相互扶助にも限度があるのではないか

最近、ガンの特効薬として有名になりつつあるニボルマブ(商品名:小野薬品オプジーボ)が話題になっている。
Wikiによれば、『悪性黒色腫治療を目的とし、後に非小細胞肺癌・腎細胞癌に適用拡大された分子標的治療薬の一つ』ということで、人間の持つ免疫システムを活性化させガンを攻撃するものだそうで、世界的な革命技術として、アメリカの科学雑誌サイエンスの2013年のブレークスルー・オブ・ザ・イヤーのトップを飾ったノーベル賞級の画期的な新薬だそうだ。開発はブリストル・マイヤーズ、小野薬品、京大が参画していたようで、その後特許権についてメルクが侵害したとして訴訟沙汰にもなっている。


ガンとはいっても、今のところは日本では一昨年から順序に悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌についてだけ承認されているようだ。
そうか、ついにガンも特効薬ができつつあるのかと思うが、話題になっているのはその薬価である。2014年の薬価で100mgで729,849円もする。継続が必要なため一年間使用すると約3,500万円となり、三割負担だとしても軽く1,000万円を超える。高額医療費請求でもっと小さな額にはなるだろうが、その分は誰かが払っているのだ。

既に秋田県でも医師国保の通達を見ると、26年度に3,800万という超高額レセプトが発生し、県の医師国保(一・二・三種組合員で1,000人強)を強烈に圧迫していることが書かれてあり、おそらくこのニボルマブだろうと推察する。
医師国保で組合員は主に医師と家族、従業員で高額所得者だろうから多少料率が上がってもいいのかもしれないが、国庫から32%(5年後には13%まで低減)支出されている。
承認、発売からまだ2年経ってないことで、肝心の『効き目』はどうなのかについては様々な意見があるらしいが、何しろ保険適用である。さらに、自治体の高額医療費請求も該当するだろうから、この新薬の想定対象者は約5万人だそうで、バンバン使われたら日本の医療保険など吹き飛んでしまうのではないかとさえ思われる。
昨年夏に話題になったC型肝炎の新薬ハーボニー配合錠1錠8万円で約3か月毎日飲むのだが、(これもドヒャーッ!だったが)、当然保険と高額医療費請求で患者負担は月に数万円(あるいはタダ同然)で済む格好になる。

画期的な新薬は、確かに医学の発展の成果だろうし、日本の医学・科学の誇らしい成果であることは確かで、世界中の金に糸目を付けない人はいくら高くても買うだろう。日本経済全体で見れば輸出あるいは特許権での企業収益は大きなもので、それに伴う税収も・・・。まさにアベノミクスの目指すものの一つのようにも見える。しかし、保険適用によって発生する費用分担は国民全部に回ってくる。

企業にとっては長い間の研究開発費の回収は責務であり、薬価を高くしないといけない事情は理解できるものの、それを保険適用するかどうかはやはり相当に議論してもらわないといけない。
命の線引きはできないだろうから、どんなに高額でも効き目のあるクスリで治してほしいという欲求は拒否はできない。
しかし、そのために巡り巡って健康な(あるいは少々の病気等を我慢している)現役世代を始めとする保険税納付側が健康を害するような働き方をしなければいけないような事態になるのでは皆保険の持つ相互扶助という理想論からどこか大きく逸脱してしまうのではないか。
自由診療、薬剤の自費負担にして裕福な連中がこっそり使ったらいいと筆者などは思ってしまう。例え自分や家族がそういった状況になり、金があったら助かるかもしれないとなっても、元々そんなクスリは無かったのだと思い込んで諦めるしか無いだろう。
そこまでして他人様の懐に迷惑かけて生きなくとも良いと思うのは筆者だけではないはずだ。

