ふるさと納税は果たしてWin-Winか

最近、全国各地でふるさと納税が流行りで、秋田市も御多聞に漏れず大幅に増えたそうで読売に昼行燈のコメントが載っている。
ふるさと納税32倍 秋田市今年度(2016/1/14)
いかにも産業施策の無能さと自ら販路開拓の手助けなどほとんどしない昼行燈らしいコメントだ。
このふるさと納税、一見すると納税者も自治体も謝礼品等を提供する業者も皆Win-Winのように見えるが実はほぼゼロサムで、問題も隠されていることに目を瞑っているフシがある。


ふるさと納税のおさらいをすると、ある人(Aさん)がα自治体(出身地に拘わらず)に寄付をすると住んでいるβ自治体で所得税と住民税が減額される仕組みだ。
寄付を受け取ったα自治体では寄付額よりも少ない原価のものを謝礼品としてAさんに送り、その送付代他の事務的経費を引いた残りがα自治体の寄付税収となる。
ふるさと納税したAさんは特産品等の謝礼品でお買い得、α自治体も税収up、謝礼品を用意する特産品等の生産者も売上増といいことづくめである。
しかし、β自治体は住民税が減り、国も所得税が減っている。
これらを考えれば、トータルではゼロサムであり、寄付あるいは税の最初の行き先が違うだけということに過ぎない。
Aさんの居住地であるβ自治体はAさんに対して行政サービスを行っているわけで、本来応益負担の原則であるAさんからの住民税が入ってこない、Aさんは税負担を免れているというおかしなことが起きていることになる。(応益負担の原則に反する)

本来、ふるさと納税は寄付税制の一部として位置付けられているわけで、謝礼品合戦はこの原点を揺るがしかねない。
秋田市の昼行灯は税収が増えたと認識しているらしいが、では秋田市の住民で他の自治体にふるさと納税(まあ、実態はお買い得の各地の特産品の通販感覚)した人間がどれくらいいて、本来徴収すべき住民税をどれだけ取りっぱぐれているかについて数字を出してみるべきだ。
その上で大幅に税収がupしているかどうかは非常に怪しい。実際、筆者の知人などは単なるお得な通販サイトくらいに考えていて税制の上限など気にせずにしょっちゅう『お買い物』をしている。

さらに隠れた問題として、この謝礼品をどうやって選択採用しているかである。
謝礼品に採用されれば、その法人(営利、非営利)は黙っていても受注でき、販売し、代金回収も自治体相手で安心・安全な商売ができることになる。
例えば、秋田市の謝礼品の中には、秋田市の特産品とは言えないような、肉類があるが、これを提供しているのは、株式会社秋田県食肉流通公社で株主が秋田県や県内25市町村といった半官半民のいかにも木っ端役人の天下り先然とした法人である。また、焼磯海苔は株式会社秋田県物産振興会、旧財団法人秋田県物産振興会が2007年に株式会社化した法人である。
地酒やきりたんぽなどはさすがに民間企業の名前が出ているが、それらも含めて、このふるさと納税謝礼品として採用された業者と品目は誰がどのように決めたものか不明である。入札でもしているならば透明性もあるかもしれないが、そうでなければこの安全・安心な販売ルートを提供することで『癒着』が無いかどうかは説明責任が秋田市にはあるはずだ。
一応、事業者募集のページは秋田市のHPにあるが、その中で『本市内で生産された農林水産物』『本市の加工業者・製造業者等(以下「業者」という。)が加工・製造したもの、本市で生産された農林水産物等の原材料をベースに、本市外の業者が加工・製造したもので、本市をPRしていると認められるもの』
とかなり苦しい基準を書いているものの、その採用基準や要綱については『企画調整課から連絡がいくからね』程度しか書いていない。
もし、同じような商品が応募された場合、どうするのか?
例えば、(美味さは別問題として)西日本では高清水や秋田晴などよりも新政のほうが知名度が高く人気がある。

何でもかんでも応募があれば謝礼品に採用します・・・では、単なる自治体運営の通販サイトになってしまうではないか。ふるさと納税という所得税・住民税の割引恩典がついた通販であり、これは完全に民業圧迫である。どこに歯止めがあるのか。
国によれば、ふるさと納税は自治体の『良識』に任せるとしているが、寄付税制としての位置づけならば、何らかのガイドラインを国が示すべきではないのか?

