秋田県は石炭火力を『雇用』で歓迎するのか?

少し前の話題だが、秋田市秋田港隣接の例の大王製紙誘致予定地だった県有地に関電の子会社関電エネルギーソリューション(Kenes)(大阪市)と丸紅が組んで出力計130万kW(原発1基並)の大型の石炭火力発電所を新設する方針を固め、これを秋田県が速攻で了承。(2015年3月12日の殿様知事のコメントはこれ)
関電は市原市で東燃ゼネラル石油と100万kW、仙台市でも伊藤忠グループと出力11万kW程度の石炭火力の建設を計画していて、首都圏への売電を視野に入れた電源開発を急いでいる。これは、来年春から開始される電力小売りの全面自由化を睨んだもので、関電以外にも神戸製鋼所(神戸市・石炭122万kW、栃木県真岡市・ガス120万kW)、大阪ガス&電源開発&宇部興産(山口県宇部市・石炭120万kW)、中国電力&エアウォーター(山口県防府市・石炭バイオマス10万kW)、中部電力&東京電力(茨城県東海村・石炭65万kW)などと計画が目白押しだ。

しかし、この秋田市と市原市の2つの石炭火力の計画に環境省の丸川大臣が11月13日に環境影響評価法に基づき『現段階では是認できない』とする意見書を林経産相に提出した。
理由は石炭火力が増えると国の温室効果ガスの削減目標達成に支障が出ると判断したからだそうだが、評価手続きの途中段階でのコメントで単なる存在感アピールかと思ったが案外そうでもなさそうだ。
20151208-OYT1I50031-N現在パリで開催されているCOP21に出席した丸川大臣がこの秋田市と市原市の2件を出し『CO2削減の目標達成のためにこの2件を了承していない』と発言したようだ。ある意味国際的に公約めいた発言をしてしまったわけで、今後の経産省や立地自治体とどう擦り合わせるか注目だ。

現在日本で新設される石炭火力はSOxやNOxや煤塵については排煙脱硫装置(水を使う場合は多少別の問題も出るが)によってしっかり処理されて欧米の平均的な石炭火力に比較して1/10程度とされる。LNG発電の場合は石炭の1/2と言われる。
しかし、排出されるCO2に関しては如何ともしがたいことは間違いない。
それでも能代火力の超臨界圧(SC)や超々臨界圧(USC)石炭火力発電の場合は蒸気タービンの圧力や温度を上げているため発電の熱効率が高いため、熱効率から見てCO2排出量は相対的に低い(?)のだという論法が使われる(CO2はそれなりに出るのであって少ないわけではない)。

秋田県としては遊休県有地の有効利用や石炭火力は建設以外にも稼働後の継続的な維持に手間がかかることから地元での雇用が見込めるため殿様がwelcomeなのは理解できるが、以前から何度も言及しているエネルギー王国だの何だのと言っても秋田の持つ再生可能エネルギー(風、地熱、バイオマス)ではなくCO2排出の問題の大きなポイントである『石炭』をwelcomeするのは、結局は何の見識も展望もなく、『雇用』というものをぶら下げられたら尻尾を振る程度のモノであることが明らかになった。
秋田に原発は立地条件で適当なところは残念ながら無いが、風、地熱、バイオマス、あるいは波力なども含めて秋田は日本国内で最も再生可能エネルギー資源に恵まれていると言ってもおかしくない場所であり、そこにconventionalな『石炭火力』というのはどうにも能が無さすぎる。
(宝の持ち腐れ)

関電も関電で左巻きの数が少なく目立たずアセスメントで問題が出ても無視できそうな貧乏な地方を狙うあたりがどうにも姑息で嫌な感じがするし、遊休県有地(しかも工場予定地だったため原野ではない)の利活用で弱みを持っている自治体を狙い撃ちした感があり、相変わらず都会の『内国植民地』的な扱いを受ける秋田が何とも嘆かわしい。

地元メディアは県や市の広報部であるため今回の件はCOP21での丸川大臣の発言など当然取り上げないし、今後アセスメントや近隣住民の意見などは取り上げることはほとんど無いだろう。
何しろ、東日本大震災後の電力不足で秋田火力発電所では緊急設置電源として軽油使用のガスタービン発電機が新設されたが、この際にアセスメントは一切行われなかった。緊急時とはいえ、その後電力不足の心配がないからといって稼働停止したとは聞こえてこない。単に緊急を理由に設備更新したに過ぎないだろう。改めてアセスメントをしない理由は不明だ。

秋田県も関電もWin-Winだと喧伝していくのだろうが、火力発電所設置なら送電設備もそれなりに拡充するのだろうから、地元の風力やソーラー等による電力を相乗りさせる(一定程度買い上げさせる)、送電設備、変電設備等の条件を付けたらどうなのだ。
こんな背に腹は代えられないことで足元を見られることをあからさまに見せられては殿様の言う再生可能エネルギー促進などというのは絵に描いた餅に過ぎなくなる。