筆者の母はだいぶ前に鬼籍となったが、晩年は骨粗しょう症で苦しんだ。80歳を超えていたが家の中で転んで骨折しても治りが悪い。昭和一桁は育ったころの栄養状態が悪く、骨や血管に根本的な弱点があるような話は医者からずいぶん聞いた。しかも母乳中心で3人も育てたのだから骨がスカスカになっても仕方がない。
ある若い医者が骨粗しょう症治療で当時はまだ日本では未承認だったクスリの治験を進めてきて、72週間通院して注射をということだったが、あれこれ調べてみると短時間の意識喪失だの悪心だのの副作用が見られ、内蔵の強くない母はよくクスリで悪心を起こしていたこともあり、悪心、嘔吐の処置薬の併用も言われたが、結局医者の勧めを兄弟で丁重に断った。
そもそも72週(1年半)など生きているかどうか怪しいし、毎週通うことでつまずいたりしてまた骨折を繰り返しては元も子もない。
Ca剤等の継続投薬や折れたりヒビが入った場合には鎮痛剤、そんな対症療法で良いと本人と家族が納得して数年、結局は風邪が元の肺炎が致命傷だったが、母の望み通り自宅で息を引き取った・・・。
その経験からも強く思うが、事件・事故は別として、人の死や寿命は(できれば本人と)家族が相談して決めたらいいのである。
長寿につながるような医学の発展は少しだけ遠慮してもらって、緩和ケア的なものを充実してもらいたいものだ。もっと言えば、何度も書いてきたように安楽死、尊厳死を認めるべきだ。

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相互扶助にも限度があるのではないか への9件のフィードバック

  1. ブルーベリー より:

    ハーボニーは、1日1錠、12週間でC型肝炎治療薬を100%完治させるので、
    高いだけの価値があると思います。

    しかし、ニボルマブの肺腺がんの奏効率は19% (ドセタキセルは12%)
    副作用は69%で起きました。
    http://www.qlifepro.com/news/20151225/the-attention-to-the-use-of-anti-pd-1-antibody-nivolumab-for-non-cell-lung-cancer.html

    つまり、8割の患者には効かず、7割の患者に副作用が出るという危険なクスリ。
    しかも、服用期間が1年とは限らず、3年掛かれば1億を超えますね。

    • argusakita より:

      それで、保険適用についてはどう思われますか?

      • ブルーベリー より:

        ハーボニーは、672万円で健康を回復できるので、保険適用は問題ないかと、

        ニボルマブは、危険なうえに費用対効果が余りに低く、保険自体を壊しかねません。
        保険適用はすべきではないと考えています。
        数年もすれば、かなりマシな新薬が出てくるでしょう。

  2. コメディカル より:

    このlinkされている医師国保の通達ですが、昨年夏のものでもう少し詳しく書かれてありまして、次年度も7,000万必要とか。
    こんな超高額なレセプト(1枚)は普通の開業医ではおそらく見たことが無いはずで、せいぜい300万だとか400万くらいでしたから全く驚きだったろうと思います。
    癌なら何でも効くというわけでもなく現状は限定的ですが、承認から薬価収載(イコール保険適用)までが非常に短く、様々な意図や目的があっただろうと想像しています。

    中央でもこれにはずいぶんと反対や慎重な意見が出たようですが結局はご存知の通り。
    薬剤が高くてもそのぶん手術や入院といった医療費が減るのならばトータルでメリットという考えもありますが、果たしてそうなるのかどうかは不透明です。
    新薬は今後どんどん出てきますが、それらが薬価収載されていけば医療保険は崩壊してしまうだろうと思います。

    国民皆保険、一体誰のためのものなのか常に考えさせられます。

  3. どうも利権がらみに見えて仕方がない。
    噂では制癌剤の治験データは医者の名を借りて製薬会社が書いているという噂もありましたし。開発費を取り返すために高額にしただけでは満足せず、保険適用にまでするとは、政治家や官僚も巻き込んでいるような感じがします。効果よりも副作用の多い制癌剤でも認められるのは日本の謎だ。

    私の母は、大腸癌で、癌の周りの健康な部分までごっそり取られました。日本の癌手術としては当たり前の手術だそうで、研修医たちも見学しています。(研修医の件は手術前に言われたので許可しました。)でもそのおかげで、母の体力はガクンと無くなりました。他の国では、リンパ節は可能な限り取らないらしいんですが、日本では癌の周りのリンパ節を取らない手術はほぼ行われていないみたいで、違いを比べた外科医もいない感じで、この点も旧態依然な感じがします。
    その後制癌剤(保険適用の程々の値段のもの)を使ったんですが、最初は癌が小さくなるんですけど、副作用が出て、制癌剤を休んでいる間に再発です。その後別の制癌剤にしたんですが、効きませんでした。それはそうでしょう。医者の立場では一番良さそうな制癌剤を使うはずだから、制癌剤の種類を変えるという段階で、アウトだったんだなと、今では思います。でも、当時は僅かな可能性に縋りたくなってしまう。医者はそこをうまくついてくる。

