米大統領選の行方

今週は、
1日 BOJ政策金利&声明発表&黒田総裁の会見
2日 FOMC政策金利&声明
3日 BOE政策金利&声明&資産購入枠発表&カーニーBOE総裁会見
4日 雇用統計:非農業部門雇用者数/失業率
とオールスター級のイベントがあり、進行中の仕事の契約がユーロ建てであることもあり、為替の大きな変動の有無に戦々恐々だった。
結果的にユーロ/円は114~115.6程度の比較的狭いレンジで収まったため事なきを得たが、来週はいよいよアメリカ大統領選。結果そのものは筆者の会社のアメリカでの仕事にはほぼ影響がないはずだが、その後の為替や株式の短期的・中長期的影響に無関心ではいられない。

2016presidential-election様々なニュース記事やエコノミストの読みを眺めているが、筆者は大統領選と同時に行われる上下院の議会選挙にも注目している。
というのは、クリントンが大統領になろうがトランプが大統領になろうが、選挙戦でのそれぞれの公約がすんなり実行できる可能性は高いとは言えず、実際に大統領に就任した後は現実的な選択や実行が要求されるわけで、アメリカの大統領は外向きには非常に強力な存在であり、権限もあるものの、内政つまり内向きにはさほど強い存在では無いからだ。

上下院選挙結果で、上下院ともに共和党(おそらく現状維持のこの結果になるだろう)が取ったとした場合、共和党トランプが当選した場合には公約実行の前提は比較的簡単だが、民主党クリントンが当選した場合には、一々上下院とのネゴが要求されるため、例えばクリントンが主張するインフラ投資等の財政出動に関しては議会は規模の縮小を求めることが予想され、財政出動効果が薄れる危惧がある。
また、オバマも何度も悩まされた債務上限問題(議会が政府債務の上限金額を決定しており、政府債務が上限に達した場合は議会の承認を得る必要がある)は、現在は昨年11月の下院通過により、2017年3月まで引き上げを認めることになっている。つまり来年3月にはまたまたこの議会承認手続きが復活することになり、大統領を悩ますタネになるのだ。

もし、上院(100議席、改選は34議席)で民主党が5議席以上増やして過半数を取ることになると、下院(435議席、全て改選)で共和党が優勢とはいえ、いわゆるねじれ状態になる。
そうなった場合、大統領がクリントンだろうがトランプだろうが政権運営は前途多難となり、それぞれが主張している公約(自己矛盾もありそうな内容もある)の実現は難しくなるはずだ。

筆者の軸足の欧州側から見ても、今回の選挙の結果によるTTIPの行方は相当に大きな影響があるはずだ。
例えば反自由主義・反グローバリズムを掲げるトランプが大統領になり、口先だけではなくそれに向かうとすると、欧州の多国籍企業特に自動車、金融セクタの多国籍企業は打撃を受ける。
逆に、TTIPが進まずブロック経済的色彩を帯びる場合は、欧州の情報通信、食料分野の大企業は応酬域内で復活する可能性が高くなる。これは雇用も生むため歓迎される。
これらの現象は日本でも同様の予測ができるが、ただし『支那の影響力をどこまで抑えられるか』にも依る。
この支那の影響力に関しては、軍事的プレゼンスと表裏一体の部分もあるため(欧州ではNATO、日本では日米安保)、ブロック経済的色彩を帯びることは安全保障上の問題に波及することも予想できる。
結局、痛し痒しの状況なのである。

もし、クリントンが大統領になった場合には、TTPやTTIPに関してはやや否定的な立場をとるもののトランプほど強く主張していない。ということは、現状維持あるいは予定通りTTPやTTIPを進める可能性が高い。つまりグローバリズムは維持あるいはさらに進行となり、多国籍企業のセクタ別勝ち負けはトランプの場合とは逆になる可能性が高い。
安全保障に関してもおそらくオバマの姿勢を踏襲し、あまりタカ派的色彩は濃くないだろうし、金融面でも財務長官に利上げ慎重派のプレイナードFRB理事の指名を予定しているらしく、多くの面でクリントンは現状からの大きなChangeは無いのではないかという見方も強いようだ。ただ、その流れでは日本にとっては円高傾向になる可能性が高いため、日本、日銀にとっては面白くない状況が続きそうだ。

単純に言えることは、クリントンが大統領になった場合は多国籍企業重視、富裕層優遇、格差温存路線であり、トランプの場合はその逆が期待されているわけだが、税申告書も公開しないまま選挙戦を進めてきたトランプ自身は富裕層であり、何故か支持者が被るとされるサンダース的な発想は持たないとみるべきで、就任後は手のひら返しもあり得る。
どちらかが、任期を全うしないで途中で辞任というニクソン以来の行動を取る可能性があるかどうかは、やはりトランプのほうが可能性は高いとみられている。

もはやアメリカの大統領選も共和vs民主や保守vsリベラルではないことは明らかで、富裕層vs中・下流という図式がわかりやすくなってきた。富裕層は支配層あるいは特権階級といった見方もあるだろう。
何でもかんでも階級闘争に結び付けたい共産主義にとっては実にわかりやすい世の中になったはずだ。
本当は日本でもそういった状況が現実なのだが、日本ではカビ臭いリベラルだの左巻きがまだ多少元気、あるいは保守がガス抜きのため左巻きを飼育している、あるいは保守そのものが社会主義を相当取り入れた格好になっている似非保守のため2大政党制のようなものが根付かない。