秋田市のふるさと納税の使途(6種類)は寄付する側が指定できるとされているが、27年度の寄付状況(個人名・金額まで出ている)はわかるが使途については記載が無い。26年度分は使途の記載があるが、寄付金の約4割が『市長が選ぶ取り組み』に使われていて、寄付した側が本当にそれを希望したのかどうかは不明だ。“あの”昼行灯が選ぶ取組ですよ(^^)。

個人的に高清水や秋田晴の酒を普通に通販で買えば税制上の恩典は無いが、秋田市を通じて買えば税制上の恩典があるというのは税制としておかしくはないか?
そもそも日本は寄付という行為を抑制する税制、つまり寄付するほうもされるほうも課税されるという気分的にブレーキがかかるシステムがあることは以前も書いた。
お金は一旦お上が集めてお上がばら撒くという構図を財務省がどうしても手放さない、民間同士の寄付などとんでもないというのが日本の税制である。

ふるさと納税という寄付(謝礼品や事務経費を引く前の数字だろう)がたかだが1億円集まったくらいで、『時代に合った寄付の手法が受け入れられた』との昼行燈のコメントは秋田市の住民税がどれくらい減ったかを精査してからもう一度出しなおすべきだろう。
小規模な農漁村の自治体などは、ふるさと納税を契機に地元経済活性化など副次的な効果が出始めていることもあるだろうが、中核市である秋田市で同じようなことをやって喜んでいるのは秋田市の昼行燈くらいだろう。
物販で経済活性化を狙うなら自ら販路開拓をアピールするなど、(結果的か恣意的か知らないが)特定の事業者だけを優遇するようなことはせずに、王道をめざすような市長の仕事をすべきだろう。
この御仁も殿様知事と同様にまだ1年余りの任期があるのだから、秋田市民も気の毒すぎる。

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ふるさと納税は果たしてWin-Winか への4件のフィードバック

  1. ふるさと納税は実態は寄付金なのですが、企業が寄付しても返礼はありません。なんで企業は駄目なんでしょうね。

    大館市で木杯貸出事業を行うときに、事業者からふるさと納税してもらい、その返礼で木杯を送ったらと大館市に提案してみた時がありますが、大館市の返事は他県からの寄付金としてふるさと納税を考えているので地元からのふるさと納税は考えていないというかんじのものでした。(他にも説明がありましたが。)
    後で調べたら、企業はふるさと納税の対象にないことがわかりましたが、飲食店は果たして個人か、企業か、どっちなんでしょうね。

    それと、地元にふるさと納税してはいけないというきまりも得にはなさそうに思えますが、その点もどうなんでしょうね。

    地元にふるさと納税された場合にどうなるか考えると、地元の税収は増えないということはとってもよくわかります。ふるさと納税は、市町村も商売して金を集めろという国の政策なんでしょうかね。それにしては変な制度です。

    • argusakita より:

      営利、非営利の組み合わせにもよりますが、AとBという法人の間で、
      AがBに100万円寄付する。
      BはAに100万円(モノやサービス)を発注する。
      を繰り返したらどうなりますか?

      企業のふるさと納税はいかんよ、というのは単純に癒着が考えられるからでしょうね。

      そうなんです。このふるさと納税制度は、人口何人以下とかで区切って使える自治体を絞るべきだと思います。

  2. ブルーベリー より:

    北海道 東川町 人口も10年間で5%近く増加
    http://diamond.jp/articles/-/39036

    ふるさと納税だけでは、殆ど地域活性化にはならないのは当然のことで、
    ふるさと納税というキッカケをどう活かすかがポイント。

    秋田県の場合は、天下り先の拡充に使われているのは、いつもどうりでしょうね。
    シロアリだけが肥え太る特異な地域です。 

    • argusakita より:

      シロアリというよりも天下り先が肥えてるかもしれませんね。
      現役シロアリ達は事務手続きが増えるだけで、本音ではやめてもらいたいと思っているのではないでしょうか。
      ありがたがっているのはごくごく零細な中小企業並みの収支の地方の基礎自治体だけじゃないでしょうか?

      普通の通販ではなかなか売れないものでも、減税のおまけをつけたら売れる。職権乱用のように見えて仕方がありません。
      こんな商売を一部でやってたら事業者だって腐りますよね。
      おかしな制度です。

      菅官房長官は企業版ふるさと納税を立案するそうですが、また****機構みたいな財務省や総務省管轄の天下り機関を作るのでしょうね。
      アタマの良い人たちにはついていけません。(^^)

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