低金利の今がアベノミクスの勝負どころか

catherinlmann先週24日、パリで発表されたOECDの年2回の経済見通し発表で、キャサリン・マン(Catherine L. Mann)首席エコノミストは『非常に低い金利で借り入れ、適切な投資を行えば、成長率を引き上げることが可能だ』と言った。これは先進国向けのメッセージとして注目すべきと筆者は感じたが、日本のメディアでは同時に発表された各国の来年の成長率の見通しの数字だけに注目した報道がされているようで、日本のゼロに近い数字を毎度毎度聞かされても面白くないだろうにと思った次第。日本メディアの欧州駐在は少なすぎる。
このマン氏の言説は『えっ、緊縮財政派のOECDが財政出動推奨か?』と少々驚き。IMFと並んで、あるいは独・メルケルや英・オズボーンとともに先進国に対して一貫して緊縮財政・財政規律を求めていたOECDが180度舵を切ったとみるのは大げさか。


j10ynbondこのOECDの発表、財政出動の推奨には2つの意味があると思われる。
1つ目は、長期金利の上昇がジワジワ始まっているため、低金利のうちに政府が借金をして必要な財政出動を行わないと、仮に金利の大幅上昇が始まった場合、財政出動が出来なくなる恐れがあるぞ、という脅しのようなアドバイス。
実際、アメリカの10年国債や日本の10年国債(長期金利と比例)は最近ジワジワと上昇を見せ始めている。図は、日本の10年国債の金利だが、マイナス金利からゼロ付近に戻っている。このまま、ドーンと上昇することは考えにくいが、もし何かのきっかけで金利が上昇し始めたら結構大変なことが起きるのは想像に容易い。実際、FRBの金利上げ、トランプの経済対策等の『きっかけ』は十分想定可能だ。
実際、この金利上昇を見越してか、メガバンクの住宅ローン金利は引き上げが発表された。
3メガ銀、12月の住宅ローン金利引き上げ 長期金利上昇で、固定型じわり(産経)

2つ目の理由は、緊縮財政、財政規律の遵守を要求し過ぎると先進各国での格差の拡大とそれに伴う社会不安(治安悪化等)や民族主義・排外主義がポピュリズムと結びつき、欧州各国に視られるような右派の台頭による社会の不安定化通商面での保護主義化等が進み、先進国での金利上昇は新興国での経済衰退につながるため、結局はグローバルでの経済成長にマイナスだと判断したのではないか。金持ち喧嘩せずにしよう・・・と。

日本では、既にアベノミクスの失敗説がよく聞かれるが、筆者はアベノミクスの真骨頂はこれからが本番と密かに思っている。3本の矢のうち1番目の矢の金融緩和がもたらしたものは数字で見えるため効果はあったものの、その効果が消費税によって打ち消されてしまい今は元の木阿弥という状態、4年目でも2%の物価上昇目標には到底届いていないことは批判されている。しかし、日銀を責めても仕方が無さそうな話だ。
理論的サポーターの浜田宏一教授が、『私が間違っていた。ゼロ金利付近では金融緩和だけではアキマヘン』と間違いを認めたとも聞こえてきて、『日本経済を実験に使ったのか!?』と怒りも感じるが、まあ、アベノミクスが間違っていたとは言っていないようだ。
ちなみに、筆者は安倍信者でも何でもない。世界を飛び回る外交はバラマキ過ぎではるものの、それなりに日本の非軍事的プレゼンスを高めた、しかし、取り敢えず株価や為替は改善したものの内政ではイマイチ支持できないものも多数あるため(生意気だが)是々非々である。
ただ、嘘でも本当でも歴代指折りの高支持率の内閣は評価されるべきである。

問題の2番目(財政支出)と3番目(成長戦略)であるが、特に3番目が重要なことは周知の通りなものの、ここを最初にアベノミクスが発表されたときに受け手側が誤解(マスコミのせいか?)したことが現在の悪評価に繋がっているように筆者には思える。
日本政府が成長戦略で上げた8月の『未来への投資を実現する経済対策』約28兆円は、
・子育て・介護の環境整備
・リニア中央新幹線の全線開業前倒し
・大型クルーズ船向けの港湾整備
などなど、多数の施策が盛り込まれているが、その中の、21世紀型のインフラ整備にある『農林水産物の輸出促進と農林水産業の競争力強化』これこそが現在政府と農協が丁々発止でやりあっていることそのものである。

