移民受け入れはそのスピードが問題

都知事選でも移民受け入れに関して一部争点になっているようで、都知事就任後は現実的にどうなるかわからないものの、どうやら小池(反対)、増田(賛成)、鳥越(no idea)といった色分けのようだ。
最近、欧州各国では移民・難民受け入れ反対派(≒欧州懐疑派、反EU派)が声を大きくしていて、受け入れの功罪を語る(主に問題点)際の失敗例としてスウェーデンの事例が引き合いに出されることが多い印象だが、これは少々気の毒な気もする。
人口950万のスウェーデンに徐々に移民・難民を受け入れていく予定だったのだろうが、あっという間に昨年だけで難民19万人である。
日本に換算すると年間240万人である。これはどんな政策を取ろうと物理的に追いつきそうもない。

少子高齢化が加速度的に進む日本も緊急的な難民受け入れは別としても、現状の社会インフラ、福祉、生活水準を維持するためには、いずれは移民受け入れを避けて通れないはずで、既に人口の1/4が65歳以上で2050年頃には1/3がそうなる予測では、移民受け入れしか現実的には選択肢が無いはずだ。物理的な単純作業をロボットに、知的処理の必要なものは人工知能にという置き換え論もあることはあるが、日本の社会では特に後者はあまり進まないだろうと筆者は予想している。

理由は、特に公務員やその制度、仕事自体を守ろうとする力が働くからである。制度や仕組みを単純化し、効率を上げると、それに従事していた人間が不要となる。つまりその人間の雇用を維持するために効率化、単純化は簡単には行われないという現実があるからだ。
よく、『単純作業からもっとクリエイティブな仕事に・・・』などという理想論者がいるが、そんなに誰でも(特にホワイトカラーは)クリエイティブなわけではない。
身近な生活で考えても、一般のサラリーマンは別として、自営や法人経営者で、所得税(税務署)、住民税・健康保険(自治体役所)、年金(年金機構)、雇用保険(ハロワ・労働基準局)をきっちり網羅して対処できる人はなかなかいないはずで、国で歳入庁でも作って一元化したら良いものを、わざわざ複雑な制度・仕組みを維持しながら数字が変わっていくのだから、効率化や単純化とは対極の世界がある。わざわざ複雑化して新たな雇用機会を作ろうとしているように見える。(実は天下り先を作ることが目的の一つだろうが)
こんなものは人工知能以前の問題だし、無くなれば大幅な雇用が失われる。もし本格的な人手不足が始まっても、こんな複雑な部分に移民が従事するのは100年くらい先だろう。

秋田県は全体で既に1/3が65歳以上、秋田市がかろうじて1/4という状態でまさに未来先取り県である。ローカル新聞紙サイトなどを見ると、『史上最高の求人倍率が連続』などと浮かれたバカな文字が並んでいる。今後もっと上昇するだろう。
現実は、企業側の求人数は減っているかあまり変わらないにもかかわらず、求職者数がどんどん減っているのだ。分数の分子が変わらず分母が小さくなっていけば値が大きくなるのは小学生の算数だろう。
要するに秋田で職を求めてもロクな就職機会が無いため、秋田で職を求めようとする人が減ってきているのだろう。求人倍率で語ってはいけないのだ。せめて失業率で地元の経済を冷静に見て欲しい。
結局、秋田では(日本の)近い将来ではなく、労働力不足が既に現実になっているということだ。

政治屋も移民受け入れを否定する場合は、現実的にどんな選択肢があるかを示さなければならないが、まさか人口7,000万程度で帝国陸海軍を保持していた時代を目指すわけでもないだろうし、7,000万程度になった場合には地方では中核市程度以上の都市部以外は明治あるいはそれ以前のようなインフラで暮らすことになるかもしれないと言われている。

