イギリス流の失地恢復とスイスの独立独歩

イギリスのキャメロン(49歳)と言うのは登場した頃は欧州でもさほど目立つ存在では無かったような印象だが、ここにきて存在感を強くアピールしている。
背景は昨年の夏の総選挙で従来連立内閣だったものが保守党単独内閣になり、留任が多い第2次キャメロン内閣も若い腕利きが揃ったこと。特に財務大臣(筆頭国務大臣)ジョージ・オズボーン(44歳)といういわば新自由主義の申し子のような恐いもの知らずと二人三脚でビジネス感覚で支那とも独自に渡り合っている。


また、アメリカがオバマの8年間モンロー主義めいた内向きだったため、欧州、中東でのプレゼンスが弱まり、欧州の存在感が相対的に上がった。経済力を背景に欧州の盟主となったドイツもVWのエミッション・スキャンダルの連鎖に加えて移民・難民問題でメルケルに対する風当たりが強くなり任期2年弱を残しているもののメルケルは1回休み状態。フランスはオランドが比較的安定した政権運営だったが、TTIP絡みの農業セクタからの反発が大きくオタオタしていたところにパリのテロ。アフリカ・マリへの空爆他旧植民地へのコミットを継続しているものの来年の大統領選にサルコジがまた出てきそうなことや移民排斥の追い風に乗る急進右派のルペンなどもいてイマイチ強い大統領のイメージが確立できていない印象。

格下(?)のスペインはPODEMOSなどの影響で左派連立政権が固まらない不安定な状況で、高止まりしている失業率や経済問題にも取り組めない状態。イタリアは同様に経済問題が大きいがラテンの明るさで能天気なため問題外。
欧州でも優等生だった北欧各国も移民・難民でその高福祉社会の仕組みが脅かされ、『結局、優れたモデルは経済規模も人口も小さいからこそ実現できたのではないか』と懐疑的に見られている。
そんな状況でイギリスがかつての大英帝国とは言わないまでも存在感をアピールし、精神的なReconquista(レコンキスタ)を目指すのはある意味自然な流れかもしれない。これは対外的なものもあるだろうし、2014年9月のスコットランド独立はかろうじて阻止したものの相変わらず分離独立主義者は根強く、これを制するためには再度グレートブリテンを示す必要があるという判断もあるのだろう。

キャメロンは昨年の総選挙でEUからの離脱に関する国民投票実施を公約にし当選した。キャメロン自身はEU離脱に反対らしいが、繰り返されるアンケートでは国民の6割弱が離脱賛成派と言われ、これを脅しの材料にEUでの存在感を高めようと現在交渉中である。
EUは従来どちらかというとドイツ、フランスがツートップでイニシアチブを握り、EU官僚なども2国から多く出ているため、イギリスは各種政策でもEC(欧州委員会)の政策に追従せざるを得ず、経済でもBOE(イングランド銀行)があるにも拘わらずECB(欧州中央銀行)の後塵を拝している格好だ。もっと政策でも発言力を高め、ポンドの力を高めたいというのがイギリスの本音で、そのためにEUに対して改革案を突き付けている。

現在イギリスがEUに対して突き付けている改革案は4つ
(1)EU加盟国の各国議会にEU法制への拒否権を持つこと
(2)EU域内からの移民に対する優遇税制や福祉受給の資格を4年間制限できること
(3)ECBの決定に非ユーロ圏の銀行が拘束されないこと
(4)EU域内の障壁を減らし競争を促進すること
である。
これら全てをEUが受け入れることは絶対にありえない。何故なら特に(1)や(3)はEUの存立意義をまともに否定することになりかねないからだ。
また(2)は、移民・難民から見れば『なんだ、福祉を受けられるイギリスまで命がけで行かなくてもハンガリーや手前の国でいいや』ということになり、EUの外縁部の国々から猛反対を受けるだろう。

改革案はEUで議論が続けられるだろうが、全加盟国の承認が必要な仕組みのためこれらの改革案がイギリスの望むようにはいかないはずだ。
そこでEUのトゥスク大統領は(2)について『急激な移民の流入への緊急措置』を認める譲歩案を各国に打診したようだ。
EU、英改革案に譲歩案 移民の福祉制限一部容認へ
何ともイギリスの唯我独尊は見上げたものだ。しかし、国益を守るということはこういうことなのだろうと筆者は思う。

スイスでベーシック・インカム(BI)導入に向けての国民投票が6月5日に行われるそうだ。
大人1人に約73,000円/週か約293,000円/月
子供は1につき約17,000円/週
という数字も出ているが、スイスの物価を考えると筆者の印象では一人暮らしで月に30万ではスイスの都市部では暮らせないように思われる。
この原資は年金、雇用保険、生活保護といった社会保障費を転嫁することになるだろうが、必要な原資のうち転嫁だけでは1/4程度しか確保できないらしいため、公務員削減やその他をドラスティックに進めない限り帳尻が合わない。消費税(現在は7.6%、食料品2.4%)を大幅に上げることになるだろうが、元々物価が高いためこれが10%、20%になったらエラいことになる。(チューリッヒあたりでマクドナルドでセットを頼むと大体2,000円は超えるのが現状だ)

国民へのアンケートでは56%がBI導入に反対ということだが、原資の捻出法や消費税によってはひょっとしてフィンランドと同時期にBI導入となる可能性もある。
スイスも周辺国(5カ国)などお構いなしに唯我独尊な国であるが、ここもきちんと国益を追求しているのは間違いない(国も国民も)。

日本はどうでしょう・・・。

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イギリス流の失地恢復とスイスの独立独歩 への1件のフィードバック

  1. argusakita より:

    スイスの不動産市場がバブルに接近

    バブルという単語がどうも安易に使われてきた印象。
    スイスよ、お前もか! といった感じ。

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