つまり最初にアベノミクスの成長戦略と聞いたときに、それがあたかも既存のものがそのまま成長・発展するかのような誤解・錯覚を持ったことが間違いなのである。
例えば、家を全面改築するときに、そこに住みながら快適さを変えずに暮らし、新しい家が出来上がることを頭に描いたようなものである。そんなことがあるわけがない。
全面改築するには、一時的にはどこかの部屋に窮屈に集まり生活しながら、新しい部分ができたらそちらに移るなどが必要だし、場合によっては従来あった小さな部屋が無くなりそれらがまとまって大きな部屋として出来上がったり、形が変わったりすることがある。
それと同じで、日本の社会や全産業がそのまま成長・発展するわけではなく、どこかに痛みを伴う改革や統廃合、新しい仕組みができるのが成長戦略だと理解すべきだった。日本列島と社会がもう一つあるわけではないのだ。スクラップ・アンド・ビルドである。

つまり、強いて言えば、アベノミクスが一段落したときに日本の社会、産業、経済はこうなっていますという一般大衆にもわかる『絵』を示さなかったのがアベノミクスの失敗だろうと筆者は考える。具体的に、例えば、農協は無くなります。農家はやる気さえあればそれで食っていける仕組みを作ります。減反を押しつける施策はやめる代わりに市場に農産物を出せない農家・やる気の無い農家は退場してもらいます。しかし、やる気のある農家は政府が強力に支援します。
そういった具体的なことを言えばよかったのだ。
農業に拘わらず、多くの産業セクタでも同様のことが言えるだろう。

無論、その『絵』を見せたとたんに既得権に胡坐をかいている退場を余儀なくされる人・組織は反対の声を上げるだろう。そこをセーフティネットとして保護するのが実は2番目の財政支出であるべきだ。
『未来への投資を実現する経済対策』の中に低所職層への1万5千円の給付などもあるが、こんな単独のバラマキは経済対策ではなく選挙対策であって消費喚起の経済対策ではない。
どんなに国債が国内で消化されているため国債の暴落はあり得ないと理論を語ったところで、国債が暴落、金利高騰は十分あり得るシナリオである。
そのためにも闇雲な財政支出・出動はすべきではないが、成長戦略を実行するうえで痛みを伴う部分に手当する意味での財政支出はすべきである。つまり2番目の矢は3番目の矢の補完でなければならない。

せっかくOECDまでが、『先進各国は金利が低いうちに借金してばら撒いちゃいなよ』と呼びかけているのだし、日本でも格差の拡大によってそのうち右派も先鋭化してくる恐れがある。そうなって社会不安を引き起こし、治安維持のための警察予算を大幅に増やすくらいなら、格差を埋めるなり、若者の奨学金に徳政令を出す()だとか、子育て減税する原資に回したほうがよほど『未来への投資』であり、財政支出はそうあるべきだ。

※現在返済中の奨学金は返済停止(不要)。その代わり社会ボランティア100時間程度。
現在奨学金給付中の者も返済不要でボランティア義務。高卒資格のある者は希望者全員が大学に入学(定員のある場合は抽選)可能とする。
大学の学費は無償化。在学中の生活資金は無利子貸与または都道府県が一部負担。
大学卒業を難しくし、途中で辞めた者は学費返済義務を課す。こうしておけば安易に大学に入ろうとはしないはず。勉強嫌いな者まで大学に行くことはない。一生懸命勉強する者だけが大学生になる。
大学に進学しない者は無償で職業訓練校に入ることができるようにする。


bandaid1984今日の一曲
1984
Band Aid “Do They Know It’s Christmas (Extended Version)”
1984年、エチオピアで起こった飢餓を救うためのチャリティー・プロジェクト。
フィル・コリンズ、ポール・ヤング、ジョージ・マイケル、ボーイ・ジョージ、スティング、デヴィッド・ボウイ、ポール・マッカートニー等、イギリス、アイルランドの蒼々たるメンバーによる。
その後Band Aidは、Band Aid Ⅱ(1989)、Band Aid 20(2004)、Band Aid 30(2014)と繋がっている。
日本の最近の大物ミュージシャンはどうしてこういうのをやらないのだろう。昔はフォークシンガーなどはちょこちょこやっていたが。


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低金利の今がアベノミクスの勝負どころか への1件のフィードバック

  1. 巡回親父 より:

    記事と無関係ですが、おそらく同年代なのでしょう、今日の一曲を楽しみにしています。
    懐かしい曲ばかり。
    ところで、ジョージ・マイケルが急逝したようです。
    http://www.sankei.com/world/news/161226/wor1612260010-n1.html

    合掌

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