租税回避への批判のエネルギーを超複雑な税制に向けるべき

少々歩き草臥れて転寝していたものの、電話で起こされた。相方は高いびき。20代の頃のスーッというかわいいいびきが懐かしいが、これが互いの今の現実だな(^^)。
パナマ・ペーパーに関して興味深い情報が入って来たが、blogに気軽に書けるようなことではないため遠慮するが、租税回避の問題は今回は表面的には各国政治家や指導者の脱税紛いと企業による『兆円』というオーダーのため大きな話題になっているのだが、筆者にとっては無関係だし単なるマネーゲームの話題の一つに過ぎない。


日本や各国のネットなどで騒いでいるのも主に節税とは無縁な中間層と消費税以外にはさほど税金そのものと縁が無い低所得層であるのは、どこか嫉妬や怨嗟のように見えてしまい奇妙な騒ぎだなという印象。
システム工学で有名なGerald M. Weinbergの『その問題は誰にとっての問題か?』という言葉が想起される話である。

個人の脱税紛いは確かに道義的にも非難されても仕方がないし、その手法に違法性がある場合は外為法でも何でも使って厳しく取り締まったら良いとは思うが、企業の合法的節税についての非難のエネルギーは、日本の複雑な税制に向けられるべきではないかと筆者は感じる。
また、『本来納めるべき税金をきちんと納めるべき』という議論は、徴収された税金が国や自治体で適切に遣われているはずという前提がある場合に説得力を持つが、現在の日本政府や自治体のばら撒きや無駄遣いにうんざりしている場合には、むしろ『企業は節税してその分どんどん社会に還元あるいは消費してもらったほうが良い』という議論もある。
税金、税金という輩にはそんなに政府や地方自治体を信頼しているのかと聞いてみたい。

筆者は税務対策などの専門家でもないし、各国の税制に通じているわけではないが、一言で言えば日本のあまりにも複雑な税制は企業活動には決してプラスには働かない。外資などは理解を超えるだろうから勢い外資による投資は今後もあまり期待できない。
戦後、次々に新しい税金が生まれ、超々複雑とも言える日本の税制は何故そうなったか。
まず1つは、特定の支持基盤(層)を意識した政治屋達の思惑。ある税金で網をかけようとすると必ずといって良いほど『控除』というものがくっつく。扶養控除や保険の控除が代表的だが、もし保険控除が廃止されたら損保や生保といった政治への圧力団体がモノ申すだろう。
2番目は、政府や自治体(国税や地方税)で世の中の金の流れをコントロールしようという思惑がだんだん無理になってきたこと。国民・住民の要望・要求・価値観が多様化し良くも悪くも成熟してしまった結果による。
課税や減税・還付によるインセンティブをコントロールできた高度成長期と変わらない手法ではもはや通用しなくなったのだ。地方の企業誘致の優遇税制などが機能しない現実は時代遅れなのだという意識が欠如していることを端的に示している。

本来であれば税金の使途は国土や社会システムをより良いものに変えていくためのものであるはず(少なくともリベラルならば)だが、その選択の過程で一握りのエリートや受益者の思惑によって偏在化(潜在的な不公平)が起き、そこにもまた『控除』といった『知ってる奴だけ得をする』仕組みが必ず埋め込まれる。
そして、この控除や免税点を設けることで課税そのものが複雑化し、大きな網をかけているつもりが実は小さな網で個々にすくっている非効率なことを平気でやっている。せっかく公平な消費税をというと据え置き税率などが持ち出される(逆進性は給付金で補うべきなのだ)のを見ると、非合理な感情論だと単純に感じるし、それを利用したり迎合する政治屋は一体何者だと・・・。

課税事務そのものが複雑になり、さらに控除、還付といった複雑な事務をこなすことで発生するコストを差し引けば徴税金額に対して実際に税収としてカウントされるのはおそらく半分以下になったりすることも往々にしてあるのではないか?
例えば、秋田の市町村では課税ミスだの還付ミスなどが人的要因でしょっちゅう発生し、還付の場合のミスによる利息まで税金で払っている。ミスした担当者が利息分を自腹で払うならまだしも・・・。

例えば、Appleの以前の節税法は、簡単に言えば本社登記(本体ではないが)をアイルランドに置き、経理部門の主体をアメリカに置くことだった。そうすると『本社のある企業に課税する』アメリカと『経理部門のある企業に課税』するアイルランドのどちらにも法人税を払う必要がない。どちらの国でも合法である。
日本でも、例えば事業所税という地方税があるが、政令都市や人口30万人以上の都市(秋田県の場合は秋田市だけ)で課税されるものである。
しかし、事業所等の床面積の合計が1,000平方メートル以内で従業員数100人未満ならこの税金は払う必要が無い(1平方メートルあたり600円と給与総額の0.25%)。こういう免税点は不毛だ。
あるいは秋田市の境界のすぐ外(潟上や大仙など)に事業所を建てることも節税になる。これも合法である。
要するに細かく複雑な税制は、控除や還付といった事務コストによる歩留まりの悪さや節税される穴ばかりが増えるのである。
海外のタックス・ヘイブンを使うのも根本的な理屈は同じことである。

日本企業は日本の社会インフラを活用しているのだから日本に税金を払う必要があるという議論はナンセンスに近い。
何故なら、社会インフラを活用しているのは企業の大小に関わらず同様であり、よく言われる税の公平性という面ではほとんど税金を払わない零細企業は負担しなくてもよいのかという簡単な現実に回答が出せない。
また、肩を持つわけではないが、多国籍企業で節税代表企業であるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が節税しているからこそ、そのサービスを世界中でタダや廉価で使えている現実を考える必要がある。彼らはボランティアではない。