スウェーデンは、筆者の理解では早くから(少なくともシリア難民騒ぎが起きる以前から)移民に対して明確な政策、ビジョンを持っていた。2008年末にスタートした移民政策は、なかなか画期的な印象だ。その基本的な考え方は、『労働移民の受け入れは企業と市場に任せる』という大胆なものだった。
つまり、移民による労働力が必要なのは生産現場であれサービスの現場であれ、それを経営する企業であり、その企業が自身の責任において必要な数だけ移民を受け入れて良いというものである。政府は唯一、移民に対してスウェーデン国内から人材を採用した場合と比べて同等の給与と社会保障の条件を提示して実践しているかだけを監視するというものである。
高度なスキルや持つ人材か単純労働者かを区別せずに、全て企業の責任で行えというこの施策はなかなか画期的な印象があった。

移民を受け入れた場合、言葉や生活習慣・ルールの違いを日本社会に適合させるための教育や仕事に関する職業訓練等のコスト以外に、万が一発生する治安維持のコストは必ず発生するものと考えておく必要がある。それらを全てひっくるめて企業の責任でやれということになれば、企業側もコスト計算で移民よりも日本人を雇用したほうが安くて安定・安全ということになるのは明白。
現在、経団連あたり(と自民党の一部)が促進する移民受け入れ構想は、社会保障を含めてそういったコストの部分を国で持ってくれ、自分たちはとにかく安い人件費の労働力が欲しいという超ご都合主義な本音である。
語学、生活習慣といった教育機関も公的に行い、職業訓練も公的機関、万が一移民が企業を辞めて行方不明になった際に捜索・保護・退去強制といったコストも公的に賄え、これではそのネガティブな部分を税金、つまり一般の国民が担う格好になってしまう。安い労働力の旨みだけを企業のメリット、これではお話にならない。

『企業の責任で面倒を見るなら好きなだけ企業は移民を受け入れて良い』これが日本でも施策として採用されれば、実は結果的に移民受け入れにブレーキがかかるだろうと思ったため筆者としてはスウェーデン方式は画期的に思えたのである。
日本では技術研修制度といった主に地方の一次産業に従事する労働力が重宝されているが、その待遇が酷く、逃げ出して行方不明・不法滞在となっている外国人が既に5万人程いるらしい。当然、それらの事後処理は招聘した企業や団体が負担ではなく税金で行われている。
さらにご丁寧に『人権ガー』で生活保護を出す自治体さえある。即刻まとめて母国に送還すべきにもかかわらず。

それらの外国人が直ぐに治安の不安要素となるわけでもないが、捜索や保護、場合によっては退去強制処分、そういった部分は一自治体ではなく広域で対処する必要があるため政府や自治体が行えばよいが、その部分のコストは招聘した企業や団体が負担すべきである。
つまり、スウェーデン方式の『企業の責任で面倒を見るなら好きなだけ企業は移民を受け入れて良い』に加えて、行方不明・不法滞在といった場合に発生するコストを予め保険料として企業から国や自治体が徴収しておけば良い。
もし、筆者が大企業べったりの自民党ではない政治屋ならそれを提案する。
移民推進の経団連・大企業に対して『好きなだけ入れていいですよ、ただし面倒を見るコストは自前でどうぞ。また万が一の保険料は徴収します』という政策が有効なはずである。
もっと厳しくするなら、正当な理由なく招聘した企業や団体から逃げた場合は、その企業・団体にペナルティを課したら良いのだ。

この移民受け入れを企業と市場に委ねるスウェーデン方式が何故失敗したか。
それは、移民に加えて押し寄せるシリア難民などの数が多過ぎ、またその増加スピードが完全に予測を上回ったことのようだ。企業の需要に合わせた緩やかな移民受け入れを想定した政策を難民にも適用しようとしたことが大失敗につながった。
人口950万のスウェーデンに年間19万人の難民が押し寄せ、それを吸い上げる雇用がそもそもあり得ないし、難民がいきなり就業できる条件(言葉、仕事のスキル)は企業側にもあり得ない。結局、企業と労働市場に任せる方式は押し寄せる難民のスピードによって破たんした。
日本もスウェーデン方式+αが現実的だろうが、移民受け入れはスピードのコントロールが肝心という教訓は学ぶべきだ。

