだ。
現在も、この国家樹立を目論むクルド人をバックアップしているのが、同様に中東での国家の安定維持を狙うイスラエル(武器供与、イスラエルはISにも供与している)であり、キルクーク油田を狙う欧米各国(資金提供)であることは公然の秘密で、それを知っているからこそ欧州の特に英仏はクルドとISの共倒れを待つような温い対応しかしないのである。
とりあえずは暴力・破壊的なISを壊滅はさせたいものの、それが無くなった場合に勢力を拡大するであろうクルドを欧米は放っておけないはずだ。
今更クルディスタンを国家として認めて国境線を引き直すなど5カ国に限らず世界のどこも認めるはずがなく、それこそ、大戦になってしまう。
やはり諸悪の根源は英仏なのである。

欧米流の『民主主義』を中東全体に普及させ一般化することは(安定している独裁国家の)サウジやUAE等湾岸諸国がある限り不可能である。(実際にエジプトやリビアでは失敗している)
むしろ、『力』による支配を認め、『力』による均衡を目指すほうが『安定』への近道であり無垢の人命を失わないはずとするロシアの主張やアプローチ(無論ロシアの権益確保もあるが)はまんざらでもないのではないかとさえ思える。
イスラエルだけに核があることも安定化には問題だ。

ISは活動の舞台を各武装勢力がバラバラに対抗するシリアからもっと各国・各勢力の思惑が単純なエジプトやリビア、アルジェリア、マリ等アフリカに移しつつある。
日本は簡単に言えば安定した原油供給国さえ確保できれば国益は確保できるわけで、何も英仏露(+米)の責任の泥沼に進んで入っていく必要はないはずで、安倍首相のように『難民発生の根源に対処する』といった軽率な発言はどうにも理解しがたい。

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欧米は何故IS壊滅に本気にならないか への1件のフィードバック

  1. argusakita より:

    トルコ空軍が国境付近で未確認機を撃墜したようだ。
    事故か攻撃か・・・。
    撃墜されたのは、ロシア機・・・?
    ますます複雑になっていきそうなシリア情勢。
     

     

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