TVのネット同時配信解禁の影響

ミュンヘン経由でウィーンに戻る機中、ネットで興味深い記事や情報を見つけた。やけに朝日新聞が反応しているのも印象的だった。
総務省が2019年からテレビ番組のインターネット同時配信を全面解禁する方針を決めたようだ。放送法の改正を行い、NHKのネット同時配信の制限を無くして、これによって民放にも参入も促すようだ。
6,000億円を超えるという受信料を基に公共放送とは思えない偏向報道等、好き勝手な放送を行うNHKだが、ネット同時配信に踏み切った場合の予想される影響は広範で大きなものとなる。

cool-japanそもそも総務省がこのネット同時配信に積極的なのは、現在フランスのカンヌで17日から行われているMIPCOM(ミプコム)2016(日本が初めて主賓国に選出)でわかるように政府としては『Cool Japan』の一環としてTVドラマやアニメといったコンテンツの輸出を拡大したい意図があり、現在の日本のようにTVを見ない人が増えると制作側も意欲減退・CM広告料減収でジリ貧になってしまうと判断したようだ。

今年のリオ五輪の中継は日本で見ることができたが、NHKの地上波とBSでほとんど占められ、民放で放送された競技種目は圧倒的に少なかった。(CSなどを除く)
しかも『実験』と称して錦織等の一部のゲームはTV以外にネットでも同時に視ることができた。
これでは、NHKの一人勝ちといっても過言ではない状態で、本来であればキラーコンテンツになる有名選手の出場する競技などを民放が行った場合に得られたはずの巨額のCM広告料は発生しなかったことになる。

現状ではNHKの番組のネット配信はあくまでもBSや地上波の補完という立場だが、これが解禁された場合にはかなり劇的な影響があると予想される。
まず、受信料に基づくNHKが同時配信を本格化すると、広告収入で成り立つ民放の既存のビジネスが圧迫される。
サッカーのようなキラーコンテンツをNHKがTVとネット同時配信したなら、民放が巨額の放映権を購入しスポンサーを集めてもTV放送の視聴率は低下し、やがて視聴率を指標とする広告収入も減少する。特にフジやTBSのように全体の視聴率が低下しているキー局は広告収入(TV放送とネットのCM枠の収入)の激減は避けられない。
最近はTVer(民放公式テレビポータル)のように期間限定で各局の番組を無料でネット配信しているが、あれをやればやるほどTVを見ないでネットで好きな時間に視る視聴者が増えることは明らかで民放は既に自縄自縛状態に陥っている。

余談だが、先頃Jリーグの放映権をDAZN(ダ・ゾーン)で有名なイギリスのパフォーム・グループが10年契約したが、オーストリアでも月額10ユーロ弱で視られる有料放送が日本では月額1,750円と少々高くなっている。サッカー以外の競技団体とも契約を進めているが、サッカーの場合に限ってもナショナルチームのW杯やその予選はキラーコンテンツではあるものの、通常のクラブチームの試合で視聴率が高くない日本で果たして欧州のようにうまくいくかは個人的には非常に疑問である。ただ、パフォーム・グループは先進国相手の商売だけではなく東南アジアやアフリカでのコンテンツ配信を狙っているため、日本の視聴者数などはあまり気にしていないかもしれない。要はアジア地域向けの(アジア人による)コンテンツを獲得したということか。

ネット同時配信の影響の2番目は、在京キー局が抱える全国各地の系列局との問題である。
放送の場合、都道府県を単位として、放送対象エリアが区切られていて、地方局はスポンサーからの広告料収入の分配金を系列キー局から受け取っていて、それが利益の大部分を占める構造だ。地方で遅れて放送されるキー局の番組を、先にネットで視聴する人が増えれば、地方局の視聴率が下がり、広告収入の減少につながる。
今夏、秋田に戻った際にTVで視たが、『赤ん坊が泣き止む』ことで有名なタケモトピアノのCMなどが秋田で流れていて少々吃驚(相方によればだいぶ以前からやっているとのこと)したものの、相変わらず地元の(社会悪の)パチスロ屋のCMや創価のCMなどが目につき、とっくに旬の終わった芸人達の公演CMなど、中央と地方の購買力の格差や文化水準の差を考えさせられたが、地方局は独自のスポンサー確保にも事欠いているようである。
その状態で系列キー局からの分配金が減少していけば、ネット配信では全く必要性の無い地方局の存在はどんどん低下していく。既に、秋田の民放地方局などはおざなりの定時ニュースと週末の観光情報以外はこれといった番組も無く、住宅・不動産仲介や旅行主催なども行う『放送免許を持ったイベント屋』的な存在と化している。

netflix-screen2x-874ce2814da5601b60fbf8ce6a680d42筆者だけに限らないだろうが、ニュース、スポーツなどの番組以外のドラマ、ドキュメンタリー、音楽といったリアルタイム性の必要の無いものはTVではまず見ないし、映画を含めてエンタメはほとんどNetflixで足りるという人が増えているようだ。
視聴者側が既にTV放送の必要性がごく一部に限られていることがわかってきた現在は、放送と通信の棲み分けは困難。
総務省もそれをようやく理解したようで、クール・ジャパン推進のためには良質のTV番組・コンテンツを作る必要があり、そのメリットは、地方でTVしか視ない視聴者(ほぼ年寄り)と地方TV局を(結果的に)切ることによるデメリットよりも大きいと判断したようだ。

地上波やBSのTVしか視ない年寄り達を抱え、その比率がますます大きくなる秋田県などは、65歳以上の世帯にネット環境を整備してやらないと、ますます情報格差・情報過疎が拡大していきそうだ。


artpepper-meets-rs今日の一曲
少し、秋っぽい曲を
1957
Art Pepper “You’d Be So Nice to Come Home To”(Art Pepper meets the Rythm Section)
ヘレン・メリルの印象的なハスキーボイスで有名なこの曲をカバーするミュージシャンは多いが、アート・ペッパーのサックスもなかなかのもの。


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TVのネット同時配信解禁の影響 への2件のフィードバック

  1. ブルーベリー より:

    23時のテレビ東京 「ワールドビジネスサテライト」 も、3時間後にはユーチューブで見れます。
    夜は早く寝て、朝に動画を見る事も可能になりました。 (秋田でも見れます!) 

    ティーバーもフールーなどもあり、録画の手間もなく、地域も時間も選ばない、良い時代になりました。
    地上波が限定されていた地方にとっては、歓迎すべき事でしょう。
    社会全体が大激変しているのをヒシヒシと感じます・・・・

    • argusakita より:

      グーグル、ウェブTV事業への番組提供で米CBSと合意

      Googleも本格的に乗り出してきたので、日本を含めてますます放送と通信の境目が無くなるでしょうね。通信はまだしも、TV・ラジオの放送に関する既得権と政権によるコントロールは瓦解していくと予想します。
      一方で、通信のようなアクティブユーザ(画面クリックが苦にならない人)だけでなく、放送だけでいいと思うパッシブユーザをどこまで取り込めるかがが鍵になりますね。

      >社会全体が大激変しているのをヒシヒシと感じます・・・・
      全くです。

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