ロシアの輸出戦略 ~豚とカニ~

モスクワの某レストランで会食。顧客が呼んだ知人達とはほとんど初めての連中ばかりで、エネルギー関連の成金ではなく、主に食品関連の輸出入や商品開発を手掛けている中堅といった層だろうか、なかなか興味深い話が次々に出て、筆者もあと10歳若かったらもう少し別の分野の事業にでも取り組みたくなるような気分だった。


moscow20160727それにしてもメンバーそれぞれが順繰りに他愛のない事柄を口にして、全員で小さめのショットグラス(本来このショットとは1オンスまたは30ccの酒の量)のウォッカで乾杯するロシア流作法には閉口する。これがあるため、筆者はロシア人の年配者と会食するのは極力避けている。
写真の真ん中の透明な瓶がルースキー・スタンダルト(ロシアンスタンダード、日本でも2,000円ぐらいかな)で40度。これを10人いたら10回乾杯。適当な言い訳して遠慮しないと、いくら酒に強い人でも5杯以上は危険水域だろうか。ウォッカの酔いは突然襲って来る。

昔、ウクライナ・オデッサのアルカディアの野外パーティでもっと強いウォッカ数杯で意識を失ったことがあるため、筆者は4杯でギブアップしておいた。後は最近は滅多に飲む機会が無いジョニ赤で。(ジョニ赤ですよ、ジョニ赤、見なくなりました)
朝から朝食時にクイッとウォッカを飲むロシア人などは珍しくないが、乾杯のウォッカ以外に食事をしながらワイン、スコッチと何でも飲む。とにかく連中とは内臓の作りあるいは消化機能が別なのだろうとつくづく思う。筆者は酒はどちらかといえば強いほうだと思っているが、ロシアに行くとウォッカに関しては女子供並だろうか。
ということで、今朝はスッキリ目覚めた。ウォッカのようなスピリッツは悪酔いしないし、目覚めがいい。筆者の歳でも二日酔いはあまり感じないためスピリッツは悪くないが、やはり酒は色や香りが大事(^^)。ウォッカなどは数杯飲むと鼻の周りが病院の伝統的な消毒の臭いに包まれる感じでどうもいけない。その臭いを感じた時が大体自分の限界酒量と決めている。

少し前は経済制裁で輸入食糧(特に生鮮食品)の不足などをホテルの朝食で少々感じたが、今はそうでもないし、それなりの層の連中が出入りする場所には何でもありそうだ。クリミア問題での西側の経済制裁などは、少なくとも食糧に関してはもはやあまり効果が無さそうだ。
基本的にロシアは小麦以外は食糧輸入国だが、経済制裁となると国民が自分たちでダーチャで野菜を作ったりして耐え忍ぶことに慣れている。むしろ先に音を上げるのがロシアに食料を輸出しているポーランド、イタリア、フランスあたりだからいつもフフッと笑うのはロシアだ。
いさとなれば広大な国土と歴史的にも証明されているロシア人の精神的タフさアウタルキーになれるロシアというのは国家としても国民自体も素朴な強さを持っていると感じる。
原油・天然ガス価格の下落で大打撃を受け、あちこちで市街地開発がストップしたりしてはいるものの、それらの影響は一部の富裕層で、しかもその富裕層の大部分はイギリスやドイツといった他の国で優雅に生活しているため影響は限定的である。

その食糧輸入国のイメージの強いロシアは従来外貨獲得の大部分がエネルギーだった。しかし、今回の集まりでも感じたことだが食糧・農産物の輸出を官民一体となって強力に進めているようだ。これは農産品輸出大国であるフランスやイタリアやポーランドには脅威である。
日本にもっと輸出したいという会食の参加者もいて、具体的に何をと聞いたところ、豚肉とカニ(タラバガニ)だそうだ。
彼によれば、日本には何度も行っていて日本人の求めるクオリティについて勉強しているとのことで、野菜や果物はロシアの品質水準では日本国内のものには到底かなわない、牛肉も神戸牛のようなクオリティはまだロシアでは無理、鶏肉は既にタイあたりには敵わない。魚はサーモン(寿司用のニジマス)やニシンやサバといった魚は北欧や南米に追いつくのは時間がかかる。そこで、彼らが考えているのが豚肉とタラバガニなのだそうだ。