ところで、秋田で移民を入れようと決断した場合、南の人間には気候は厳しいだろうし、非英語圏(当然ながら)というハードルがある。
つまり、秋田よりも北の気候で非英語圏からとなると・・・極東ロシアあるいはウラル以東のロシア・シベリア、中央アジア北部あたりからの移民なら十分現実味があるように思える。
一応生活習慣的には欧州ではあるが、ロシアはそれこそ人種も文化も坩堝状態でユダヤに対する差別・偏見以外はほとんどない印象だ。オーソドックスの教会やモスクくらいは必要だろうが、イスラム一色のようなことは全く心配が無い。
食べ物も水も気候も間違いなく彼らにとって許容範囲内だ。

現在、プーチンの肝いりで極東ロシア開発のため、極東ロシアに移住した人に約1ヘクタールの土地を無償で与える施策を政府が始めている。農業や牧畜・酪農をやっても、他の産業でも構わないらしい。
さすがに秋田は極東ロシアよりはインフラが整っているし、土地価格は何十年も下落しているのだから、自治体が買い上げて移住者を募ったらどうだろう。
中途半端にやると、怪しげなロシア人が先行して入ってくるため新潟のようになってしまうが、計画的にシステマティックに移民受け入れ・移住を進めれば秋田は活性化し再生するだろう。
また、コーカサスだけではなく東スラブやヤクート(ほとんど見かけは日本人)が少し入ってくれば絶滅するかもしれない『秋田美人』も未来永劫存続していきそうな気がするではないか。

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移民受け入れはそのスピードが問題 への7件のフィードバック

  1. >オーソドックスの教会
    一応大館市にはあります。木造ビザンチン様式という珍しい様式なので、県指定文化祭となっている、曲田の教会です。木造なので節が抜けて壁に穴が開いている所もあるようですけど。それにおそらく想像よりも小さい教会だと思います。
    http://wp-honest.com/magata/index.html

    プーチンに秋田犬を贈った縁もありますし、やる気になって交渉する人物がいれば可能性のない話ではなさそう。

    新潟のロシア村、ググってみたら、田沢湖のスイス村を連想してしまいました。スイス村は移民は関係ないけど、荒廃しているところで。

    • argusakita より:

      北鹿ハリストス正教会聖堂は、存在は知っていましたが行ったことはありません。
      画像探してみたら内部が奇麗ですね。
      こんなblog(休止中?)がありました。
      http://chihoko777.exblog.jp/11581636/

      ここをロシア人の知人に見せて、秋田・大館にツアー客仕立ててもらおうかな。
      もうね、個人でも知り合いでも外国人呼ぶしかないでしょ、秋田の観光は。
      日本の短期ビザ申請やその他、行政で多少面倒見てくれるかな(^^)。
      ロシア人にウケるのはキノコが美味い時期かも。
      あとは藤里の羊(サフォークのホゲット)なんかはきっと気に入るでしょう。

      新潟は、おそらく今の日本で最もロシアの食材が手に入る街で、ロシア人によく知られている街です。
      ただ、中古車や部品・タイヤの仲介業者や関連の商売人が先行して入ったせいか、ガラの良くないロシア人と体で稼ぐ女性が多くなってしまったようです。

      • 曲田の教会は、車道からはまったく見えませんからね。おそらく近くまで来ても、見つけられずに素通りする可能性が大。それに文化財のため普段は鍵がかかってます。今月は7月17日は礼拝の後に自由に見学できるみたいですが、その他の日は前もって予約が必要なようです。

        ブログ主が見つけたブログは、最近は柴犬ブログになってます。秋田犬でないけど結構一部で有名な犬みたいですよ。柴犬も日本犬なんですね。なかなかのスタイルでした。
        話題がずれたのでこの辺で終わります。

