AIIBに関する欧州の思惑はこのあたりか

うーむ、寒い!! 朝ウィーン(-5℃くらい)からヘルシンキに飛んできたが、バンター空港で-15℃くらい。街の中も大差ない。チルドルームから冷凍庫に来た感じだ(もちろん、どちらも入ったことはないが)。ちょっとした道路の水たまりを車が走り抜けると水の表面がサーッと凍っていく。やっぱり冬はこれくらいカチカチに寒くないといけない(^^)。

支那主導で創設されたAIIBがいよいよ始動するようで16日設立式典が行われたようだ。
mcb1601162154019-p1設立式典で、シー・ジンピンは『設立を提唱してからわずか2年で開業を迎えた。支那はさらに多くの国際的な責任を担う』と演説したが、タイミング的には最悪な状態での始動だ。上海株式は個人投資家が8割以上と言われるが売りが売りを呼び暴落を繰り返し、市場開始から15分余りで発動したサーキット・ブレーカもさらに翌日売りを呼ぶ結果になり、挙句の果てはサーキット・ブレーカそのものを廃止した。
結局、上海市場は昨年夏というよりは2014年秋頃の水準まで落ち込み、過去1年半程の株価上昇によるバブルが吹っ飛んだ格好だ。
株だけではなく各種統計指標も支那共産党の当局が発表するにも拘わらず悪化が顕著で、いよいよチャイナリスクの本格的な顕在化が言われ、多くのエコノミストがその回復の時期は見通せないと指摘している。
チャイナショック再燃は、筆者にとっては株ではなくユーロ安・円高という嬉しくない状況で影響している。

折り悪く、台湾では支那と距離を置く民進党のツァイ・インウェン(蔡英文)が圧勝し、台湾独立の現実味が出てきた。かつての支那であれば、選挙期間中も台湾に圧力を加え、海峡有事になりかねないようなこともしただろうが、今の支那共産党はどうやらそれどころではないようだ。
香港に対しては言論弾圧も激しいようだが、今後台湾に対しても同様な対処をする場合には後ろ盾のアメリカが黙っていない可能性があり、日本も東シナ海で明確な態度と行動を要求される事態が予想される。

昨年末に支那では反テロ法が成立し、外国メディアの排除が容易になったため、新疆ウイグル自治区などを巡っては今後ますます弾圧が強化され、実態が外国からはわかりにくくなる一方で、既にISは支那を『敵』として名指ししているため、支那も欧米とは違った中東以外の場所でISと対峙することになりそうだ。
また、シー・ジンピンは共産党幹部を規律違反で次々に処分し、昨年は3万4千人の党幹部(主に地方幹部や軍制服組)を処分したそうで、一昨年よりも1万人増加したそうだ。
内憂外患とは支那共産党あるいはシー・ジンピンのためにあるような言葉だ。

年明け早々に以前書いたベトナムに生産拠点を移したウィーンのある経営者(土産物やノベルティグッズ製造販売)とゆっくり話す機会があり、なかなか興味深いことを聞いた。
何故欧州各国は支那のAIIBに乗ったか? である。
それには、ギリシャ危機の構図の理解が必要である。

ギリシャ危機はギリシャの国家財政の破綻による国債暴落が一面だが、そのギリシャに金を貸し付け、国債を買っていたのは主としてドイツ、フランス、イギリスのメガバンクや保険会社である。
ギリシャはEUに対してデフォルトしないように支援を求めたが、EUは見返りに極端な緊縮財政を要求し、何度かの危機を回避した。(未だに現在進行中)
しかし、その金融支援は実際にはギリシャあるいはギリシャ国民に向けられたものではなく、そこに融資・投資したドイツ、フランス、イギリスのメガバンクや保険会社を救済したに過ぎない。ギリシャは負債のツケによって社会保障は大幅に削減され、現在はギリシャでの医療はボランティアの医師や看護師たちによるものが大きな割合となっている。こんな実態は日本では報道されているだろうか? そこに中東からの移民・難民である。たまったものではないはずだ。
ギリシャ危機の解決策としてドイツ、フランス、イギリスのメガバンクや保険会社の不良債権を棒引きにしたら、ギリシャはまともな再生に向かうはずだが、それではドイツ、フランス、イギリスの金融機関の危機に繋がる。

EUからのギリシャ支援プログラムはトロイカ即ちEC(欧州委員会)、IMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)が主導したが、このトロイカ体制を支えている実働部隊は各国(とはいっても実際はドイツ、フランス、イギリス)からの官僚や金融機関からの出向者である。
欧州議会議員は選挙で選ばれるが、この官僚や金融機関からの出向者は選挙とは無縁だ。つまり好き勝手にやり放題で、出身国や所属機関の利益を最優先にして狡猾に欧州議会の議員や各国首脳をコントロールすれば良い。
ドイツ、フランス、イギリスの金融機関が実質破綻状態だったギリシャにいわば『押し貸し』をし、破綻してもEUにロビーイングを行いトロイカ(の官僚)主導で欧州各国の拠出金を使って金融支援という名目で実質的には『押し貸し』したドイツ、フランス、イギリスの金融機関を救済するという還流型の『金融ビジネス』にギリシャが利用されたのである。(無論、滅茶苦茶な財政を隠してEUに参加したギリシャがそもそもの問題ではある)