養豚は確かに牛などよりも効率が良く(多産のため)、極東の広大な土地が最近無償で移住者に与えられるプーチン肝いりの施策が始まったこともあり、放し飼いで生育すれば高品質の豚肉が期待できる。さらに彼によればドングリや栗を植えて、それをエサに使いスペインのイベリコ豚よりも美味い豚肉を作るというのが目標だそうだ。広大な国土を持つロシアもようやくそんなことに気付いたかと感心して聞いていた。(^^)
低価格で高品質な豚肉、これはなかなか日本にとってはTPP以上に脅威となるかもしれない。
ついでに、羊肉についてどう思うか聞かれたが、日本では歴史的に不味い綿羊を食用にした時期があって、羊肉の臭いに人気がないのと調理法も関心が薄い、もっと食用の羊の種類やマトン、ラム、ホゲットといった肉の種類や調理法を紹介していけば潜在的な需要はあると思うと筆者の個人的な印象を話したところ、熱心に聞いて名刺にメモをしていた。(秋田にも美味いサフォークのホゲットが藤里町にあるが流通量が極めて少なく残念だ)

Stalin-Crabタラバガニは、実は欧州では少々問題になっている。
主に日本向けにタラバガニが外貨獲得の戦略産品であることはロシアでは早くから認識されていて、オホーツク海やアラスカで日本やカナダと獲り合いをしてきたのは周知のことだが、ロシアの科学アカデミーはこれを面倒な国家間の交渉をせずに自由に捕獲し輸出できるように1960年代からタラバガニをオホーツク海からスカンディナヴィア半島のムルマンスク沖のバレンツ海にシベリア鉄道で移送し放流してきた。
天敵がいないことや水温等環境があったのか、次第に水揚げは増えたものの、増えすぎたタラバガニが隣のノルウェーの沿岸のフィヨルドまで広がり、今や環境・生態系破壊の外来種認定となっている。(カニとはいえ、タラバガニはヤドカリの仲間であることも悪印象か)
もともとタラバガニのような大きなカニはノルウェーあたりでは食べる習慣が無く(エビもあまり食べない)、放っておくとバレンツ海全体の生態系破壊に繋がるということで、駆除の動きもあるくらいだ。
しかし、このカニを日本に売ると良い収入になると気付いた漁業関係者達もいて、エコな連中とのせめぎ合いが問題化しているのである。
どうやらノルウェーではどんどん増殖して広がるタラバガニは悪者扱いで、一部ではスターリン・クラブ(あのスターリンにちなむ)と渾名がついているらしい。
バレンツ海産のタラバガニとオホーツク産のものの味が違うのかどうか知らないが、豚とカニの話題を出してきた某君にはぜひ日本に”安く”輸出してくれと笑っておいた。

それにしても、考えてみると日本人は他の国で不要なもの、捨てているものを輸入して美味しく食べているのが不思議と言えば不思議。
かつてはイクラもカナダでは廃棄処分だった。これが加工技術を日本から持って行って筋子などを作って日本に輸出している。
犬の餌だったドッグ・サーモンも今や日本で鮭と言えば大半がこれ(シロザケ、秋鮭、トキザケ、鮭児)である。上手い名詞を発明した人が素晴らしい。
お馴染みの牛丼屋の肉はほとんどショート・プレートという部位だが、あれはアメリカでもオーストラリアでもかつては食べようの無い廃棄処分対象だった。それが今や日本の商社を通じて扱われる重要な輸出(入)品になっている。
タコもアフリカのモロッコ、モーリタニアあたりの漁獲で7割か8割を占めているはずだが、現地では漁師もあまり食べないらしい。
今度は環境・生態系破壊の悪者タラバガニである。
日本人はバレンツ海のノルウェー側に『美味しく』駆除に来てはどうだろう。(ロシア側だと高くつくだろうから)

日本の食文化・食材が特殊なのか知らないが、世界が日本食やその材料を使うようになったのは、日本食が美味いことに気付いたのか、あるいは『あの安全・安心・長寿・健康な』日本人が食べているものを真似することは良いこと・・・と気付いたのかどちらかだろう。
日本は外から見たら、やはりどこか特殊で不思議な国なのだろうが、このままだと、肝心の日本人が食べるものが無くなるか価格高騰につながるのではないか?


melody今日の一曲(今日は2曲にするか)
小さな恋のメロディという日本では爆発的ヒットだった映画はイギリスでもアメリカでも全くヒットしなかった。(筆者は30歳近くなってイギリスに留学した時にそれを知った)
中学・高校時代はこの映画の主演のトレーシー・ハイドが大人気だったが、その後出てきたフィービー・ケイツやブルック・シールズのようにはならず、女優も引退している。
さあ、50歳代のオジサン、オバサンはたまには甘酸っぱい中学・高校時代を思い出してください。

Tracy Hyde Tracy Hyde2

1970/5
CSN&Y “Teach Your Children”(小さな恋のメロディのラストシーンの曲)

1971/6
Bee Gees “Melody fair”(小さな恋のメロディ、メインテーマ)


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