能代火力に見る電力会社と自治体の不透明な関係

秋田県と能代市は29日東北電力能代火力発電所3号機(60万kW、石炭・木質バイオのUSC)が着工し、全体計画が実現したとして同発電所を誘致企業に認定した。
このニュースを見て長年関わって来た人には感無量かもしれないが、『ん? なんで昔からある東北電力が誘致企業なの?』と思った人はごく普通の感覚の持ち主。
この3号機は約27年前に既に計画されていたが、政府の温室効果ガス削減方針や、電力需要の伸びが鈍化したことなどで計画が延期されていた。(まあ、バブル崩壊後の余波か)
これが、にわかに着工(1月16日)となり、県と能代市が『誘致企業』として認定。

背景はいろいろあるだろうが、この春からの電力小売りの自由化が大きいだろう。
(余談だが、ドイツやスペイン欧州各国を見ていると電力小売りの自由化は必ず後で料金値上げを引き起こすだろう)
既に、関西電力が秋田市の秋田港隣接の例の大王製紙誘致予定地だった県有地に関電の子会社関電エネルギーソリューション(Kenes)(大阪市)と丸紅が組んで出力計130万kW(原発1基並)の大型の石炭火力発電所を新設する方針を固め、これを秋田県が速攻で了承している。(おそらくこちらも『誘致企業』で調整中だろう)
関電の130万kWは、秋田県ではなく首都圏での売電を目的としているが、今回の東北電力の能代3号機も首都圏での売電が目的と思われる。何故なら秋田県や隣接県で電力需要はさほど無いことが明らかだからである。

sakigake20160129o12それにしても、この地元の新聞紙の写真の恥ずかしいまでの3人のドヤ顔はどうしたものか。さしずめ、地元の能無しマスコミは絶対突っ込まないだろうし、お構いなしにスキームがうまく行ったというドヤ顔だろうか。
誘致企業に認定するということは、固定資産税等の地方税を課税免除又は不均一課税するといった税制の優遇措置や正社員雇用に対して補助金(奨励金だったりする)を出すといった企業側のメリットがある。
逆に考えれば自治体としては課税対象から真っ当な税収が得られないというデメリットがある。
雇用への補助金などの優遇措置は予算手続きを経て支出され、監査対象であるため住民にとって見えやすいが、固定資産税等の減免の場合にはそれが歳出予算には数字として出てこないため見えにくい。
しかし、本来税収としてカウントされるべきものを誘致企業に認定することでカウントしないことになり、得られる税収を自治体自ら捨てているに等しい。

相手は電力という公共インフラを扱う企業で元々は国策会社の一つであるが、現在は株式会社である私企業である。
そこに、わざわざ『誘致企業』と認定を与え、企業立地促進法に基づいて各種の優遇措置を与えるというのは果たして自治体としてまともな姿なのか大いに疑問である。
租税の基本原則は、公平の原則にある。一部のものに対して課税しないこととすることは、明らかにこの公平の原則と矛盾する。(ましてや東北随一の規模の企業と言ってもおかしくない相手だ)
秋田県では現状(おそらく今後も)電力に関しては東北電力が寡占状態で、この春から小売り自由化が開始されても大多数の県民には選択肢も増えず、競争が無いため料金も変わらないだろう。つまり秋田県民には小売り自由化のメリットはほとんど無いだろう。
それにも拘わらず、『誘致企業』と認定を与え、得られるはずの税収を捨て、さらに雇用に応じて補助金(原資は税金のはずだ)を差し出す・・・。何じゃこれ?
エネルギー立県という殿様のプランは自治体が電力会社の僕になるということか?

また、秋田県の企業立地促進法に基づく基本計画は、集積マップもここに掲載されているが、
・電子・輸送機関連産業集積地域
・資源リサイクル・医療関連産業集積地域
・木材関連産業集積地域
・食品関連産業集積地域(北部・南部)
とされ、それぞれ指定業種も詳細に書かれている。こじつければ、発電所は木材関連産業の33電気業、35熱供給業と言えないこともないが、今回の『誘致企業』認定で、木材関連産業に資するという条件が当てはまるかどうかは不明である。
まあ、基本計画というのは役人の作った総花的幕の内弁当であるのは常ではあるが・・・。
そのうち、実態に合わせてこっそり書き換えるのだろう。

企業立地促進法では、各自治体の条例等で決められている敷地面積に対する緑地整備義務の低減(面積規制の緩和)などの優遇措置もある。
この能代火力について環境アセスメントはどうなっているかを調べてみたら、何もやっていないのではないかと思われる。
環境省総合環境政策局環境影響評価課のHPで環境アセスメントの検索ができる。”能代府”って何だ? 大阪府のコピペか?
そこで能代火力発電所を検索すると何も書かれていないばかりか、アセスメントをする予定も無さそうだ。唯一、
『石炭灰の処分に伴う環境保全上の責任を埋立事業実施者である秋田県との間で明確にしておくこと。(幹事会意見)』
と書かれている程度だ。(幹事会とは誰がメンバーなのか)