これと同じようなスキームをEUのトロイカ(の官僚達)がAIIBに対して計画しているとすれば非常に狡猾である。
既に支那経済は減速どころか破綻に向かっていることは間違いない。AIIBが失敗しても出資している各国は金額的には大した痛みではないだろう。
むしろAIIBに今後ドイツ、フランス、イギリス等の民間の金融機関が出資したり債権引き受けをすることによって、AIIB(あるいは投融資先の破たんによる連鎖)の破綻は出資国や金融機関の破滅に連鎖することを脅迫材料に、EUのトロイカを使って出資国(とはいっても欧州主要国)と金融機関の救済に向かわせるはずだ。
結局、支那には巨額の負債だけが残って・・・。ギリシャと似たようなシナリオだ。
ギリシャのように緊縮財政を求めるのと同時に共産党の退陣を要求するかどうかはわからないが、支那が『大きすぎて潰せない』という事態にはならず、支那経済を確実に潰す方向だろう。
ただし、その場合支那共産党がどう出るかは未知数である。何しろ人民解放軍という私的軍隊を持っているため暴発、クーデターが起きる可能性もあるだろうが、地理的に離れている欧州は影響の可能性は低い。もし万が一の場合はEUのような一蓮托生のNATOがある。

サーキット・ブレーカ発動や廃止、株価の下支え、人民元の切り下げとあれこれ狼狽した動きを見せる支那が、手練手管でマーケットという『生き物』を動かしてきた欧州のプレイヤー達に勝てるかどうかは今後大いに見ものである。
欧州は先般欧州復興開発銀行(EBRD:本部ロンドン)に支那の人民銀行(中銀)を正式に加盟させ、それ以前にIMFのSDRに人民元を組み入れる(今年10月から)ことを決定している。
まさに欧州は支那を地獄の底に引き入れようとしているように筆者には見えて仕方がない。現代の『阿片』は金融である。

HSBCのレポートによれば、支那の成長率が0.5%低下すると日本の成長率も0.4%落ち込むそうだが、日本はやはりAIIBには参加しないほうが上策で、支那破たん後の連鎖ショックに備えて進出企業や関連産業のセーフティネット対策を模索するほうが遥かに重要な気がする。
破綻後の支那であっても、そこには14億人の市場とかつての租界のような上海の近代的都市インフラが残ることだけは間違いない。

写真は、設立式典で挨拶するシー・ジンピンだが、この映像を見て『クックック』と笑っているのは欧州の手練手管のプレイヤー達だろう。どことなく元気の無さそうな表情は、欧州の狙いを承知しているものの、今の支那には『この道しかない』(日本の誰かのフレーズ)と思い込んでいるのかもしれない。

lagarde2_2269120bところで、最近IMFのラガルド専務理事に対するスキャンダルが再燃している。例の2013年にHSBCから流出したラガルド・リストの件はまだ尾を引いているがラガルド辞任にはならなかった。しかし、今回はフランスの経済財政相時代の職権乱用に関するもので、前理事がへその下スキャンダルで辞任に追い込まれたようにラガルドもカネのスキャンダルで危ないようだ。
ラガルド自身は元シクロナイズドスイミングの選手でIMFの御輿のようなものだが、IMFへの影響力低下が言われているアメリカによる『あまり調子に乗るな』という警告めいたものなのだろう。

ブログランキング・にほんブログ村へ 
(blog rankingに参加。ご協力を。Click it!)

広告
カテゴリー: 社会・経済, 迷惑な隣国, 国際・政治, 海外 タグ: , , , , , , , , , , , , , , パーマリンク

AIIBに関する欧州の思惑はこのあたりか への2件のフィードバック

  1. 巡回親父 より:

    こんにちは。
    おもしろいシナリオですねぇ、というか金融というのはそういうものなんだなと納得。
    支那はメンツの国ですからAIIBを始めた以上簡単には撤退できないでしょうから、投融資の原資があまり無い状態でどうするのか興味深いです。
    阿片戦争前夜状態かぁ。

    今日発表された支那の2015年GDPが25年ぶりの低水準だそうで、ますます転がり落ちそうな気配。
    ユニクロやイオンなどがコソコソ撤退を始めたら可笑しいですね。

    • argusakita より:

      おもしろいでしょ(^^)。

      ギリシャで一儲けした独・仏・英の金融機関はAIIBを利用してEUつまりEC、ECB、IMFのトロイカに加えてEBRDを加えて四頭建て体制(コーチかな?)で支那と金融戦争でしょうね。
      鉄鋼やソーラーパネルや通信機器のダンピングに怒っているEU各国は支那(の生産・供給側)を本気で潰しにかかっていると思います。支那は黙って眠れる巨大消費(only)市場にというのが欧州の究極の願望でしょう。
      とはいうものの、ドイツみたいに密着度が高いところがどう動くかは不透明です。
      いずれにせよ、欧州と支那のチキンレースが始まるだろうと思います。

      日本はアメリカと一緒に戦争にならないように見ていればいいと思いますが、日本政府には支那シンパが多いですからねぇ・・・。何らかの助け舟を出さざるを得ないでしょうけれど、BOJやADBではなくJICAやJBICあたりに任せたほうが後始末しやすいでしょうけれど。

コメントを残す(短めにどうぞ)

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中