農薬やGMO/GMCに関心を持つべき

ドイツ・バイエル社の米・モンサント社の買収は少々驚いたが、日本のメディアではあまり話題になっていないようだ。最近は大きなニュースが続いているからか?
この買収が世界の農薬・種子業界でどれほどの圧倒的な規模なのかというと、年間売上高で単純比較した場合、バイエル116億ドル、モンサント150億ドル合計266億ドルになるが、日本の同業界のトップ日産化学工業で1286億円、約12億ドル(2位の日本曹達で8億ドル程度)であり、20倍以上の規模である。
今年初めのケムチャイナ(支那化工集団)によるスイス・シンジェンタの買収も驚きだったが、これで世界の農薬・種子業界は、
・バイエル+モンサント
・デュポン+ダウ・ケミカル
・ケムチャイナ+シンジェンタ
欧米支の3極時代になった。いずれも100億ドル以上の巨大なグループである。

バイエルによるモンサントの買収はしばらく前からのアプローチだったが、一時は諦めたといった情報も流れたものの、結局は買収で決着した。独禁法の審査もあるためすんなり全体が買収・合併とはいかない可能性もあるが、バイエルの農薬、モンサントのバイオ・種子技術の合併は大きい。また、モンサントはビッグデータを用いたITを駆使した農家に対するコンサル分野でも進んでいて(こういった分野は日本ではほとんど無い)確かに両者の買収は相互に補完的な意味も大きく、相乗効果は相当に大きいと予想されている。

ただ、筆者が邪推するにモンサントは、もしかしたらその『モンサント』という社名をこれ以上目立たなくしたいという事情もあったのではないかと考えている。
round_up_ready_logoモンサントと言えばその代名詞のような農薬(除草剤)で1970年から世界中で販売しているラウンドアップ(有効成分名はグリホサートイソプロピルアミン塩)が超有名である。
現在日本では、日本モンサントから日産化学工業へ商標・生産・販売権が譲渡されていて、希釈されたものは家庭用などもある。
このラウンドアップ自体は適正な使用条件では人体には無害とされ、半世紀近い使用実績で深刻な人体への影響や環境問題が大きな社会問題になることはなかった(ように見える)。
ただし2015年までである。

ラウンドアップレディ(Roundup Ready)、即ちラウンドアップに耐性のある遺伝子操作作物(GMO)が増えてきた最近、あちこちで問題が出始めた。これはラウンドアップ自体の問題ではなくGMO自体に何かがあるのではないかという疑念もある。欧州では早くからGMO/GMCについての議論は盛んで筆者も3年前に、
秋田県で早く取り組んで欲しいこと(GMO、GMC対策)
と落書きしていた。ちなみに日本では、ラウンドアップレディとしては、ダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、テンサイ、アルファルファ、ジャガイモが認可されている。

このラウンドアップレディのダイズが特に注目されたのは、2014年フランスのジャーナリストが作ったドキュメンタリーである。昨年日本のNHKでも放送されたようで、ここにupされているのでリンクを貼っておく。尚、そのBSでの放送に対して日産化学工業はクレームを示している。
話はデンマークの養豚業者で子豚の下痢が続くようになり、アルゼンチンからの輸入飼料をやめた途端に下痢が無くなったことから始まる。
アルゼンチンに飛んだ記者が、そこで大規模に栽培されているラウンドアップレディのダイズ(デュポンやその他の企業によるGMO)とその農家を取材し、周囲の水環境のラウンドアップ(農家はそれを毒と呼ぶ)による汚染や多数の先天性異常の子供たちの実態などを取材していく。
アルゼンチン政府も15年以上になるGMO使用と人や家畜の先天性異常は認めたものの、因果関係は特定せず、また現状は農業の発展のためにはやむを得ないといった立場。しかし、農薬の適正な散布方法や使用法に問題があるかもしれないといったGMO企業側と同様の見解。
農家でもラウンドアップ以外にアトラジン(欧州では使用禁止の除草剤、研究ではカエルのメスをオスに変えることもあったという)と2,4D(枯葉剤の成分でアルゼンチンではダウケミカル社が販売)が併用されていた事実もあった。これはラウンドアップ耐性の雑草が増えたことによる対処で、除草剤に耐性がある雑草が出てくると使用する農薬の種類を増やしたり量を増やさざるを得ないということだ。
これらの現状についての質問に対してモンサントは回答を拒否・・・まあ、あとは映像を視て欲しい。

モンサントのラウンドアップは2015年WHOで発がん性2A(おそらく発がん性があるというレベル)に分類された。しかし、これに異を唱えるパトリック・ムーア(元グリーンピース)などはGMO推進派で、GMOは発展途上国から飢餓を無くすといった主張をしている。ラウンドアップも無害という主張だ。
しかし、ラウンドアップ自体が仮に無害だとしても、GMOの改良(悪?)や耐性を持つ雑草の出現でさらに別の除草剤との組み合わせによって発生する毒性とその人体への影響は研究は不十分のようだ。
ラウンドアップ=モンサントの図式が世界的に有名になり、その負の側面がクローズアップされつつある今、モンサントはもしかしたらその名前があまり前面に出ないことを選び、バイエルとの合併を判断した可能性も無いとは言えないだろう。

日本では、TPP交渉においてもGMO/GMCについての言及がほとんどなく、ラウンドアップレディが認可されているだけである。
長期的な人体や環境への影響などを欧米支の3極の巨大グループが調査研究するとは思えず、現状では、日本の農業がアルゼンチンのようにならないことを願うしかなさそうだ。
筆者を含めて、先のあまり長くない者は農薬やGMO/GMCの未知のリスクが多少あっても食べることはさほど問題ではないとは思うが、アルゼンチンの子供たちのような事態を考えると、子供や妊婦あるいはその予備軍には可能な限りリスクの少ない食品が必要であると強く思う。

PS. 『モンサントの不自然な食べ物』


herb-alpert-rise今日の一曲
1979
Herb Alpert “Rise”
これも非常に流行った1曲か。Herb Alpertは筆者達の世代ではTijuana Brass時代のBittersweet Sambaが有名でオールナイトニッポンのオープニング曲だが、先日筆者の娘に聴かせたら『金麦のCMの曲だ!』と言われ大いに世代の差を感じさせてくれた。


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農薬やGMO/GMCに関心を持つべき への1件のフィードバック

  1. ブルーベリー より:

    アルゼンチンの被害は酷いですね。

    除草剤に抵抗力を持った雑草が出てきて、幅広い種類の化学薬品が必要になり、
    「昔ながらの種子」 に戻る農家も多いそうです。
    http://jp.wsj.com/articles/SB12260954658240904189704582314681428636126

    実際、モンサントは売上が減り続け、赤字体質です。
    合併で競争相手を減らし、効率化したいんでしょうね。

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