難民発生・流入は第二段階を迎えるか

27日から夏時間に切り替わることと、為替変動(円高)が大きくなりそうな情勢に備えるためにウィーンに戻ってきたが、こちらのメディアは相変わらず難民・移民がトップだ。
18日にEUとトルコが合意したが、筆者の読解力のせいもあるだろうが、各国のメディアの記事を読んでもこの合意内容がよくわからない。
EU周辺国で国境管理が進みEUの基本理念であるヒト・モノ・カネの自由な往来が危ぶまれている今、難民・移民の無秩序な流入に有効策が打てず異例の措置とはいえ今回の合意は実効性に疑問が指摘されるばかりだ。
とても危機収束とはいきそうもない。

合意内容は、各国への密入国者をトルコに原則送還し、シリア難民については『送還者と同数』を同国内の難民キャンプなどから受け入れる。つまり、非正規のルートを遮断し、受け入れを正規ルートのみに制限して密航抑止を図る狙いなのだが、難民・移民をもはや『数』扱いしてコントロールしようとする試みは憲章で『人権』をトップに持ってきているEUとしてどうなのかという当たり前の指摘が多い(しかし、やむを得ないという事情)。
難民申請をギリシャで行わせるのだが、そのためにEUは4,000人の要員を送ることやトルコに資金援助する(この金額は怪しげな印象)ようだ。
数だけで管理していくやり方が現実にどのような方法になるかはわからないが、恐らく人道的にいかがなものかという状態がメディアに載るのは間違いない。

しかし、この合意までの協議がされている間に、ボートによるイタリアへの難民流入が報じられ、バルカンルートを封鎖された難民・移民が今度はイタリアを目指していることが明らかになって来た。
ギリシャとの国境で難民に催涙スプレーを浴びせたマケドニアを回避するとなればギリシャのアルバニア寄りからアドリア海を渡ってイタリアに入る海路が候補になる。アルバニアは経済的には豊かな国でもないし未だにトルコ同様EU加盟候補国に過ぎないためEUの決定に拘束されることはない。
アドリア海は一番狭い場所でも80kmくらいはあるためゴムボートでは難しいだろうが、これから季節が夏に向かえば多少の無理も効く。密航業者にとってはまた新たなルート開拓でほくそ笑むことになるだろう。

難民・移民のバルカン方面からの流入ルートは今回の合意である程度抑止効果があるだろうが、肝心の難民・移民発生源について新たな問題が顕在化してきた。
クルド人問題である。
以前、筆者も、
欧米は何故IS壊滅に本気にならないか
で書いたように世界最大の国を持たない”少数民族”のシリア居住クルド人の民主連合党(PYD)が北部地域のクルド勢力などが連合し支配地域での独立性を高める『連邦制』を一方的に宣言した。
このPYDはクルド人民防衛隊(YPG)という”正規軍”を持ち、女性だけの部隊もあるくらいだ。(イスラムでは女性に殺されると天国に行けないということらしく、ISはこの女性部隊を極端に恐れているそうだ)
このYPGは直接的にはEUの支援は受けていないが、イラクのクルド人組織ペシュメルガがEUやアメリカの支援を受けていて、YPGとは対立したり協力したり微妙である。
もし、オール・クルドとばかりYPGとペシュメルガにトルコ側のクルド人組織・クルディスタン労働者党(PKK)が結びつき世界中の3,000万とも言われるクルド人が例え連邦制だろうと国家樹立に動くなら中東の混迷はシリアとその反政府軍、ISだけの争いではなくますます複雑な状況になる。逆に考えればクルド勢力はその混乱を狙ってオスマン帝国以来の悲願のクルディスタン再興に賭けているとも考えられる。
そうなればトルコ、シリア、イラク、場合によってはイラン、アルメニアも巻き込んで国境線の引き直しがされるに等しいため、トルコやシリアやイラクは徹底した弾圧や防衛に出るだろう。
EUから見れば、共に武器供与・支援をしているトルコとクルドが戦うことになり、NATOが出る場合には同じ武器・兵器(主に独仏製)で戦うことになる。
まさにEUあるいはアメリカにとっては悪夢であるが、その悪夢の構図を狙うのはトルコとも対峙しているロシアだろう。(クリミアから視線を逸らすことにもなるため)
(EU、米、トルコ)vs(クルド、ロシア)に(シリアの政府軍)vs(反政府軍)の図式にイラン、サウジがどちらに付くかも単純ではなさそうで、全部を敵にしているISもいることから単純な代理戦争ということにはならないだろう。そこまで行っても世界大戦とは言わないだろうか?

このクルド人の動向は間違いなく世界中に広がる。既にドイツではそこここで小規模な対立が顕在化しているようだし、日本でも埼玉の蕨や川口にクルド系が多く住んでいることでワラビスタンと言われているが、先般のトルコの総選挙での在外投票の際のトルコ大使館前の衝突は小規模だったが、あれが拡大しシンパが増えて行けば日本でも少々厄介なことになる。
日本ではトルコは親日という幻想めいたものがまかり通っているが、何度かトルコに行っている筆者としては個人的には決してそうではないように感じる。反露であることは間違いないが国全体として親日とは言えないこともあり、安倍政権になってトルコへの原発輸出や大型建設工事のトップ営業や安全保障といった政府同士の関係や大企業の関係は良好だが、それはエルドアン大統領の強権体制のおかげ(?)であり、国内には反原発派もいるし、クルド勢力が力を増している現状ではエルドアン強権体制に日本政府が肩入れし過ぎると国内のワラビスタンからは反発も出てきそうだ。
日本ではISよりもトルコ対クルド勢力の動向を注視すべきだろうし、シリアだけではなくトルコでも難民が多数発生して、その受け入れの可否の議論が日本でもそう遠くない将来出てくるに違いないと筆者は推察している。
難民・移民発生の根源自体が拡大し第二段階になるだろうと思われる。

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