知事選の選挙公約で『1丁目1番地』といった雇用がほとんど実現できていないことは県民が皆知っている。
雇用が上手く創出できないならば、地方の一知事がCOP21と大げさなことを言う必要は無いが、将来を考えて、再生可能エネルギーへの漠然とした期待だけではなく、具体的な『合わせ技』で実現できるものも県として提案していくような姿勢を見せるべきではないか。ホント役人としては優秀なのだろうが、政治家としては落第である。

 

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秋田県は石炭火力を『雇用』で歓迎するのか? への4件のフィードバック

  1. 自然エネルギーの売電ですけど、電力会社は買いたくないということが本音だと思います。弟が石川県にいますが、石川県では電力会社が買い取りはしないと表明していると結構何年か前に聞いたことがあります。関電はどのくらい本気なのかが気になります。

    秋田県は赤字体質の林業公社を存続させましたので、林業公社にフル稼働してもらって間伐材を集め、石炭の代わりに燃やして発電することを、秋田県側から関電に提案するとかあればいいんですが。薪は再生可能エネルギーですから、温暖化対策でも問題ないはず。
    効率の悪さからくる損失は、天下の関電に大部分負担してもらいましょう。余力は秋田県より関電のほうがあるはず。難しい交渉だけど、それが約人の仕事では?

    秋田の役人はこんなに困っているとしか中央に働きかけない。それで補助金をもらってくることを一番の仕事と考えている。期限付きのひも付き補助金なんか、貰っても自由に使えないから県民から見て違うなという使い方になるし、打ち切られるとその事業も修了。この繰り返し。

    自分たちで中央にこういうことを行うから認可をお願いしたいという前向きな発想がないことが秋田の凋落の一番の原因だと思います。

    • argusakita より:

      >自然エネルギーの売電ですけど、電力会社は買いたくないということが本音だと思います。

      これ、自治体も同じなんですよ。
      既存の電力会社と仲良くしたほうが、あれこれ付帯施設や関連事業のスポンサーになってくれるわけで、自然エネルギー、再生エネルギー業者と組んでもそれらを期待できないのは自治体にとってもさほどメリットが無い、お付き合いで『いいこと』も無い・・・と。

      日本でエネルギー問題の本質的な議論がなかなかされないのは、国のエネルギー(安全保障も含めて)政策に地方が引き摺られる仕組みだからです。
      連邦制を取る国の真似ができない以上、日本はずーっと幕藩体制なんですね。

      憲法改正!! (^^)

  2. ばんそうこう より:

    オーストリアのギュッシング市のように、木質バイオマスによる地域暖房から始めるというあたりがスタートとしてはベターなのではないでしょうか? 政治家は割と簡単に「雇用創出」を口にしますが、それがそんなに簡単なはずはないですし、逆に言えば、県民は知事に対しそんなに目ざましい成果を期待しているわけでもないと思います。人口の減っている県で雇用なんてそんなに簡単に創出できるはずがないのですから。出て行こうとする企業に残ってもらう努力、潰れそうな企業に踏んばってもらう努力さえしてくだされば御の字というところです。確かに、「この御時世で石炭火力かよ?」という気はします。一時しのぎの雇用創出ならば、むしろ不要と言いたいくらいです。

    • argusakita より:

      Güssing(ギュッシング)市を知っている方が秋田にいるとは思いませんでした。ウィーンから100kmほど南にいったところで、3回行ったことがあります。最初は驚きの連続(主に技術的な興味)でしたが、自治体が抱える問題はまた別なのだということもわかりました。エネルギーだけでもダメなんですよ、村おこし町おこしは。雇用が生まれても定住者はほとんど増えなかったのが現実。
       
      Güssing市は、ハンガリー国境と接しているブルゲンラント州の人口が4,000人もいないくらいの産業も牧畜も何も無い市(はっきりいって寒村)だったのですが、現在はオーストリアではバイオマス利用の実験的な自治体として有名です。既に実験ではなく、エネルギーコストが低いためいろいろな企業数十社が集まってきています。
      ここや数km離れたUrbersdorf(ウアバースドルフ)という村でもソーラーと木質ボイラーによる温水利用をしたり、Strem(シュトレーム)村でも植物(ヒマワリや牧草)を使ったメタンガスを使ったり、あれこれ地域にあった再生可能エネルギーを利用して村おこしにもつなげています。
       
      Güssing市は、90年代初めに就任した市長の強いリーダーシップとウィーン工科大学のある教授が中心となってプロジェクトを進めたらしいのです。やっぱり強いリーダーシップは必要な時があるんですね。
      2000年くらいだったか、秋田にも同じような可能性があると思ってここの取り組みの話を県の数人の役人達や県内の某自治体のエラいさんに話したことがあるのですが、時期尚早だったのか全くお話になりませんでした。(^^)
      原発事故を経験した今ならわかりませんが。
      コメを食糧から飼料、秋田杉を建材からチップ材料というようなパラダイムシフトが起き、地方が国のエネルギー政策から独立した選択がある程度できるようにならないと日本でオーストリアの真似はできません。
       
      バイオマス利用は熱分解ガス化やバイオ発酵ガス化があり、熱、電力、合成ガス、メタノール、車の燃料、水素と可能性があり技術的な可能性は非常に大きいのですが、経済的に実用化が進むのは私が死んだ後だろうなと思っています(^^)。

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