  2. Yoko Fujita より:

    30代女性です。僭越ながら、
    ・65歳以上は労働しないから移民が必要、
    ・労働とはgdpを生み出すもの、
    と仮定させていただいて、その点に絞ってコメントしてもよろしいでしょうか。

    当然のことながら若い世代は年配の方の話は価値があると思っていて、世代柄、お金も払って人の話を聞くことを受け入れています。ガードマンや自転車修理をしている人になぜ?という目を向けています。一方で、情報という目に見えないものを売るのは気持ちが悪い、そもそも同輩や若い者からお金をもらってはいけないという信念がおありにも見えます。
    私は、女性が社会に出れば、決闘にロマンを感じない以上、こちらがgdpになると思います。

    我々は、数は少ない一方で、幸か不幸かアメリカナイズドされて、組織では働けないけど一人が何万人の生活を豊かにしろという立場を刷り込まれています。

    我々はいま、他人にお金を使わせようという方向で知恵をしぼるから仕事がつまらないだけで、我々の世代からの正しい働きかけは、今の時点ではまだ足りないと思います。

    そういう私個人は、選挙演説だけを見て、移民反対なら誰にでも票を入れてしまいそうで、いつも恥ずかしい気持ちです。

    • argusakita より:

      私の大雑把な記憶が正しければ、ホワイトカラー:ブルーカラー:その他(一次産業等)の人口比は55:42:3ぐらいです。
      この45(42+3)のあたりに移民を期待するわけですね。(ドイツなどは完全にそうでした)

      ざっくり言えば、65歳以上になると”労働しない”ではなく、上の42のあたりのは労働者としては肉体的に無理ということでしょう。この部分に移民を入れる。しかし、経済的には65歳以上の多くの下流老人と同様であるものの食糧や消費財等の消費は間違いなく多いだろう、だから移民が必要、結果的にGDPも膨らむというロジックだろうと推察します。
      それと労働がGDPを生むのではなく、労働の対価が発生(給与等)するとGDPを生むのです。

      >そういう私個人は、選挙演説だけを見て、移民反対なら誰にでも票を入れてしまいそう

      私も本音ではできるだけ移民は避けるべきだと思います。自分が半分以上海外で仕事・生活しているため、いろいろな理由で余計にそう思います。

      しかし、日本の社会を維持、特に中央のお荷物的に扱われる地方の社会を維持するためには上記の65歳以上の代替・補完として移民以外に選択肢が無いというのも現実と思います。
      だから、何度も繰り返し書いていますが、地方の維持あるいは創生には、国と地方の関係を劇的に変える必要があって、憲法の第八章 地方自治の92条~95条を変えなくてはダメで、自民党草案でも全然ダメだと思っています。

      ※65歳という数字にはあまり意味はありません。

      >我々は、数は少ない一方で、幸か不幸かアメリカナイズドされて、組織では働けないけど一人が何万人の生活を豊かにしろという立場を刷り込まれています。

      >我々はいま、他人にお金を使わせようという方向で知恵をしぼるから仕事がつまらないだけで、我々の世代からの正しい働きかけは、今の時点ではまだ足りないと思います。

      の部分は興味深いですが、少々具体的にはどういうことでしょうか?

  3. noga より:

    民主主義は最低であるといわれるが、これを凌駕する政治制度はまだ見つかっていない。
    だから、新しい世の中を作るには、民の力の利用が必要である。
    民の力を集めるためには、民の理解が必要である。
    民の理解には、会話のできることが必要である。
    会話には言葉の習得が必要である。
    言葉の習得には、容易な発音の表記法が必要である。日本語を覚えようとしている大勢の外国人が ‘漢字かな表記法’ を前にして挫折している。
    日本語の表記には、ローマ字が良い。
    さすれば、日本人の考えは、新しい世界に反映される。

    • argusakita より:

      私はローマ字は極力避けるべきだと思います。何故ならあれが日本人を共通作業言語である英語から遠ざけているからです。
      通訳を泣かせるようなブロークンを平気で話す麻生財務相の様な外向きにはツラの皮の厚い日本人を増やす方が重要だと思います。

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