    癌の薬は、製薬会社、関係省庁の議員や官僚、医者のためのものだと、個人的に思います。

    なんで副作用のほうが多いこんな薬が許可になるのか、まったく私には理解不能です。

  4. blogファンその1 より:

    私はこのニュースを見て、「利権」もそうかもしれませんが、なんとなくTPP絡みじゃないかと直感的に思いました。
    薬の承認を短期間にすることと薬価を高額にするのはアメリカに徐々に合わせていくための布石のような気がします。

    なかなか実際の病気に適用されないiPS細胞利用の治療なども含めて、だんだんお金が無いと最新の治療を受けられなくなるような不安があります。
    マイナンバーで所得や資産が把握できるなら、それらに合わせた段階的な保険料と窓口支払いの割合の区分も十分可能になってくるとは思いますが、選挙が終わらないと話題にもならないでしょうね。

    しかし、ため息の出る金額だなぁ。
    一度も入院も手術もしないで40歳くらいになったらボーナスでもくれよと思います(笑)。

  5. argusakita より:

    確かに金額には驚きますが、私はガンや難病に関しては仕方が無いかなとも思っています。
    コメディカルさんが書かれたように、薬剤費がかかっても他の治療や入院などの費用が低減されるならそれはそれで効果はあるだろうし、そもそも医療費全体のウェイトとしてはガンや難病はあまり問題ではなく、大きな割合を占めている高血圧症、慢性腎不全、脂質異常、糖尿病といった生活習慣病なのです。
    さらに整体(柔道)のようなコンビニエントな細かなもので医療費が積み上がっているわけで、それらが医師の裁量で治療期間や方法がまちまちなため、無駄が積み上がっています。
     
    ウチの外国人社員さんなども日本の医療費の異常な安さは時々話題になります。
    気軽に行けるような日本の医院・病院をある意味『行き難い』ものにしたほうが全体のためだろうと思います。これに反対するのが開業医などの業界団体ですが・・・。
    100円くらいの窓口支払いの理学療法(いわゆる『電気をかける』というヤツ)のためにタクシーで3,000円くらい払って来る年寄りのタクシー代も一部保険だったりする現在の日本の医療保険はゼーッタイおかしいですよ。

    ガンや難病や(症状を言えない)乳幼児の病気は相互扶助でいいと思いますが、老化やタバコ吸ったり酒飲んだ長年の結果や不摂生による生活習慣病(まあそれだけではないですが)まで含めて相互扶助が必要だろうかとしょっちゅう考えさせられます。
    基本は民間の健康保険(やや義務的)にして、ガンや難病や乳幼児の病気だけは公的な保険で高額な部分を相互扶助というのがベターだろうと思います。

  6. ブルーベリー より:

    「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)を使った後に、別の肺がん治療薬で治療したところ、
    重い副作用が8例出て、そのうち3人が死亡http://www.asahi.com/articles/ASJ7Q6H1HJ7QULBJ01C.html

    一年で約3500万円掛かるクスリを使って死者続出・・・・厚生労働省はアホですか?
    危険な人体実験に過ぎないのに、莫大な薬価を請求するのは詐欺でしょ。 

    • argusakita より:

      >厚生労働省はアホですか?

      全くそう思いますが、実は『こんなはずじゃなかった』というのが実情のようです。
      2014年9月に薬価収載されたオプジーボ(小野薬品)ですが、皮膚がん等に効果ありということで、一般に広く知れ渡る前に主に医療関係者やその家族を中心に広がったようです。
      秋田県のケースも患者は医師と聞きました。
       
      知っている者だけが得をするはずだったものが、蓋を開けたらなんと吃驚。副作用続出で、それを管理できない医療機関では患者を救えなかった。そういうことらしいです。
      保険制度の崩壊に繋がりかねないこの高額な薬品については、こっそり上手いことしようとして罰が当たったと言っている良心的な医者も多数とのことです。

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