話が逸れたが、8日の大統領・上下院選挙の行方はこれからの世界の趨勢に影響を与えることは間違いなく日本もそれは免れない。
願わくば、BREXITのときのショックのような大きな為替変動や株価の暴落といった『事件』が起きないことを祈るだけである。

PS. 当選はどっち? 為替は円高/円安? 株価は上げ・下げ? 予想をどうぞ。


tears-in-heaven今日の一曲
1992
Eric Clapton “Tears In Heaven”
4歳半の息子コナーを事故で失った悲しみとともに作られた曲。コナーに捧げる曲を作ることでその悲しみを乗り越えたのは親友ジョージ・ハリスンの力もあったと言われる。実際に子供を持つと、この悲しみの深さは計り知れないことがわかる。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
(blog rankingに参加。ご協力を。Click it!)

カテゴリー: 国際・政治, 海外 タグ: , , , , , , , , , , パーマリンク

米大統領選の行方 への6件のフィードバック

  1. ブルーベリー より:

    ビル・グロスの予想では 
    「トランプ勝利なら、ドル安、株安、債券安のトリプル安。 
    ヒラリー勝利なら、ドル高で、債券と株は中立」 とのことです。
    (ヒラリー勝利ならば、安心感で一時的に株高になる気もしますケド)

    保守VSリベラル → 富裕層VS貧困層 に対立軸が移って、
    「格差、移民、経済のグローバル化」 がやり玉になっています。

    ヒラリーでさえ、高まる保護主義に同調しTPP反対、富裕層への増税を主張していますが、
    実際には、ヒラリーが勝っても、「ねじれ」状態で大胆な政策は取れないでしょうね。
    対立軸が残って、保護主義に多少傾く程度かと。
    米国は、エネルギーも食料も自給率100%に近いので、多少貿易を制限しても困らない。

    • argusakita より:

      大体ブルーベリーさんも同じような見方をしているようですが、今週は水曜日あたりを境に株価はトレンドが出そうですね。
      ただ、ヒラリーよりもトランプが当選の場合は、セクタごとに喜怒哀楽が分かれそうな気がします。

      為替は瞬間的な乱高下もありそうな気もしますが、ドル安に走った場合には各国中銀も協調介入する準備くらいはしているかも。

      私自身は株は先物を少し触るくらいなのでノーポジで眺めていますが、仕事の関係でユーロが関心の中心ではあるものの、ギリシャショック並のことは起きないだろうと勝手に予想。

      トランプが大統領になったら、日本は対岸の火事と眺めていることはできず、日本のTPP反対論者は始めはトランプ万歳かもしれませんが、いずれブロック経済の日本に与える長期的な影響に黙ってしまうことになると予想しています。
      需給ギャップが未だに大きく、人口減少によるマーケット縮小は確実に日本経済を衰退に向かわせますから。日本のTPP反対論者は長期的に自縄自縛になることを無視しているとしか思えません。

  2. ブルーベリー より:

    東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の第15回交渉会合が、中国の天津で開催。
    合計16カ国からなる広域経済連携で、日本が提唱した東アジア包括的経済連携と中国が提唱した東アジア自由貿易圏が併存するものとなっている。
    https://portal-worlds.com/news/asean/8392

    TPPが難しい情勢になっており、このまま保護主義化してブロック経済になった場合、
    「東アジアはRCEPでまとまるしかない」 となって、結局は「中国主導」になる気がします・・・・
    EUもドイツの力が強くなりすぎてガタガタなってるから、おそらく似たような感じになるかと。

    日本の国益を考えれば、FTAで各国とそれそれ提携すべきだと考えています。
    どこかを頼っても、都合の良い結果にはならないですから。

  3. argusakita より:

    あまり根拠の無い私見ですが、日本はそれを見越してロシアを抱き込んで東アジアサミットを新たなブロック経済圏に発展させようとしているように思えます。
    2012年11月20日に書いた記事で作った図です。

  4. ブルーベリー より:

    トランプが勝って、ドル高、株高、債券安 になりましたね。

    ホワイトハウス高官が 「TPPはもう絶望的」 とコメントしましたが、自分は良かったと思っています。
    甘利が密室で決めたIDS条項タップリのTPPなんて何が起こるか解ったものじゃない。

    NAFTAのISD条項の訴訟では、カナダ・メキシコは全敗し、アメリカが全勝しています。
    エクアドルでは、健康被害で多くの子供が死んで、大変な事になっています。
    http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/intl/1384648659450Staff

    • argusakita より:

      >トランプが勝って、ドル高、株高、債券安 になりましたね。
      全く、こうもリスクオンな状態が続くとは思いませんでした。(ユーロ/円は嬉しいですが)

      TPPは私は日本が早く承認して、アメリカにゲタ預ける格好にしておいて対米カードにすべきだと思います。
      転んでもタダで起きるのはもったいない。(笑)

コメントを残す(短めにどうぞ)

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中