政治屋達の票を意識した思惑や一部のエリート達が思い込んでいる税金の使途についての特権意識を満足させることはできないだろうが、個人・法人の税制をよりシンプルにして、極端な話、欧州型インボイス付の消費税だけに絞れば、それらの弊害以外に、
・ザル法による穴の発生を抑止
・徴税、控除・還付といった事務コストの低減
(ついでに関与する公務員の削減)
という大きな現実的メリットがあるはずなのだ。

明日はクラクフに移動。

 

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租税回避への批判のエネルギーを超複雑な税制に向けるべき への6件のフィードバック

  1. 休日通りすがり より:

    こんにちは。
    ネットで、こんなの拾いました。秀逸です。

    働いたら罰金    →所得税
    買ったら罰金    →消費税
    持ったら罰金    →固定資産税
    住んだら罰金    →住民税
    飲んだら罰金    →酒税
    吸ったら罰金    →タバコ税
    乗ったら罰金    →自動車税・ガソリン税
    温泉入ったら罰金  →入湯税
    起業したら罰金   →登録免許税
    雇ったら罰金    →雇用保険、健康保険、労災保険
    事業所開いたら罰金 →事業所税
    儲けたら罰金    →法人税
    死んだら罰金    →相続税
    継いでも罰金    →相続税
    寄付したら罰金   →贈与税
    寄付を貰っても罰金 →贈与税
    若いと罰金     →年金
    年取るのは罰金   →介護保険料
    もっと年取ると罰金 →後期高齢者

    しかし・・・、
    働かなかったら賞金 →生活保護

    働くわけないじゃん。

    • argusakita より:

      確かに秀逸。
      税金は本来納めるもの(為政者が勝手にそういう定義にした)でしょうが、払わされるものという意識が強いですからね。
      文句が出にくい、文句の声がまとまりにくいところから課税の網をかけて広げていく。

      直間比率見直しや税と社会保障の一体改革、具体的な実現性を感じさせない不思議な呪文です。

  2. ブルーベリー より:

    合法的な方法ならば、単なる節税ですね。
    もしそれが非難されるならば、扶養者控除なども悪という事になります。

    そんなことより、銀行・農協・役所の天下りが、企業に巣食っているほうが問題です。
    働かないうえに、数年で退職を繰り返し、何度も退職金を掠め取るのです。

    そういうシロアリが、秋田県には驚くほど多い。
    秋田県がなぜ企業に嫌われるのかは、明白です。

    • argusakita より:

      秋田の場合は、企業というよりも業界団体、連絡会、協議会、協会、組合といった公なのか民なのか不明な鵺みたいな組織が受け皿じゃないでしょうか。

      • ブルーベリー より:

        秋田支店に出張してきた社員は、まず 「顧問」 の多さに驚きます。
        全国的に見ても、秋田県の天下りは異常に多い。 数倍のレベルです。

        民間企業が、自主的に天下りを飼う訳もなく、銀行・農協・役所に押し付けられています。
        秋田県でそれなりの商売をするなら、大量のシロアリを飼わないといけません。

        そのシロアリ達は全く働かず、数年で退職し、退職金を奪って、別の企業に移動します。
        そして、新しいシロアリが交代で配属されます・・・・退職金だけでも大金が動いています。

        税金だけでなく、企業の利益も吸い取られているのが実態です。

        • 元支店長 より:

          おもしろいブログを見つけたのでコメントさせていただきます。

          東京の某企業に勤務している者で、昔秋田支店にも兼務でいたことがあります。
          こまちが開通する前のそういった話は聞きましたが、もうだいぶ以前から名のある企業で秋田支店を置いているところはごく少数派でしょう。ウチもそうですが、仙台や盛岡の支店の下の営業所、出張所が秋田の出先で、正社員は通いか1人か2人といった感じではないでしょうか。名前だけの顧問なんて置いていませんでしたよ。

          私がいた頃は、川反の某ビルのあるバーが大手企業の支店長クラスのたまり場みたいになっていましたが、今はもうそんな情報交換場所もないようです。
          支店を置くような大きい企業は元々地銀や農協など相手にしませんし、県庁や市役所から天下りを受け入れるなんてちょっと考えられないなぁ。(笑)
          土建屋さんたちの各種認可工事毎の業界団体は未だにそういった傾向があるのかもしれませんが。

          天下りというよりは、県の部長、次長クラスの馬鹿息子、娘を現地採用でとってくれというのは直接、間接的に依頼がありましたね。(議会の議員経由というのもありました)
          今でいう非正規に近いのですが本社と同じ制服を着ているだけで満足のようでした。
          秋田に限らず地方はそんな感じです。

          ついでですが、秋田に赴任したころ一番驚いたのは酒でした。
          間接的な仕事の顔合わせや何かで一席といった仕事上の飲み会でも、県庁や市役所の人は飲みますねぇ。大雑把な印象ですが、東北の他県と比べても飲む量がずいぶん違うし、タダ酒飲まなきゃ損みたいな雰囲気で参りました。しかも飲んでもそんなに意味のある会合にはならない。
          単なる仕事の上の酒にも関わらず何故あんなに飲むのか不思議でした。
          飲みすぎですよ、秋田の皆さん。(笑)

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