環境アセスメント(費用は企業側持ち)は実施しない、固定資産税は減免する、雇用に対する補助金を税金から支出するのが『誘致企業』認定か。(発電所の雇用とは何人だ?)
さらに、そこで発電された電力が地元で消費され格安の電気を住民が使えるわけでもなく、石炭灰処理やその他環境負荷(CO2)を高め、それらの責任の一部は自治体が負わされる可能性もある今回の今回の『誘致企業』は、一体誰が『得』なのか考える必要があるのではないか。
また、こんな『やっちゃえ誘致企業認定』がまかり通るなら、ガス会社や他の電力会社も同じようなスキームを要求するはずだが、その決定が明確な基準も明らかにせずいわゆる裁量なのでは癒着とも思われかねない不透明さを見せつけるだけである。
支那共産党が国営企業と癒着して好き勝手にやるのとどこが違うというのか・・・。

わずかな雇用でもぶら下げられるとスリスリする、背に腹は換えられないとは言え、住民ではなく企業に顔を向けての地方行政は中央政府と大差ない。秋田に限らず地方自治体の末期的な現状を変えるには憲法改正(地方と国のあり方)しか無いのだろう。

ブログランキング・にほんブログ村へ 
(blog rankingに参加。ご協力を。Click it!)

広告
カテゴリー: 県政・市政・議会, 社会・経済 タグ: , , , , , , , , パーマリンク

能代火力に見る電力会社と自治体の不透明な関係 への6件のフィードバック

  1. ブルーベリー より:

    石炭火力発電所の建設計画が全国で相次いでいる。
    http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201506/p1_0008103196.shtml

    秋田県は4箇所と、人口比で見ると異常に多いですね!
    シロアリたちが暗躍しているのでしょう。 
    間違いなく、新たな天下り先が量産されます。

  2. びっくりぽん より:

    大手電力各社が電力料金の値上げに走っていた2013年1月、県に、地元企業に東北電力にはできない安い電力を供給するため、大王製紙の跡地でガス発電をしてはどうかと提案書を送りました。
    ガスは知事が送った秋田犬の縁を活かしてロシアから天然ガスを輸入する案。

    が、回答は「メリットがない」とキッパリ言い切ってました。今や企業にとって、安い電力料金が税制措置よりも魅力的なのは明らかなのに。
    その後、シロアリたちが似たような提案すると、今度は手のひらを返して乗っかったり、あろうことか東北電力に優遇措置を与える県です。

    • argusakita より:

      5年くらい前だったかな、ロシアのLNGについては私もある役人に『極東に力のあるキーマンを紹介してあげるよ』と言ったことがありますが、結局『殿様を含めて自分たちにはメリットが無い』という様子で完全に消極的でした。
      沿海州などには何度か足を運んでいる殿様ですが、全く何も成果がありません。ハラショー(хорошо)でウォッカ飲んでお仕舞でしょう。
      (航路開設は南朝鮮の仕事でしたから)

      もっとも、2014年2月のクリミア危機以降の西側の経済制裁や原油価格の低下を見ると、結果的にはこの役人の判断はオーライだったことになります。

      >が、回答は「メリットがない」とキッパリ言い切ってました。

      自分たちには・・・という但し書き付きですよ、何事も。

      飯島の秋田火力5号機(軽油、ガスタービン)は、大震災後の緊急措置として環境アセスメント無しに着工、運転開始されました。
      緊急措置はやむを得ないとして、例え事後であっても環境アセスメントをすべきだろうと思いますが地元ではそんな声は全く無いそうです。
      民度もそうですが、エコな左巻き連中のご都合主義は見上げたものです。

  3. びっくりぽん より:

    LNG価格も石油価格に連動するはずです。
    Co2排出量をみれば、LNGが石炭よりもずっとベターなので、自分は選択肢から石炭を真っ先に外しました。
    環境省が石炭火力の計画に待ったをかけた時、殿様は、風力か何か(未確認)で削減した排出量と相殺できるから大丈夫、などとのたまわっていた。

  4. 一市民 より:

    ロシアからの輸入は原油、LNGどちらにしてもG7の経済制裁で輸入禁止になる可能性があったでしょうから安定的なエネルギーとして考えるのは無理だったのではないでしょうか。

    殿様がやろうとしているエネルギー立県は、土地を提供し、本来入るはずの税金を捨て、環境破壊を容認することでしょう。その代償がごくわずかの雇用だというならばふざけた話です。
    この殿様に任せていたら秋田は本当に原野になってしまいますね。

    • びっくりぽん より:

      東部ガスもLNGを始めたし、ロシアから輸入できなくても安定して安い発電は可能と思います。

      >この殿様に任せていたら秋田は本当に原野になってしまいますね。
      「再生可能エネルギーに」といえば予算が付けられる。でも効果の検証しない。
      2040年を待たずに、閾値を超えたら加速度が付いて「前倒し」だと思います。

コメントを残す(短めにどうぞ)

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中