世界の口琴、日本の口琴

その後、仕事で欧州域内あちこちに出張で行くたびに楽器屋や博物館などを見て歩き、オランダで購入したものの、未だに満足な音が出せないでいる。下手くそが言うべきではないのだろうが、口琴はある程度口(の内部)や頭自体が大きくないと良く響く音が出ないのではないかと密かに思っている。(^^)
実は、骨伝導で伝わる自分で感じる音と他者が空気の振動を通して聞く音はだいぶ違うように思える。

jews-harp口琴は金属製と竹・木製の系統があるようで、大雑把には欧州~中央アジア~極東(要するにユーラシア全域)では金属製、日本~東南アジア~メラネシア(オーストラリア、ミクロネシア、ポリネシアには無いそうだ)は竹・木製が一般的である。(写真はアイヌ文化振興・研究推進機構の直川氏の論文から拝借)

世界的な分布として口琴が無いのはアフリカ、中東、南北アメリカのようで、元々は中央アジア(モンゴル?)を発祥の地として、東(極東)、西(欧州)、南(インド、東南アジア、さらにメラネシア)に伝播していったようだが、単純に金属製と竹・木製と分けられるものでもなく、外側の枠が木製で振動部分は金属製といったハイブリッドなものもあるようだ。
樺太や沿海州や支那吉林省あたりでも口琴は存在し、やはり金属製が中心のようである。
構造としては、金属製の場合は振動板の片端に突起がありそれを弾いて音を出すが、竹・木製の場合は紐が付いていてそれを引っ張ることで振動させるのが一般的である。歯に密着させるかどうかは材質や構造で違う。

mukkur日本で口琴といえば、筆者同様アイヌの竹製のムックリしか知らない人が大多数だと思われるがアイヌには金属製のカニムックルもあり、実はそれが津軽やいわきや江戸にもあったのだ。(写真はアイヌと自然デジタル図鑑のページより拝借)
4165_kanimukkurカニムックルは江戸時代に津軽に伝わり、鍛冶師が作り方を覚え『びやぼん』という名で本州でも流行したようで、埼玉県の大宮の高鼻氷川神社の発掘(1989~)で写真のような金属製の『びやぼん』が出土している。(写真はさいたま市のHPより拝借)

hikawa-mukkur

また、近世中期には(福島県の)磐城の岩城八幡神社の夏祭りで売られていたという享保期以前の記録があるそうだ。

江戸でも文政7~8年(1824~1825)には市中で『ビヤボン』『琵琶笛(びやぼん、びわぼん)』という鉄製の口琴が大流行したそうだが、1825年2月に幕府が禁止令を出したようだ。どうやら、あの得も言われぬ音や響きが仲間内の秘密の合図のようで、幕府としては何か善からぬものを感じて禁止したらしいが事実は定かではない。
滝沢馬琴の書物(耽奇漫録)にも口琴の記録があるそうだが、文政年間であれば、筆者の生家の過去帳にも祖先の名がある時代のため、一つくらい子孫に残しておいてくれても良さそうなものだが残念ながら残っていない。

東京のどこかの博物館には残っているのかもしれないが、夏祭りで売られているようなものがほとんど残っていないのには何か理由があるのかもしれない。江戸や明治時代に既に何かの理由で回収されたか、あるいは昭和の戦時中の金属類の強制拠出で真っ先に持って行かれたとか・・・。

ちなみに、秋田にも馴染みのある江戸時代の紀行家菅江真澄もムックルについての見聞と図を『えぞのてぶり』(1791年)に記しているらしく、そのなかでは演奏しながら歌を歌ったと書かれているらしい。(いつか書物の現物を見てみたいものだ)

ezomangaさらに1859年の松浦武四郎の『蝦夷漫画』や『松浦武四郎野帖』にもそれぞれ木製、金属製のムックリが出てくるようである。(写真はアイヌと自然デジタル図鑑のページより)
その後、江戸以南でのムックリの現物や記述などは無いそうで、これもどこかミステリアスな話である。
日本でも東日本に広く分布している口琴が、実は欧州からロシア、中央アジア、極東、東南アジア、メラネシア、インドと広く分布していることは改めて驚くことだが、民族の移動に合わせて音楽や楽器も一緒に動いたことに壮大な文化の連続性や地域に合わせたマイナーチェンジにも人々の工夫や知恵が感じられる。
口琴はそんな楽器である。
蛇足だが、比較的現代の音楽等で口琴が使われているものは下記が有名である。

映画『夕日のガンマン』
クレイジーキャッツ『ハイそれまでョ』
アニメ『ど根性ガエル』


alone-together今日の一曲
1972
Jim Hall & Ron Carter “Autumn Leaves”(Album:Alone Together)
Autumn Leavesはそれこそ星の数ほどの演奏があるが、ギターとベースのシンプルなライブ・セッションもなかなか。
アルバム全体が素晴らしいが、Autumn Leavesは37:28あたりから。落ち着く音色である。


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